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激闘!①

第1章  激闘!ーオリオン大星雲ー


― 宇宙歴500年4月 - 

 オリオン大星雲(M42)。

 地球から見えるオリオン座の三ツ星の下の小三ツ星の一つ。地球からは約1500光年の彼方にある。約30光年におよぶ広大な散光星雲。ここは星が生まれる処。約3000の星が存在し、中心部にはトラペジウムという四つの若い星があり、その紫外線により星雲のガスが電離しプラズマとなり輝いている。

 宇宙船がワープアウトする。中型の民間旅客船だ。

 客室の窓のシャッターが開き、外の景色が見えるようになると、乗客たちから感嘆の声が洩れる。

『長旅お疲れさまでした。当機は間もなくオリオンステーションに到着いたします。乗り換えのご案内をします・・』船内アナウンスが流れる。

 外を見る黒髪の少女。かたちのいい唇が動く。

「約二年ぶりか・・交響曲か宗教音楽が聴こえてきそう。この荘厳さはあの時と同じ、変わっていない・・いや変えてはいけない」

 オリオンステーションに大型宇宙戦艦が接舷している。彼女がこれから乗り込む艦<スペースインパルス>。

 

 <スペースインパルス>の居住区などは約1/8に小型ミクロ化されている。

 ミクロ化シティ内の墓地に花を手向ける別の少女がいる。成長した流美理だ。銀色に緑のラインが入った索敵情報班の艦内制服を着ている。

「兄さん。私、高校卒業したよ。元気よ。明日からはメインブリッジでサブレーダー担当します。

 みんなも元気よ。明くんは三ヶ月の修行で何とかESPをコントロール出来るようになって、帰還後航行班のナンバー2に。でも修行の話はあまりしてくれない。よほど辛いことがあったのかな?グレイさんも戦闘班メインスタッフに出世(正確には昇進)したよ。

 兄さん。あの時、私の質問はぐらかしたでしょ。麻美子さんって誰って質問。

 明くん話してくれたよ。

『幼なじみだよ。両親が死んで、俺が引き取られた家の女の子。姉弟きょうだいのように育った。・・・好きだった。・・そして・君に似ていた』って。

 インパルスは幾つかの惑星に打ち込まれた“種”の破壊に成功、恒星消滅は続いているけど少なくなっているらしい。

 ・・私の体はドクターQが診てくれています。だから心配しないで。

 でも明くんは・優しいのは一緒だけど、あまり笑わなくなった・・私はそれが悲しい」

 手を合わせる美理の頬を涙が伝う。この一年、兄がいてくれたらと何度思っただろう。

「げ!」気がつけば、後ろにシャーロットが立っている。

 赤ちゃんを抱いている。流望。兄啓作とシャーロットの子供。もうすぐ1歳。美理の甥っ子だ。

 美理は真っ赤になる。

「聞こえちゃった?」 

「少しね。美理おばさん」

 望を美理に預け、シャーロットは手を合わせる。

 望はきゃっきゃっと笑っている。その小さな手で美理の人差し指をつかむ。

「望は元気よ。心配いらないからね」花を置く。

 草原の中を歩く二人(三人)。

「今日でしょ。何時に来るの?麗子ちゃん」

「えーと15時・・やば。行かなきゃ」

 美理は駆け出す。シャーロットと望が見送る。


 明は当番でメインブリッジの主操縦席にいる。広いブリッジの最前部中央。明の肩にはピンニョ、左隣の主戦闘席には同じく当番のグレイがいる。

 視界全部を占めるオリオン大星雲は何度見ても圧巻だ。これでも数光年離れている。

 隣に帆船型の宇宙船が停泊している。全長は250m、インパルスの半分程だ。

「帆船とは渋いな、何だあれ?」明がグレイに尋ねる。

「エスザレーヌ女史の乗艦だ。<銀河連合>の大統領だよ、来られてるのかな?」

「ああ、あの美人の・・」

 艦内にもファンは多い。リックはサイン入りブロマイドを持っている。多分偽物だ。

 何かいい香りがする。

「コーヒー淹れたぞ。飲むか?」ニコライ機関長が訊く。

「いただきます」 「ありがとうございます」

 クリスが各人のマイカップに注ぐ。明はミルク入り。グレイはブラック。

 一口飲む。「うまい!」

 ニコライは上機嫌で「コーヒーにはうるさいのだ」

「コレお店出せますよ」

「あのデブ、砂糖山ほど入れて飲みやがる。健康に悪いから注意しといてくれ」マーチンの事だ。「機関整備班うち来て太ったの、あいつだけだ」

 ニコライが文句言うのは認めている証拠だ。

『補充兵到着』

「ねえねえ麗子ちゃん来るんでしょ、変わったかな?楽しみ」ウキウキピンニョ。

 ここオリオン大星雲で補充兵数名が乗艦することになっていた。

 ドッキングチューブより補充兵たちが乗艦して来る。自走式鞄のため皆手ぶらだ。

 その中に山岡麗子の姿もある。相変わらず美人だ。短い黒髪とスタイルの良さは変わらず、少し大人びた感はある。黒のパンツスーツを着こなしている。チャラそうな男が言い寄って来るが無視してすたすた歩いて来る。

 麗子はお迎えの親友に気づき駆け出す。

「美理~!」 「麗子~!」

 ふたりの女子は抱き合いキャッキャッ。一年半ぶりの再会だった。

「本当に戻って来るとは思わなかった。ご両親反対したでしょ?」

「大変だったんだから。聞いてよ・・」

「コホン」というドクターQの咳払いで我に返る。

 メインスタッフが整列している。向かい合って補充兵数名も整列。

 麗子はあわてて列に加わる。美理もマーチンの隣に。

「ようこそ<スペースインパルス>へ。君たちを歓迎する。私は本艦の副長アランです」

「航行班長・サライだ」

「戦闘班長のロイだ」

「医療班長・弓月丈太郎だ、Qと呼んでくれ」

「通信班長のショーンです。よろしくね」

「クリス索敵情報班長の代理の流です」美理です。念のため。

「ニコライ機関長兼整備長の代理のマーチン・です」←無理矢理押し付けられた。

 続けて補充兵の自己紹介。

「航行班に配属されましたアッシュです」いまどきリーゼントの白人男性。イケメンだ。

「戦闘班に配属されましたイグニスです」麗子に言い寄っていたチャラ男だ。

「同じく戦闘班に配属されたグエンであります」東南アジア系男性。

「整備班に配属されましたカンナです」小柄な眼鏡女子。マーチン喜ぶ?

「コンドル隊に配属されたキークであります」

「以下同文、ミザールであります」双子の黒人男子。区別つかない。

「生活班に配属されました葵です」綺麗な女の子。どこかで会った気がするのは気のせい?

 補充兵の挨拶が続く。

「い医療班には配属になりましたナトウです」インド系の男性だ。緊張してる?

「同じく医療班に配属されました山岡です」

 麗子を入れて計11名。

「よろしくお願いいたします」敬礼。  

 警報が会話をさえぎる。


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