悪夢⑥
その星はクリスとリックの両親が惑星改造し、これから移民星として分譲予定だった。
社運を賭けたプロジェクトで、莫大な費用がかかったが、それをはるかに上回る利益をもたらすはずだった。
両親は最終チェックのためシャトルで惑星に降り立つ。
姉弟は衛星軌道上の母船で待機していた。
「お姉ちゃん。何だろう?あれ」
「どれ?」
二連の太陽を覆い隠すように巨大な<何か>が近づく。
<暗黒星>!
警報が鳴り響く。
幼い姉弟の視線の先、<それ>は太陽に取りつく。
声も出ないふたり。
やがて一つの太陽は輝きを失う。
バランスを失ったもう一つの太陽はもがくように見えたが、やがて”<それ>に捕まる。
太陽は失われ、惑星は凍りつく。
この”事故”で両親は死亡、会社は倒産、幼い姉弟は孤児となった。
ここで起きたことをふたりは訴えたが、耳を傾ける者はいなかった。
サーチライトと対空砲火の中を爆撃機が飛ぶ。
コクピット。
上官が命令する「落とせ!」
スイッチを押せない新兵のリュウ。
「何をしている?やれ!」
この下にはこの星の原住生物がいる。すでに勝敗は決した。彼らに抵抗する力はない。
「・・・」
「どけ!この非国民め!」
押されるスイッチ。
眩い閃光。そして巨大なキノコ雲が上がる。
メインブリッジ。
前方に巨大な<ドプラス>。周囲に展開するトスーゴ艦隊。さらに<ネーガー>が高速でインパルスに迫る。
流艦長が命令する。「明と交代しろ!」
「艦長?」
「サライ、お前には無理だ」
「そうそう、明の方が上手い」
「老兵は去れ」
夜のメインブリッジ。
クリスとショーンが当直している。操縦士も他のスタッフもいない。
「おめでとうショーン」
薬指に指輪が光る。
「ありがとう」
「グレイさん狙ってた人多かったのよ」
「知ってる。ロイはカッコいいけど冷たいし。明は背が低いし。グレイで正解だったわ」
「・・・」
「たった1年半でメインブリッジ勤務よ。将来有望よ。将軍になったらどうしよう」
「・・・」
「クリスは好きな人いるの?」
「え?・・私は・流艦長♡ 。渋いわよね。奥さん亡くされて随分経つし」
ショーンひく。
戦場。夜のジャングル。
「はあはあ・・」汗が頬をつたう。
銃を持ち怯える新兵のガルム。
足元に仲間の死体。生き残ったのは彼ただひとりだった。
ガサッ。
「わああああああ・・・・」
物音のした方に無我夢中で発砲。
ドサッ。
「はっ」相手の姿を見て青ざめる。
絶叫。
機関室。
マーチンが「機関長!メインエンジン停止しました!」
「原因究明急げ!補助エンジンに切り替えろ」ニコライが答える。
「全エンジン停止!」
流艦長から通信が入る。
『機関長!このままでは本艦は墜落する!修理急げ!』
インパルスは惑星に落下を始める。下には大都市がある。
「重力遮断シールド!」
「作動しません!」
「反重力爆雷散布!」
「残数ゼロ」
「もう駄目だ」
「最後まであきらめるな!最・・」
爆発。
<スペースインパルス>第4サブブリッジ。
そこはなぜか幾度となく被弾があり、不可思議な現象が起き、”開かずのサブブリッジ”と呼ばれ、通常使われていない。(オリオン大星雲戦でも被弾あり)
新兵は一度ここで一晩泊まるという決まりになっている。肝試しだ。
今夜はアッシュとキークとカンナと葵が餌食いや当番だ。
艦内時間は夜でもブリッジの照明が暗くなることはない。
「おばけなんていないさ♪お化けなんて噓さ♪」カンナが歌う。
「そうそう魂=精神としたら、今は移植も可能な時代だ」とキーク。
「それって・・霊=精神ってこと?」葵の声はか細い。
ふいに照明が消える。
「!」 「わっ!」 「きゃあ」 「何?」
勝手にレバーが動き、メーターが点滅を始める。
「ポルターガイスト!?」
モニターに何かわからないモノが映る。
カンナとキークは抱きついて・・気絶。
「あああ明先輩、助けてくださ~い」
アッシュは明がこの手のものが苦手だという事を知らない。
葵は無言で立ったまま。
「葵ちゃん?」アッシュがのぞき込む。
葵は仁王立ちのまま失神していた。
何かがアッシュの肩を掴む。
アッシュは気を失う。
それぞれの居室で四人は目を覚ます。
夢だった。それも四人共通の。
シャーロットは夜中に目が覚める。
ベビーベッドの望はよく眠っている。
「!」
階下から音がする。誰かがいる。
シャーロットは寝床から出て、パジャマの上にガウンを羽織る。
静かに階段を下りる。
居間に明かりが点いている。
ドアノブに手をかけ、まわす。中にいたのは・・
「!」
「ごめん。起こしたか」
「啓作!啓作!啓作!!」
シャーロットは啓作の胸に飛び込む。
目が覚める。枕が濡れている。
「何?このリアルな夢」
ベビーベッドの望はよく眠っている。
隣に啓作はいない。ワンルームで階下もない。
「・・会いたい」




