悪夢⑤
明と麻美子は夜の砂浜を歩く。
「どうしても行くの?」
「宇宙へ行くのが俺の夢だったんだ」
「そうだよね。ちっちゃい時からそう言ってたもんね」
「・・・」
「私を置いて・・捨てて行くの?」
「・・・」
「私を忘れて、他の女を愛して・・」
「?」
「私を忘れないで!」
明は飛び起きる。汗びっしょり。
ボッケンが心配そうに見つめる。
「大丈夫、夢を見ただけだ。・・・(麻美子は、あんな事は言わない)」
実験室。
ピンニョは檻の中にいる。
彼女は高い知能と特殊能力を与えられた実験動物だ。
同じく実験体のガルーダは人類への反逆を企て失敗し逃亡。
ピンニョは反逆には関係なかったが、
声がする「殺処分だ。」
シュー
檻にガスが充満していく・・・。
息が・できな・い・・
ピンニョは明と啓作の姿を探す。
微笑みながら自分を見ている。
彼らが助けてくれた・はず・だった・のに・・・
霊安室。
横たわる妹の遺体。
行方不明になっていた彼女は“精神移植”の犠牲者だった。
傍で座り込んでいる放心状態のグレイ。
「・・・・」
「ひどい。ひどいよ、おにいちゃん」
「!」声?
「おにいちゃんだけ幸せになって」
「!!」
目が覚める。隣でショーンが寝返りをうつ。
「夢か・・」
テーブルには食べ物が山のように積まれている。
「いっただきまあーす」
マーチンはニコニコして全て食べ尽す。満腹。満足。
ニコライが「わしのケーキはどこだ?」
青ざめるマーチン。
「王子!」
ボッケンは呼ばれて振り返る。
故郷シェプーラ星。王宮の廊下。家来達が立っている。
「勝手に宇宙へ行って、残された者の事をお考えか?」
「修行と称して殺人を」
「その血に塗れた体で王位を継ぐおつもりか?」
「ボクは・・」
霊安室で流啓三は今日亡くなった乗員たちに無言で敬礼する。
艦長室にもどった流はどかっと椅子に腰掛ける。
疲れていた。眠りに落ちて行く。
「親父」
啓作に呼び止められる。
「後で美理の事で話があるんだ」
「わかった」
・・・それが最後の会話だった。
なぜもっと話をしなかった?なぜもっと一緒にいなかった?
「俺はともかく、美理はまだ幼かった!」
そうだ。啓作、お前の言うとおりだ。
あの時。地球連邦本部。マッケンジー主席が流に問う。
「いいのか?流。子供たちと会えなくなるのだぞ」
「銀河で何が起こっているのか?今それを突き止めなければ、あの子たちの未来はない」
詭弁だ。俺は子育てより艦にひかれただけだ。
なぜあの子たちを捨てて艦を選んだ?
なぜ・・・
悔やむ流。
アクア星第六惑星。
デコラスの攻撃で倒れた明は美理に膝枕されている。
美理はハンカチで明の額の血を拭く。
明がつぶやく「麻美子・・」
涙がぽろぽろこぼれる。
「私はその人の代わりなの?」
「美理!」
麗子の声に目を開ける。
「うなされてたよ」
「ごめん。悲しい夢みてた」
涙がぽろり。
リインは寝息をたてている。
「ねえ、リインって誰かに似てるって思わない?」
「私もそれ思ってた。せーので言おうか」
「いっせーの・ナオミ!」意見が一致。
ナオミはふたりの仲の良かった同級生。大銀河帝国の事件で行方不明になっている。
「ナオミを小さくしたみたい。顔もだけど、仕草も似てる」
「そうそう」
ただナオミの髪はリインのような赤毛ではなく漆黒だった。
「きいてくれる?」
美理は麗子に夢の内容を話す。
「うーん・・」麗子はしばらく考えて「・・アスク星で明さん、言ってたよ。『俺は美理を愛する資格が無い』って。でもこれって、好きじゃなきゃ言わないよね」
それを聞いた美理はほほ笑む。
「!」
急に胸に痛みを感じ、美理は気を失う。
「美理!」
麗子の声でリインが起きる。失神した美理を見て蒼ざめる。
ドクターQが美理を往診する。美理は気を失ったままだ。
「もう大丈夫だ。ストレスがかかったせいか?それにしてもナノマシンが効かんとは・・。リイン、もう心配いらないよ。ところで山岡くんは今日夢を見たか?」
「いえ」
「手が足りんのだ。来てくれ」
医務室は夢を見た乗員であふれかえっていた。
メインブリッジ。
アランが「敵の心理攻撃かもしれません」
「クリス。近くに暗黒星は?」流艦長の問いに、
「付近に暗黒星の反応はありません」
「いえ、これはテレパシーです」アランが即答。
「艦内からか?」
「いいえ、おそらく艦外です。艦内のESP反応は先刻以降ありません」
「本艦には対ESPシールドが張られている筈だ」
「明はそれを破って敵艦へテレポートしました。流星の軌道を変える力を持つエスパーなら・・」
再び居室。
美理はすうすう眠っている。リインが心配そうに見つめる。
「・・ごめんね。美理ちゃん」




