ほくほく
『邪神教団』の残党との戦闘はあっけなく終わった。
正直なところガビウスは強かったが、他の奴らの強さはそこまでじゃなかったな。
冒険者で言うと大体Dランク前後の力はありそうだったが、ぶっちゃけ俺たちの敵ではなかった。
戦闘を終えたことによって、無事にレベルが上がった。
アイルの回復を受けながらでも皆かなりボロボロだったのでかなりありがたい。
しかし、今回もまたギリギリの戦いだったな……。
俺は強敵と戦う運命にでもあるんだろうかとでも邪推してしまいそうになる。
なんとか勝てたが、次はやりたくないな。
今回は俺と向こうの相性がこっちに有利に働いていたから勝てたが、正直他の幹部連中と戦っていたらまず勝てなかっただろう。
前に戦ったあの男には、何もできないまま瞬殺されたからな……。
まあそんなことを今言っていても仕方がない。
ここで現状を確認して落ち着くためにも、改めて皆のステータスを見ていくことにしよう。
ステータス
チェンバー レベル23
HP 196/196
MP 11/11
攻撃 111
防御 106
素早さ 71
魔法
ライト
レッサーヒール
サンダー
ステータス
アイル レベル20
HP 91/91
MP 117/117
攻撃 27
防御 53
素早さ 48
魔法
レッサーヒール
ヒール
マジックバリア
ライトアロー
ライトジャベリン
エンチャントライト
ハイヒール
ライトウィップ
ステータス
メイ【アングリーシープ(ユニーク個体)】
レベル19
HP 239/239
MP 0/0
攻撃 37
防御 72
素早さ 22
魔法
なし
魔物スキル
物理ダメージ軽減(特大)
魔法ダメージ軽減(中)
俺やアイルは順調に強くなっている感じがする。
ハイヒールが使えるようになってからは、アイルもかなり安定感が増している。
彼女はもう既に、以前言っていたような、自分を追放した奴らを見返せるヒーラーってやつになれているんじゃないだろうか。
今回のレベルアップで一番収穫があったのはメイだな。
防御やHPが伸びているのはいつものことなのだが、俺らと違って使える魔法やスキルに変化がなかったメイが新たなスキルを身に付けた。
どうやら俺の場合は制限されていたスキルの力が解放されていく感じで、メイの場合は新たなスキルを覚えていく感じになるらしい。
今までメイは、物理には強いが魔法には弱かったが、その弱点が補強された感じだな。
魔法攻撃を使われたら持ち前のHPでなんとか受けていたけれど、これからはスキルの力で余裕を持って魔法も防ぐことができるようになるだろう。
今後もこんな感じで防御力がガンガン上がっていくなら、メイは生粋のタンクってことになるな。
あれ、でもよく考えてみると、俺のステータスの上がり方って、そんなにタンクっぽくはないような……?
……これ以上考えるのは虚しくなるだけなので止めておこう。
「めえっ!」
自分に新たな力が授かったことを感じ取ったらしく、メイはニコニコと上機嫌に笑っている。
相変わらずもこもこでマスコットみたいだが、今のメイの防御力は本物だ。
パーティー強化を使えばガビウスの攻撃も耐えられたんだ。もしかしたらメイなら、近い将来ドラゴンのブレスだって防げるようになるかもしれない。
「とりあえず、報告しに戻りますか?」
「少し悩みどころだけど……俺はこのまま探索を続けたいと思ってる」
一度帰ってからまたここまでやって来るのは、正直しんどい。
もし帰るのだとしてもせめてどこで採れるか、採取の目安くらいはつけておきたい。
ということでとりあえず証拠になりそうな遺品を集めて、俺たちは先に進むことにした。
『邪神教団』との遭遇なんてとんでもなイレギュラーがそれ以上発生することはなく。
俺たちはサクサクと探索を進めていく。
その中でまた一つ、新たな変化に気付いた。
俺の愛剣であるトールが纏う雷の質が、以前と比べると変わっているのだ。
「多分……というか間違いなくガビウスの雷が原因だよな……」
トールが発し俺の身体が纏う雷の色に、黒が混じるようになったのだ。
そして雷を最大まで溜めて放つ時の雷には、赤が混じるようになった。
ガビウスの雷を受け続けたことで変化があったと考えるのが自然だが……とりあえず、俺の身体にかかる補正や雷の威力自体は以前と比べると上がっている。
ガビウスの呪いなんかがかかっていたら怖いが……このあたりも一度、詳しい話をダゴンさんに聞いてみることにするか。
それ以降は特に変化らしい変化もなく、俺たちは無事に霊峰ミヤダケの探索を終えることができた。
そして竜泉花の花粉と聖御影石を採取することができたので、ギルドでの報告を終えて丸一日拘束されたりしながらも、ほくほくでダゴンさんの下へと向かうのだった――。




