悪夢④
<スペースインパルス>の進行方向から無数の流星が迫る。
「これでは・・ワープできません」
「こいつの所に誘い込む作戦だったのか」悔しがるロイ。
「流星群全体の直径は35,000km。小惑星大から小石大まで、数え切れません。最大のものは5600kmあります」
クリスの声は震えている。(地球の直径は約12,600km)
「文字通り流星雨だ」
「あんなの・いくらなんでも避けられないぞ」サライも動揺を隠せない。
「下降したらかわせるが・・中性子星に取り込まれて脱出できなくなる」ニコライも。
「・・・」明は声も出せない。
「衝突まであと90秒」
グレイが「エネルギー充填98%」
「針路このまま。スーパーノヴァボンバー発射用意。目標・前方流星群!」
流艦長はこれを予測していたのだろうか?
「爆裂モードで使用する」
「爆裂モード?」明も美理も知らない単語だ。
「了解」ロイがゴーグルをかける。爆裂モード専用のターゲットスコープになっている。
「最終微調整」計器を操作。
両翼下にあるスーパーノヴァボンバー発射管がわずかに内側を向く。
前回は流が引き金を引いたが、今回はロイが発射トリガーに指をかける。
「目標捕捉・はっ!」 「しまった!」
後方<ドプラス>の回転砲がインパルスを捉える。
そのブリッジをリュウとロミの<スペースコンドル>が強襲する。
大破には至らないが回転砲は沈黙する。ESPも途絶え<ネーガー>は迷走する。
<スペースコンドル>は各個に戦闘宙域から脱出を図る。
前からの流星群は惰性でそのままインパルスへ迫る。
「最終安全装置解除。艦外の装甲兵は”シンクロ”解除しろ!発射10秒前。総員耐衝撃態勢!」
艦外で作業していた装甲兵は静止する。
マーチンは機関室で遠隔操縦用ヘルメットを取り、急いで身体を固定する。補充兵のカンナが手伝う。
「5・4・3・2・1・・」
「撃てぇ!」
ロイがトリガーを引く。
スーパーノヴァボンバー発射!!
どっヴぁあああ――――ん
インパルスの両翼下から眩い光が放たれる。
二つの光は中性子星の重力をもろともせず突き進む。
前から来る流星群の中へ吸いこまれて行く。
すれ違う流星を次々粉砕し、突き進む。
だが幾つかの流星は避けて行く。サイコキネシスによる回避だ。
中央の巨大流星に当たる寸前で二つの光は一つに合わさる。
大爆発。
それは星の様に輝く。流星よりも中性子星よりも眩い光が四方八方に広がる。
無数の流星が消滅していく。次から次に押し寄せる流星も先程避けた流星も消え去る。
光はオーロラの様にゆらめきながらゆっくりと消える。
「これがスーパーノヴァボンバー・・」
初めて見た明は興奮を隠せない。アランがドヤ顔で説明する。
「爆裂モードは人工的に超新星爆発を起こします。広範囲の敵に対し特に有効です」
その衝撃により<ドプラス>は弾き飛ばされる。
中性子星の放つ強力な指向性電磁波に捕まり、航行不能になる。
そのまま中性子星の重力に捕らわれ、落ちて行く。
それを見た流は「反重力ミサイル発射!」
ロイが「とどめをさすのですか?艦長?」
「助けるのだ」
「え?」
「敵要塞と中性子星の間を狙え!」
「わ、わかりました。・・発射!」
後方へ向け放たれた反重力ミサイルは<ドプラス>の真下で爆発。とてつもない重力を反重力に変える。
中性子星の重力から脱したトスーゴ艦隊は上昇していく。
「こちらの呼びかけには応答ありません」ショーンの報告に、
明は少し身を乗り出し「どう出る?」
臨戦態勢のまま敵の出方を待つ。
トスーゴ艦隊は次々とワープ、撤退して行く。
それを見た流は、「馬鹿ではないようだな。ワープは中止。第二戦闘配備に移行し現宙域を離脱。流星系の外で<スペースコンドル>を収容する」
アランたちは<ネーガー>を回収、調査する。
中央作戦室で報告。
「今までの人工知能や遠隔操縦ではなく、ESPによる遠隔操作です。エンジンとビーム砲と爆弾とESP受信装置しかない。シンプルなものです」
「リモコン相手に、この体たらくかよ!」
その場にいたリュウは怒りをあらわにする。
コンドル隊控室。
キークとミザールはへたり込んでいる。
「何もできなかった・なあ」
「ああ。出撃していたら死んでた」
医務室は怪我人であふれていた。
麗子はようやく一息つく。シーツにくるまれた遺体を乗せたストレッチャーが自動で霊安室へ移動していくのが見える。
「(助けられなかった)」
麗子は手を合わせる。涙があふれてくる。
「・・・」その姿を疲れ切った目でナトウが見つめる。
「そうだ。リイン?」
麗子が振り向く。ナトウはあわてて視線を逸らす。
リインはベッドの下でガタガタ震えていた。
麗子は1年半前を思い出す。
あれはアスク星での<神の声>との最初の戦闘。恐怖で震える自分をシャーロットが抱きしめてくれた。大銀河帝国からの銀河逃亡中にも同じようなことがあった。
「もう大丈夫、心配ない・・」
その時のシャーロットのように麗子はリインを抱きしめる。
「いい子だろ」Qがナトウに言う。
「はい・・あ、」
「ライバル多いぞ」
メインブリッジ。
「お疲れさまです」
ふたりの航行班員が交代のため明の元に来る。
「おう。えーっと君は?」ひとりは初めて見る顔だ。
「補充兵のアッシュです。研修中です。よろしくお願いいたします」
<スペースインパルス>はメドゥサ流星系を後にする。
悪夢のような戦いだった。だが本当の悪夢はこれからだった。




