レベル上げの限界
俺たちのレベルアップに向いた街……それは簡単に言えば、今いるブルドの街からいける場所よりもっと強力な魔物たちが棲んでいる地帯だ。
邪神の加護持ちゴブリンにワイバーン、『邪神教団』の幹部たち……今までのことを考えると、基本的に敵は強ければ強いだけ経験値が高かった。
ただ、強すぎてはいけないというのがなかなか難しい。
今の俺たちで瞬殺されるような場所だと、レベルを上げる云々の前に瞬殺されてしまって終わりだからだ。
ある程度強くて、けれど俺たちにとってはそこまでもきつくない敵を相手にしてレベル上げは問題なくできる……俺たちが探しているのは、そういう敵なのだ。
ここで気にしなければいけないのは、今まで戦ってきた魔物たちの強さだ。
あの原種ワイバーンは、Bランク上位程度の力があった。
あいつと戦ってからさらに激戦をくぐり抜けていることを考えると恐らく今の俺らの力はBランク上位~Aランク下位と言ったところだと考えていいと思う。
俺がBランクに上がったことで、Cランクの頃ではいけなかったような厳しいところであっても問題なく探索の許可は下りる。
と、ここまで考えたところで俺はふと疑問に思ったのだ。
本当にただ強い魔物の居る場所へ向かい、戦うだけでいいのだろうか?
というのも俺がレベルアップをするために必要な経験値。
こいつは戦う魔物の種類によって違う。
だがそれは純粋な強さな倒しやすさはまた少し違う。
たとえば俺はゴブリンリーダーは戦いが始まれば即殺できる。ゴブリンリーダーは好戦的な敵なので生息地帯に向かえばわらわらと出てくることだろう。
ゴブリンやゴブリンソードマンも一緒に戦うので、一度の戦闘で70近い経験値を稼ぐことができる。
対し、同じCランク魔物のアングリーシープの群れを倒したの経験値はおよそ500ほど。 けれどあれは見つけるまでに何日もの時間がかかった。
経験値自体は少ないとはいえ、効率的なレベルアップを狙うのならゴブリンリーダーを延々と狩っている方がいいわけだ。
効率的なレベル上げ……今まではあまり考えてはこなかったが、この考え方が、まさしく今の俺たちには必要なのだ。
――実は俺のレベルアップに必要な経験値は、加速度的に上昇している。
『邪神教団』というイレギュラーがあったせいでレベルはわりと順調に上がっていたが、現在俺のレベルの上昇はほとんど止まってしまっている。
レベルが20に上がるまではレベルアップごとに500ずつ上がるだけだったんだけど、今はざっくり計算で
レベル20→21 必要経験値10000
レベル21→22 必要経験値20000
レベル22→23 必要経験値30000
俺のレベルは前より格段に上がりにくくなっている。というか、このブルドの街で上げるのはあと一つか二つが限界だろう。
そしてこのままいくとアイルとメイもそう遠くないうちに俺と同じ状況になるのだ。
なので俺はギルドマスターに話を聞いてみることにした。
成人するまでほとんどアングレイの街から出たこともなかった俺は、そういった常識には疎い。
それに魔物のことを聞くのに、ギルドマスター以上に適任者はいないだろう。
ブルドの街のギルドへ行ってみると、ギルドマスターのエレーナさんとは簡単にアポが取れた。
俺たちがそろそろこの町を出るというと、彼女は寂しくなるわね……と言いながらもアドバイスをしてくれた。
「強すぎないけど歯ごたえがある魔物が出る場所ね……それならやっぱり、迷宮じゃないかしら?」
「迷宮、ですか……」
エレーナさんがしてくれたアドバイスは、俺が考えてもいなかったものだった――。




