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月の降る時①

第6章  決闘! 月の降る時


 アルテカ星近くの宇宙空間に<スペースインパルス>は静止している。

 艦内通路。 

「何?お兄ちゃん、痛い」

 明は無言のままリインの腕をつかんでいる。

「茶番劇は終わりだ」背後で声がした。

 アランと数人の男たちが現れる。重装甲宇宙服を着用している。対エスパー特殊訓練を受けたエキスパートたちだ。

「君なんだろ?夢を見せているのは?」

「・・・」

「悪夢を見た者が多いのは艦内時間で午後9時から午前7時、子供が寝ている時間だ。あと時々午後3時から6時、放課後の自由時間だ」アランはリインを問い詰める。

「VTRも含め君の行動を徹底的に監視させてもらった。メドゥサ流星系で艦内からESP反応があった時、残念ながら君はベッドの下にいて分からなかった。だが悪夢を見た者がいた時、必ず君は眠っていた。偶然にしては出来過ぎだ。そしてこの映像だ」

 空中に映像が映し出される。居室で寝ているリイン。サーモグラフィのような映像に変わる。リインの身体から”丸いもの”が離れて消える。

「エネルギーを映像化したものだ。肉眼では見えない”球体”。<那由他>の分析では最も近いのは精神移植における”魂”らしい。どういう仕組みかは分からないが、睡眠時に本体から離れたこの球体で君は他人に悪夢を見させている」

「・・・」

「悪夢にもいろいろある。流美理と山岡麗子の見た悪夢はあまり苦痛を感じないレベルのものだった。ふたりは君の親しい人物だ。手加減をしたのか?」

「・・・」

「トスーゴは昆虫人ではなく我々と似たヒューマノイドだ。アリア司令官のように。あの昆虫人はトスーゴではなく、トスーゴである君の部下だった」

「・・・」

「君の目的は、<スペースインパルス>を銀河連合本部から離す事、中を諜報活動する事、そして中から攻撃する事・・違うか?」

「よく喋るね」リインの声。

 明とアランはぎょっとする。リインはふーっとため息をついて、

「この姿は気に入っていたんだけどな」 

 無言の明を尻目にアランはリインに詰め寄る。

「いろいろ訊かせてもらう」

 リインは笑いながら「出来るものならばな」

「!」

 明の膝がガクンとなる。頭も痛い。思わずリインの腕を放す。

 アランはメガネを上げようとして、宇宙服を着ている事を思い出す。自分では気付かなかったが相当緊張している。つばをごくりと飲み込んで、

「このブロックの対ESPシールドを強化した。ESPは使えない」

「なめてもらっては困る」

 リインの赤い髪がなびく。

 爆発。 

 インパルスの一角が吹き飛ぶ。続けて猛烈な風。第一装甲板まで穴が開き、まるで台風の様に空気が船外へ漏れる。

 アランは飛ばされる。その手を明がつかむ。もう片方の手で手すりをつかみ、必死に耐える。 

 隔壁が閉まる。空気の流出は止む。 

「はあはあはあ・・」

 明は膝をつく。シールドのためESPが使えずアラン以外の男達は助けられなかった。宇宙服のため窒息はしないだろうが。

「すまない。対ESPシールドで抑え込める計算だった」アランは憔悴しきっている。

 リインはふたりの前に立つ。

 その姿を見た明は息をのむ。

 もはや少女ではなく、大人に成長している。

「これが本当の私」

 メインブリッジのメインパネルにはその光景が映し出されている。

 見つめる美理は思わず立ち上がり、

「ナオミ!」

 美理たちの同級生で行方不明になっているナオミ。髪の毛が赤であること以外ナオミそのものだ。


「あ!」

 メインレーダーに無数の機影が映る。

 無数の機体が現れる。ワープではなくテレポートして来る。

 ESP操作による無人攻撃機<ネーガー>。その数約500機。

 ブリッジ、エンジン、コンピューター、その他インパルスの要所へ狙いをつけている。 

 艦内に警報が鳴り響く。

 流艦長が命令する。

「総員戦闘配備!バリアー最大!エンジン出力上げろ。最大戦速でこの宙域を離脱する。各砲座は各個直接標準で攻撃。艦載機ハッチは絶対に開けるな!スペースコンドル、ワープ射出準備」

 リインは静かに念じる。テレパシー。

≪私はトスーゴ第3艦隊所属エスパー戦団団長リイン。無駄な攻撃はやめろ。その機体は特殊爆弾を搭載している。私の合図でこの艦の65%を破壊出来る≫

「・・・」

「何がしたい?降伏勧告か?」グレイのつぶやき。

≪お前たちにチャンスをやろう。銀河時間で6時間後、アルテカ星でエスパーによる一対一の決闘を申しつける!≫ 

 明は無言。放心状態だ。

 流が「決闘だと?」

≪お前たちが勝てば、我々エスパー戦団はアンドロメダへ帰還する。・・お前たちが負ければ、この艦と流美理と流望を渡してもらう≫

 驚く美理。

 シャーロットも動揺を隠せない。

「またあとでね」

 リインは笑みを浮かべてテレポートで消える。

 明はがっくり肩を落とす。 

 誰も無言のメインブリッジ。

 美理はパネルを見つめる。立ち尽くす明が映っている。

「明くん・・」


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