激闘!②
メインブリッジ。クリスが状況報告する。
「レーダーに反応!トスーゴ艦隊です!・・高エネルギー接近!」
ニコライとグレイがマイクに叫ぶ。
「メインエンジン始動!」
「バリアー出力最大!ホーミングアロー、防御ミサイル発射!主砲スタンバイ!」
ホーミングアロー発射。
弾幕が張られ、ステーションは守られた。
明は主操縦席に座り「<スペースインパルス>発進準備!」
メインブリッジに流艦長が到着する。
「状況説明しろ」
「停泊中に攻撃を受け迎撃しました」グレイが説明。
「敵は?」流はクリスに尋ねる。
「左舷上方、距離150万、数は12、イギャロン級です」
「!」 「緑色だ」
これまでのトスーゴ艦は光沢のある黒ばかりだった。
「メインエンジン異常なし」
流が命令する。
「ドッキング解除!<スペースインパルス>発進!」
明が操縦桿を握る。
軽いショックのあと、インパルスはステーションから離れる。
遅れてアランとロイとサライが到着する。
「針路任せる。両舷全速!明とグレイはこのままで。サライとロイはサポートにまわってくれ」
インパルスは敵艦隊へ向かう。
緑色のトスーゴ艦隊が発砲。数十ものビームが向かって来る。
明は操縦桿を傾ける。
軽いGがかかる。インパルスは船体をロールし、敵の攻撃を回避。
「主砲発射!」グレイが号令。
「発射!」
第一砲塔。リックが発射ボタンを押す。今では艦橋勤務のグレイの方が上官だ。
命中。5隻を撃破。
インパルスには三連装主砲が12基ある。一撃でトスーゴの戦艦クラスを破壊できる。エネルギー弾をワープさせる次元衝撃砲に換装も可能だ(連射できない等使い勝手は悪い)。
インパルスは艦隊に突入。次々と敵艦の攻撃をかわす。
「両舷ミサイル、ホーミングアロー発射!」
敵の砲火を避けつつ攻撃を続ける。
美理と麗子は新人研修医のナトウと共に医務室で待機。ふたりは医療班の白を基調とした艦内制服に着替えている。他の補充兵はそれぞれの班に分かれて待機中だ。
「元気そうね」
「そっちもね」
しばしの沈黙。麗子は鞄から一冊の本を取り出す。
「じゃ~ん」
「卒業アルバム?持って来てくれたの?」
「美理のだよ。校長先生が美理にって。あと寄せ書きもね」渡す。
転校したのに。美理はふたつを抱えてしばし感激。
アルバムを開くと3D映像が投影される。動画と静止画が入っている。
「あ・」
アルバムの間から桜の花びらがひらり。
麗子が「今年も咲いてたよ。あの公園の桜」
美理は花びらを拾い、にっこり。
ふたりでアルバムを見る。
「でんちゅうだ。わあー変わんない。アンも。懐かしいなあ。これヤン先生?朋ちゃん・・」
美理は友の画像にそっと触れる。
「・・あ!」
自分の画像を見つける。再び涙。
「よかった。嫌な気持ちになったらどうしようと思った」
「何それ。そんなの思わないよー」
美理はアルバムを閉じ、寄せ書きを読む。麗子がつんつん。
「で、どこまで進んだの?」
「え、何が?」
「明さんとの関係。まだ手も握ってないんでしょ?」
ブー。手は繋いだ。麗子が退艦した時に。
「そっちはどうなのよ」
「あの学校で彼氏できると思う?」
「はは」
完全に無視されているナトウは立ち上がり、Qの近くに移動する。
ふたりの姿を眺めていたQは微笑みながらつぶやく。
「美理が笑っているのを見るのは久しぶりだな。・・しかし結構長いな、今回の戦闘は」
戦闘の末、<スペースインパルス>は敵艦隊を全滅させる。
アランはつぶやく。
「被弾ゼロか。何て正確な回避だ・・確か剣道の“見切り”とか言ったな。まるでビームが何処に来るか分かっているかのようだ」
ESP解析では明に予知能力は無い。
「やはり無人艦か?」
「調査に」
「副長、待ってください。艦影を確認!」
トスーゴ艦隊24隻がワープアウトして来る。彼らのワープアウトは重力震を伴わない。探知は困難だ。半数がイギャロン級、残りはより大きいバノラス級。
「うす紫?」
敵艦は淡い紫色をしている。
明はインパルスを回頭させる。かなり距離がある。
流艦長が命ずる。
「<スペースコンドル>発進!ステーションの護衛に当たれ!明、グレイ、ご苦労だった。交代しろ」
弾幕とバリアーの中、スペースコンドル隊が次々と発進していく。
数機は<フロンティア号>のプロトン砲に似た対戦艦用の重火器を搭載している。
リュウ隊長とロミ副隊長の二隊に別れ、ステーションへ向かう。
明は副操縦席に移る。代わってサライが主操縦席へ。椅子は自動で最適ポジションになる。サライは操縦桿を握る。
「敵艦隊に向かう!」