悪夢①
第3章 悪夢
<スペースインパルス>メインブリッジ。
サライが説明する。
「現在位置はペルセウス腕にあるメドゥサ流星系。地球からの距離8300光年。超新星爆発で出来た惑星状星雲の中にあります。大小さまざまな無数の流星が飛び交い、ギリシャ神話のメドゥサの首のように見える事からこの名前が付いています。調査終了後、リインの故郷アルテカ星へのルートに戻ります。アンドロメダ銀河方向、銀河外郭のデルターン球状星団の先、ここです。五カ所の“種”調査を兼ね、行程は26日を予定しています」
「わかった」
「左舷前方流星接近!距離はありますが注意してください」
ゴオオオオオオオ・・・・・
巨大な赤い火の玉が前方を横切って行く。艦の巡航速度に近い。
ニコライが驚いて「あれが流星?彗星じゃないのか?いやもっと速いか」
「発見者が彗星と見間違ったため彗星系という名前が付いていましたが、改名されました。実際かなりの質量があります。本当の彗星は小さな氷の塊だが、あれは白色矮星の欠片です。元々は二連星だったが年老いて一つは中性子星に一つは白色矮星になり、白色矮星の方は砕け、中性子星の強い重力に捕らわれた無数の破片となり周回軌道を周っています。濃密な星間ガスの影響で発光もしているようです」
大質量の恒星の中心核は進化の果てに中性子ばかりの高密度状態となり、そこに星のガスが重力崩壊でなだれ込み超新星爆発を起こす。後に残された中性子星は高速で自転しており、特定の方向にだけ強い光や電磁波を放つ(=パルサー)。
アランの解説を聞いたサライが口を開く。
「速い。その上でかい。白色矮星の欠片だとしたら、重装甲の宇宙船と同じだ。ぶつかったらただでは済まないぞ」
「各レーダーは監視を怠るな」
「わかりました」クリスと美理が答える。
「ここに来た目的はあの流星群のどれかに”巨大隕石”が落下した記録があるからなのですが・・探し出すのは至難の業ですね」
「そうだな。それに中性子星はその重力も脅威だが、表面温度は100万℃だ。インパルスでも近づきすぎれば溶けてしまう」
アラン副長が「艦長。リインを自由にしすぎではありませんか?子供とはいえ・・」
「そうか?」
リインは(艦内時間で)昼間は艦内学校に登校。それ以外は基本麗子と一緒にいる。就寝は美理やピンニョとも同室だ。
第二サブレーダー席。美理の前にあるレーダーに反応が現れる。
「指向性サブレーダー*に反応!前方5億kmトスーゴ艦隊です!転映します」(*一方向のみ探知する長距離レーダー)
メインパネルに艦隊が映る。かなり遠い。途中にある中性子星の影響で画像が乱れる。
「最大望遠」
中央に超大型機動要塞<ドプラス>!その前に約50隻の艦隊が展開する。
敵前衛艦隊より無数の小型機が発進する。
初めて遭遇する全長10m程の円柱形の機体。翼は無く、前面は何かの発射孔に見える。
「全艦第一級戦闘態勢!次元衝撃砲準備!それから・・明たちを出せ!」
「艦長?」
「今までの相手とは違うようだ」
明は牢を出てメインブリッジに向かう。
ふと誰かの視線を感じて振り向くが、誰もいない。
「じゃ」 「またあとで」 「グッドラック」
リュウは艦載機格納庫へ。リックは第一砲塔へ。マーチンは機関室へ。ボッケンは全天観測室へ。ヨキはESP要員室へ。
メインブリッジに到着した明は流艦長に一礼して副操縦席に着く。ちらりと美理を見る。
美理はサブレーダーと格闘中。余裕ない。
「艦長のご指名だ。しっかりやれ!」サライの口調は少しきつい。面白くないのだろう。
明は席の前のディスプレイを見る。状況を確認。
左舷前方に中性子星。近い流星の位置。敵艦隊の位置・数・タイプ。
艦内通信のスイッチを入れ、「ボッケン!」
『こちら全天観測室。何だい兄き』
「流星の動きに注意してくれ」
『了解』
明は視線を前に移す。肉眼でもあの<でかい奴>が見える。
「だめです。こちらの呼びかけには応じません」ショーンが残念がる。
「先制攻撃をかける!次元衝撃砲発射!」
「発射!」グレイがボタンを押す。
インパルスの主砲はエネルギーをワープして撃ち出す次元衝撃砲に換装可能だが使い勝手が悪い。新たに後部上甲板に16門の次元衝撃砲発射管がつくられた。
どヴぁあああああ――――――
緑色の軌跡が空間に消えて行く。
それはトスーゴ艦隊の目前に現れる。
はるか前方に幾つもの閃光が上がる。
「エネルギーチャージ!完了次第発射しろ!」
流艦長は前を指さす。
「敵艦隊中央を突破し、ワープにてこの宙域を離脱する!スペースコンドルは発進後フォーメーションAに展開、艦隊突破後は各個にワープ、ポイントは追って知らせる」




