絶望との闘い⑤
<スペースインパルス>の乗員はベローヌ星に降り立つ。
地上は怪我人で溢れていた。
放射能除去テントを設置し、インパルスの医療班が救命処置を施す。
だがあまりに数が多い。
それ以上の数のどろどろに溶けた死体があちらこちらに転がる。
補給物資を運んできた明は思わず目をそむける。地獄があればこんな所だろうか。
Qたちが一生懸命治療しているのが見える。麗子もいる。頭が下がる。
頭上を<スペースコンドル>編隊が通過する。放射能除去薬を散布。
「お前達がちょっかいを出したからだ!」
明は声の方を振り向く。
「そうだ!そのためにベローヌは・・」
「こんなに遅く来やがって」
生き残ったベローヌ星の住民が口々に流艦長たちに詰め寄る。
「出て行け!」
「出てけ!」
「帰れ!」
「そんな、私たちは・・」
麗子が制止しようとするのを明が止める。
言っても無駄だ。
流艦長は無言のまま立ち去る。
明たちは失意のままメインブリッジに戻った。
アランが流に歩み寄る。
「ベローヌ星だけじゃなかったんです」
「どういう事だ?」
「銀河連合の主要惑星がトスーゴの攻撃を受けました。大半はワープミサイルによる攻撃だったようです」
メインパネルに星々の映像が映る。
地球、ロトス=リカ、ロトス=オリ、パンゲア、バロー、・・・
「多くの星は防衛出来ましたが、ベローヌの様に壊滅した星もあります」
地球もインパルス主砲の技術提供をしていなければ危なかった。
惨状を見て美理は倒れかける。シャーロットが支える。
多くの乗員は自分の端末で故郷の星の情報を収集、安堵する者と落胆する者に分かれる。
「どれだけの艦艇を繰り出したんだ?」
「奴らの目的は何なんだ?」
「虫けらのくせに」
「報復すべし」
彼らの中にトスーゴへの怒りの炎が燃え上がる。
「む?」
メインパネルの映像が乱れ、女性の姿が映る。
「見て」美理が指さす先、
ベローヌ星の空に女性の巨大なホログラフが浮かぶ。
まだ医療テントにいる麗子たちも空を見上げる。
長い髪をしたスレンダーな美しい女性。
リックが思わず「おーいいね♡」
TV画面やディスプレイにも女性の姿が映る。
それは他の星(銀河連合の主要惑星)も同じだった。
銀河連合本部のあるロトス=リカ。地球。ルリウス・・・
女性の口が動く。
『私はトスーゴ第三艦隊司令・アリア』
「!」
「トスーゴだって!?」
『銀河連合に告ぐ、降伏せよ』
「!!」
映像を見つめる明たち。
TVを観ていたヨキが「ふざけんなよ。いい所で」チャンネルを変える。
同じ画面だ。何度変えても一緒。
「えい!」ヨキはTVを消す。
『繰り返す。降伏せよ』声は消えない。
「わー。頭の中に・・直接?」
「テレパシー?」明がつぶやく。
『我々の力は先程示した通りだ。お前達に勝ち目はない。なぜなら・・』
流の頬がぴくりとなる。
『・・我々はお前達をつくった存在だからだ』
「!!!」
『銀河標準時間で3日後に答えを訊く』
通信は終わった――――
誰もが無言だった。
銀河連合本部でも。エスザレーヌが黙ってスクリーンを見つめる。
地球でも。マッケンジーが呆然と立ちつくす。
<スペースインパルス>メインブリッジでも。
明が口を開く。
「“お前達をつくったもの”?・・・造物主?神ってことか?」
「神?」美理が聞き返す。
「昆虫型じゃなかったな」グレイがぽつり。
「俺たちと同じヒューマノイドに見えた」
「銀河連合の様に複数の種族・国家なのかもしれません」とアラン。
「・・・」流艦長は終始無言だ。
ショーンが「艦長。銀河連合本部より通信です」
<スペースインパルス>の前に再びデルターン球状星団が広がる。
「天文班、アルテカ星を確認」
メインパネルに赤い星が映る。
「那由他。最新データを収集しておいてくれ」
そう言うとアランは席を立つ。
「副長。どこへ?」
「帰還前に片付けなければならない問題がある」
アランはメインブリッジを後にする。
ショーンが前を向き直し「もう少しなのに・・」
「帰還命令だ。仕方ないさ。非常事態だからな」とロイ。
「リインへは?」ピンニョが美理に尋ねる。
「明くんが伝えに行っている。(・・辛いだろうな)」
明は通路をとぼとぼ歩く。
その先にリイン。星を見ていたが、明に気付き、駆けて来る。
明はリインに事情を説明する。
帰還命令が出たのでアルテカ星へは行けない。後日輸送船に乗り換えて送り届けてもらう事になると。
「うそつき!」
駆け出すリイン。その腕をつかむ明。
「!!」
この感覚・・・フラッシュバック:夢の中で麻美子の腕をつかむ。
「まさか・・」




