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月の降る時⑤

 廃墟と化した夜のビル街。

 リインの周囲から数え切れないエナジーボールが一斉に放たれる。

 明はそれを銃で次々と狙い撃つ。

 最後の一つを避ける。ボールの当たった巨大なビルが倒壊する。

「!」

 突然明の前に黒い球体が現れる。エナジーボールと同サイズ。

 明はとっさに離れる。球体が銃を掠める。

「え?」

 銃が・球状に切り取られている!

「ブラックホール?」リインの新しい攻撃!

 どういう仕組みか分からないが、もう銃は使えない。

 次の瞬間。明の周囲に五つの黒い球体が現れる。

「あ・あああ・・・・」

 右手が・無い!腹に激痛!穴があいている。出血はほとんど無い。

 明はその場に倒れ込む。意識がうすれていく・・・


 目覚めた時。明は<スペースインパルス>の医務室にいた。

「大丈夫?」麗子がのぞきこむ。

「Q先生呼んできます」ナトウがICUを出て行く。

 身体が動かない。右手は無い。手と腹には包帯が巻かれている。

「手はクローン培養中。元通りになるって」

「俺は・・負けたのか?」

 麗子は黙ってうなずく。

「美理はっ!?」

「連れて行かれた・・あなたは十分に戦った。自分を責めないで」

 涙で視界が歪む。


「何だ?どうした?」

 グレイの視線の先、メインパネルに映る明は突然倒れて動かない。

 全天観測室。

 ボッケンはその光景に見覚えがあった。

 <神の声>のゼーラの精神攻撃に遭った時と同じ。テレパシーによる幻覚だ。

「兄き・・(あの時とは違う。兄きも今はエスパーだ。)跳ね返せ!」

 

 明はベッドから起き上がろうとする。

 ふらつく。麗子が支える。倒れかけて明の右手は麗子の腕をつかむ。

 つかむ?手がないのに?この感覚・・前にもあった。

 フラッシュバック:リインの腕をつかむ明。

 明は目を開ける。幻だ!

「ふざけやがってえ!」

 衝撃波!

 たまらずリインは術を解く。

「うおおおお・・」

 明は左手で衝撃波を放つ。右手で銃を抜く。使える。連射。連射。連射。

 リインは軽々と避けつつ、明の傍へ迫る。衝撃波。

 たまらず明はテレポート。

 距離をとる。約200m。廃墟のビルの屋上で銃を構える。

 元の場所にリインの姿は無い。探す。

 直感が上と告げる。見上げる先に・いた。

 リインは空中で腕を振り下ろす。光の刃が飛ぶ。

 危険を察知した明はジャンプ。ビルは真っ二つに裂かれる。

 ジャンプした先にリインはすでに来ている。その目が光る。

「!」

 大爆発。

 巨大なキノコ雲があがる。

 

 GAME OVER

「あれ?」

 明はゲームのコントローラを持ったまま座っている。高校の制服を着ている。ここは両親が亡くなったあと引き取ってくれた榊家の自分の部屋だ。

「ゲームだったか」ほっと胸をなでおろす。

 <ザ・スペースマン>宇宙船に乗り込んで仲間たちと冒険したり敵と戦ったりするアクションロールプレイングゲームだ。

 TV画面を見ていた辻がポテチを食べながら、

「あー。やっぱ強えなあ、リインは。さすが中ボス」

 辻は小学校からの友人だ。明の部屋に遊びに来ている。

「どうやったら勝てるんだ?これ」明が訊く。

「今レベルいくつ?」

「レベル55」

「70は要る。航行班より戦闘班の方がレベル上げやすいぞ。今更遅いけど」

「お前もうクリアしたのか?」

「麗子狙いで好感度上げてる所」恋愛シミュレーション?

「やり直すか。ふたつ前のセーブデータなら・・」

 画面にはCGの美理が映っている。キャラはある程度自在にデザインできる。

「それにしても・お前の美理ちゃん、誰かに似てるな」

「え?(ぎくっ)」

 ドアがノックされて、麻美子がジュースを持って入って来る。

「辻くんいらっしゃい」

 辻は明の方を見て「ははーん、なるほどね」

 誰をモデルにしたのかばれた。明はコントローラを手にして、

「リトライだ。また死んでもどうせゲームだ」


「ゲームじゃない!(死んだら終わりだ!)」

 そう叫んで明は周りを見る。自分の部屋じゃない。宇宙船?

「俺の部屋にテレビは無かった」そこは重要ではない。

「何?」隣の席の美理が尋ねる。

「ここは・・」<フロンティア号>のコクピット。

「そうだ・・俺たちは逃亡したんだ」

 リインとの決闘の前、ここで美理とキスした後、<フロンティア号>で戦いから逃げた。

 どちらからともなく言ってこうなった。怖かった。死にたくなかった。

 やみくもにワープして銀河系内に逃げ込んだ。

「これからどうしよう」

「どこでもいい。あなたと一緒なら」美理が手を伸ばす。

 明はその手を握る。違和感。

「(それにしても)インパルスはどうなっただろう?」

 無数の<ネーガー>に囲まれ絶体絶命の状態だった。俺たちはそれを見捨てた。

「どうでもいい。あなたさえいてくれれば私は幸せよ」

「違う」明は手を離す。

「美理はそんな事は言わない。こんな事はしない。どんなに辛くても自分より他の人を気にかける。それが美理だ。俺が愛する流美理だ」


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