月の降る時②
流艦長は立ち上がる。
「総員超特級戦闘態勢!
美理!敵艦を探せ!テレポートではそう遠くには行けない。
シャーロット!発見次第敵艦へのワーププログラミングを!
ニコライ!メインエンジン出力上げろ!いつでもワープ出来るようにしろ!
ロイ!バリアーアタックと反重力ミサイル準備!
バリアーアタックで周りのハエを黙らせて反重力ミサイルで蹴散らす!そしてワープで敵艦へ特攻をかける!」
「了解!」各人が作業に入る。
メインレーダーに反応。
「アルテカ星の向こうに大型戦艦<ガルバス>タイプ発見!」
ただちにシャーロットがワーププログラムを組む。
ニコライが「エンジン異常なし。敵に悟られないよう出力ゆっくり上げます」
ロイが「バリアーアタックいつでも撃てます」
操縦桿を握るのはクリフォード。航行班のナンバー3だ。慣れない状況で手が震える。
「ワーププログラミング完了」シャーロットの声が響く。
「バリアーアタック!」
インパルスのまわりに光の壁が現れ、四方八方に広がっていく。
それに触れた<ネーガー>たちは沈黙する。
「反重力ミサイル発射!針路上の敵機を吹き飛ばせ!」
「発し・・!」ロイがボタンを押す前に、
新たに500機の<ネーガー>が出現する。テレポーテション!
インパルスの重要セクションに狙いを定めている。これではワープ奇襲はできない。
再度バリアーアタックを仕掛けると(バリアーは二重=二つしかないため)インパルスを守るバリアーがなくなる。それに第三波がないとは言い切れない。
<ガルバス>艦橋。
「無駄なあがきを」
喋ったのはエスパー船団副団長アルゴン。トカゲと人のミックスした様な外観のヒューマノイド。体色は緑。かなりの長身だ。
「しかしリイン様。おふざけが過ぎます」尻尾が動く。
戦闘服に着替えたリインがつぶやく。
「さて誰が出てくるのかな?まあ決まっているけど」
明は艦長室に呼ばれた。
「拒否して構わない」
最初にそう言った流啓三は悲壮な表情で明を見つめ言葉を続けた。
「弓月明、すべてをお前に委ねる。戦ってくれるか?」
「勿論です」
「・・たのむ」
明に読心術はないが、流の苦しい思いが痛いほど解る。自分に死ねと言っているのと同じだ。
「はいっ」
艦長室を出た明をアラン副長が呼び止める。
「弓月明。君は行かなくていい。君がリインに勝てる確率は万に一つだ。君ではリインに勝てない。いや私の知る限り彼女に勝てるエスパーはいない」
「(そんな事は分かっている。)しかし誰かが行かなければ・・」
「君が行く必要はない。我々の負けだ。私を助けてくれた君に死んでほしくない」
「副長って結構恩義に厚い人だったんですね。忠告ありがとうございます。でも俺は行きます。まだ戦っていない。まだ負けたわけじゃない。まだ死んでいない。それに万に一つは勝てるって事ですよね」
「君は馬鹿なのか?」
「俺の命よりも大切なものがあるんですよ」
「プライドか?矜持か?」
「副長、真面目。・・守りたい人がいるんです」
「過去から来た君に家族はいないはずだ。他人のために戦うのか?」
「家族はいませんが仲間はいます。大切な人が」
負けたらインパルスと美理と望は奪われる。
アランは明にあるデータを渡す。
「アルテカ星の最新分析データだ。出発前に見ておいた方がいい」
「銀河連合のデータベースは見ましたが」
「それとは全く違う。星は・・壊滅している」
明は自室で準備をする。同室のボッケンは黙って手伝う。
シャーロットと麗子が差し入れてくれたサンドイッチをほおばる。最後の晩餐になるかもしれない。何でも作ると言われたが時間がない。
アランのくれたデータを見てサンドイッチを落とす。もったいないから拾って食う。
彼の言う通りアルテカ星は死の星と化していた。原因は分からないが生物は絶滅している。最大の変化は自転が止まっている事。星の半分は昼の灼熱地帯、半分は夜の凍結地帯が永久に続く。使われたのは超磁力兵器の類だろうというのがアランの見解だ。
「ESPバリアーを張りっぱなしになるか」
銃のエネルギーを確認。ビームブレードも。忘れちゃいけない腕時計端末。
「着替えと食料は不要。救急セットは持ってくか。おやつは300円まで」独り言。
マーチンとピンニョが部屋に来る。
「これ、持ってってくれ。御守りだ」
マーチンはビー玉のような球体を明に渡す。
「エネルギーを吸収無効化する特殊金属ラミルコンのサンプルだ」綺麗。
「ラミルコン?オリオン大星雲で敵の攻撃を防いだ帆船のか」
「機関長がエスザレーヌ女史から貰った。お前に渡してくれって。ESPエネルギーに有効かどうかは保証できないが、守ってくれるかもしれない。お前のESPに反応しないようプログラミングしといた。このサイズだと使えるのは多分一度きりだ」
「あ、ありがとう(気休めだけど無いよりマシか)」
明は御守りを胸ポケットに入れようとして、「あ」ずっと昔に美理のくれた御守りが入っていた。ラミルコンはベルトのポケットに。
ボッケンとマーチンとピンニョはそっと部屋を出る。ほとんど話をしていないが、明の気持ちは分かっている。
あと3時間。グレイとヨキとリックが部屋を訪ねた時に明の姿はなかった。
「どこへ?」
「まさか敵前逃亡?」
美理は第二格納庫の<フロンティア号>を訪ねる。
コクピット。
「ここだと思った」
明は主操縦席に座って計器を操作していた。




