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またいつか

もちろん冒険者として、迷宮がどんなものかは知っている。

 迷宮というのは、簡単に言えば今より千年以上も前に繁栄していた旧時代と言われる時代の遺物だ。

 現代では不可能な魔法技術によって作られていて、地下に潜っていった先にはあり得ない環境が広がっているって聞いたことがある。

 噴火を続ける火山地帯や、生き物全てを凍らせる氷雪地帯とか……あと嘘か本当かはわからないけど、雲の上とか。


「そんなに気後れしなくても大丈夫よ。実際にそういう天変地異が起きたみたいな階層は全体からみるとほんの一握りだから」


「なるほど……」


 迷宮についてあまりに無知すぎたので色々と妄想をたくましくしてしまっていたが、たしかによく考えてみれば迷宮で普通に冒険者が活動しているわけだし、そこまでやばいわけないか。


「迷宮なら階層ごとに出てくる魔物も違うし、他の冒険者も多く潜っているから自分がどの程度の実力なのかもわかりやすいと思うわ」


「たしかに、それなら自分の限界ギリギリを見極めて戦えそうですね」


 迷宮は下に潜れば潜るほど、魔物が強力になっていく。

 階層を下がるごとに魔物が強くなっていくというのなら、たしかに自分のレベルにあった相手と戦うこともそこまで難しくなさそうだ。


「近くに迷宮都市ってありましたっけ?」


「いくつかあるわよ。一番近いのは……ここから馬車で半月ほどいったところにあるラビリアかしら?」


 迷宮というのは、危険度の高い宝の山だ。

 未だわかっていない部分も多いがとにかく迷宮にはたくさんのお宝が眠っている。


 たとえば迷宮の中に出現する宝箱には、ゴミみたいな価値のものから金貨数百枚になるものまで色んな種類の物が入っているという。

 それに迷宮の中にはこれまたどういう仕組みかわかっていない方法で湧き出てくる魔物が無限に出現するため、その素材もかなりの金になる。

 アイアンゴーレムなんかが出てくる迷宮だと、実質鉄鉱山みたいなものだしな。


 そんな風に迷宮というものは、とにかく大量の金が動く。

 迷宮の周りには迷宮産出の物品を売りさばきたいやつがいて、迷宮に潜る冒険者を相手に物を売りたいやつなんかもいる。

 迷宮の周り人と物の流れが集中するため、迷宮をぐるりと囲むような形で街ができていった。

 それがいわゆる、迷宮都市というやつである。

 迷宮都市は実入りも大きいが、その分だけ危険も高いと聞く。


 だがたしかに今の俺たちにとって、これほどふさわしい場所もないように思える。

 環境的にレベル上げにも適しているし、色んな魔物が出てくる迷宮に入れば経験値の効率のいい魔物を探すことも可能なはずだ。

 大量の冒険者たちがいるとなれば、彼らの中に俺たちパーティーの新たなメンバーになってくれる人だっているかもしれない。

 礼を言い、一度宿に戻ってアイル達に話をしに行く。


「いいんじゃないでしょうか。私も一度、迷宮都市には行ってみたかったですし」


「めえめえ~っ」


 アイルはどうやら賛成らしく、メイは……よくわからんが楽しそうにしている。賛成ということにしておこう。まあ仮に反対だったとしても、賛成2反対1だし多数決で決定だ。


 というわけで俺たちが次に向かうのは迷宮都市に決定した。

 迷宮都市はいくつかあるが、俺たちは行き先をここから二番目に近い迷宮都市のフィルロスに決める。

 ここからいける範囲の迷宮都市の中で一番大きく、かつ様々な魔物が現れるのがここだったからだ。


(よし、強い魔物とどんどん戦って、ガンガンレベルを上げていくぜ!)


 そうと決まれば話は早い。

 俺たちはブルドでできた知り合いの人たちに別れを告げながら、旅の用意を進めていく。


 別れを惜しんでくれる人も、俺たちの旅路を祝福してくれる人もいてくれて。

 頑張ってワイバーンを倒したことは無駄ではなかったのだなと改めて思うことができた。


 寂しくないと言えば嘘になるが……俺は自由気ままな冒険者。

 俺のスキルの都合上、強くなるためには強いやつのいるところに行かなくちゃいけない。


 馬車に乗り、ブルドの街を後にする。

 見れば俺たちを見送りに、結構な数の人がきてくれていた。


「それじゃあ……またいつか!」


 もしレベルアップの必要がなくなったのなら、ブルドの街に定住してもいいかもしれない。

 俺はそんな風に思いながら、皆にぶんぶんと手を振るのだった――。

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