月の降る時④
リインはエナジーボールを作る。エネルギーの塊だ。一つ二つ三つ・・・
ソフトボール大の光の球がリインの周りに十個以上浮かぶ。その中の一つがこちらに飛ぶ。
明は避ける。同時に銃を構え撃つ。
エナジーボールが盾となりリインには当たらない。
次々とエナジーボールが明を襲う。先程避けた奴も再び向かって来る。
明は走りながら避けつつ発砲する。銃弾が当たったボールは消滅する。
ジャンプ。空中で銃を連射する。1・2・3・4・5・6・・・
リインはエナジーボールを飛ばして応戦。
相殺の爆発がきらめく中、明は左手をくいっと上げる。
リインの足元で爆発。砂塵は遥か上空まで噴き上がる。
「甘い」明の背後で声。テレポートして来た?
バチッ! リインの衝撃波を受け、明は落下。
地面に激突する前に300m先にテレポート。
降り立った瞬間、明の足元が爆発する。
爆炎の中、バリアーを張った明は無傷だ。
「お返しよ。サイコキネシスとテレポートは一流だけど、テレパシーがお粗末ね」
「動きを、いや心を読んで・・」
こちらの考えや行動は読まれている。ゼーラやデコラスと一緒だ。
「思い出せ!師匠はあの時何と言った?」
レクチャー ―心を読む敵との戦い方―
「無じゃ」ラライ星人(自称)パミィが即答。
「無?」
「心を無にしろ。さすれば読まれることはない・・」
確かにそうだが、それでは攻撃できない。本能で戦えということか?
「じゃが仙人でもなけりゃそんな事出来ん」
「は・い」
「じゃあ能力を逆手にとって心を読ませる。何でもいい、つまらん事を思い浮かべろ。相手の戦意を喪失させるんじゃ。相手が女なら、思いっ切りいやらしい事を考えてもいい。得意じゃろ?」
「はい!」いい返事。
「要は発想の転換じゃ」
「よし!」明は妄想する。
「!」
リインは顔を赤らめる。
「こ、この変態野郎!!」
先程とは比べようもない数のエナジーボールが明を襲う。
明は必死に避けながらつぶやく。
「師匠のうそつき・・」
追いつめられ、明はテレポートで逃れる。
移動した先は、夜のエリア。-30℃の環境だがESPバリアーのお蔭で問題ない。
見渡す限り壊滅した都市の残骸。凍りつきちょっと触れただけで崩れそうだ。
「!!」
その先へテレポートして来るエナジーボール。避ける。当たったビルは粉々になる。
リインと対峙。距離にして20m程か。
「この星はお前たちが滅ぼしたのか!?」
「いいや。戦争で滅びたようだ。たまにはこんな事もある。お前たちと同じく好戦的につくられたのだから仕方がない」
「え?」
「戦うために、戦争するようにプログラミングした。お前たちもいつ滅びてもおかしくなかった」
明は唖然とする。何も言葉が出て来ない。アルテカ星を滅ぼした戦争は星の自転をも止めてしまった。
「本当に神なのか?だが・・命を何だと思っている!?」
「大いなる目的のためだ。それに我々がいなければお前たちは生まれなかった」
リインは地面に手を置く。
大地が揺れる。地割れが生じる。それは明の方へ・・。
明は飛び退く。
空中で銃を構える。リインはもう元の場所にいない。
「どこだっ(はっ)上?」直感で引き金を引く。
光の弾丸が上空のリインに命中。
リインは少しのけぞるが、それだけ。無傷だ。
「当たった・・(心を)読まれていない?変な考えを読むのが嫌だから読んでいない?(ありがとう、師匠)」
「そうなの。あなたもパミィに教わったの」
「パミィを知っているのか!」
「あなたよりもっとね」
リインの反撃。飛びながらエナジーボールを次々と放つ。
明も飛びながら紙一重で避ける。ビルが倒壊する中、銃撃を繰り返す。
<スペースインパルス>艦内。
艦内のディスプレイにふたりの戦いが映し出されている。
「おしい」 「いけるぞ」
天文班の超望遠カメラがふたりの戦いを捉えている。明の腕時計型端末からの音声は星全体に張られたバリアーにより妨害されて届かない。映像だけだ。
「いけっ!そこだ!」
映像を見ているクルーたちから熱い声援が。
望遠鏡を操作するボッケンは無言だ。
<スペースコンドル隊>控室。
隊員たちは映像を見ながら応援する。
「どうなんだ?」リュウがロミに尋ねる。エスパーとしての意見を訊きたい。
「我々に出来るのは応援する事だけです」要はわからないようだ。
医務室。
Qとナトウが声援する中、麗子は祈りながら黙って映像を見つめる。
メインブリッジ。
「たのむぞ、明」とロイ。
ピンニョはショーンの肩にいる。黙ってメインパネルを見る。
ふたりは「うーむ」という声を聞き、声の主の方を見る。
ニコライは険しい表情で腕組みしている。
「一見互角。しかし明は必死のようだが、相手には余裕が見られる」
「がんばれ!」グレイが声援。
アランはコンピューター端末を操作。反撃の糸口を懸命に探す。
美理は艦長席に来る。
「父さん」
「ん」
「リイン・さんがトスーゴだとしたら、母さんは・・」
「・・・」
流は黙って美理の頭をなでて、引き寄せる。艦長ではなく父親として。
美理は今にも泣き出しそう。メインパネルは怖くて見れない。
窓の向こうには赤いアルテカ星が見える。




