雷
トールが放つ雷撃は、大した魔法を使こともできず、愚直に大剣を叩きつけるしかできない俺の戦いを幾度も助けてくれた。
俺にとって唯一の中距離攻撃である雷撃。
こいつは俺の生命線であり、それ故に与えられるダメージ量についてもしっかりと理解しておかなければならなかった。
今の俺にとって、雷撃でどれくらい相手が傷を負うのかというのは、相手の強さを推し量る上での一つのバロメーターになっている。
こいつの放つ攻撃はゴブリンなどの雑魚であれば一撃で確殺が可能であり、Bランクの魔物までならしっかりとダメージが通る。
今回はどうだったのかというと……。
(一応攻撃自体は通用してるが、大したダメージは与えられてない……)
ワイバーンにも効いたはずの雷撃だが、目の前の『邪神教団』の男に痛打を受けたような様子はなく、ピンピンとしている。
その力はワイバーンを超えているとなると……相当キツいぞ。
俺が接近戦に持ち込もうとすると、男は少し後ろに下がりながら手をこちらに向けた。
「私の名はガビウス。この名を胸に刻んだまま死んでいけ――黒雷!」
「――めえっ!!」
マズいと思い剣で庇おうとした俺の前に出てきたのは、身体を張って飛び出してくれたメイである。
メイが相手の攻撃をその身に受け、悲鳴を上げる。
HP自体がかなり高いため一発二発程度なら問題はなさそうだが、メイが強いのは物理防御に対してなので、魔法に関してはそこまで強烈な耐性を持っているわけじゃない。
HP管理をしっかりやらなければ、メイの身体が保たないはずだ。
ただ、一つ光明が見えた。
それは相手が使った魔法が、黒い雷だということ。
これが魔法の雷属性なのか、スキルによるものなのかはわからないが……もしかするとダメージが通らなかったのは、相手が雷使いだからじゃないのか?
それを試すためにも、接近する。
後ろからは、アイルがメイをハイヒールで治しているのがわかる。
ガビウスは再び距離を取ろうとするが……させるかよっ!
雷を発動させ少し鈍くなっているのに加え、メイが攻撃を肩代わりしている間も進み続けたことで、相手との距離は更に縮まっている。
俺は目の前にいるガビウスに、思い切りトールを叩きつけた。
「がっ……」
男の身体の表面を、トールが撫でる。
傷が刻まれ、剣閃の後を追うように赤黒い血が飛ぶのが見えた。
攻撃が……効いてる!
素の防御力が、それほど高くなさそうだ。
恐らくこいつは前のやつと違って、魔法戦に特化している後衛タイプなんだろう。
大剣を振り回しながら、相手をじっくりと観察する。
大振りの一撃が多いからこそ、相手の攻撃や予備動作を見逃しては攻撃が当たらない。
右に薙いだ剣を制動し、再度叩きつける。
避けようとされたが、それを攻撃の向きを変え追尾させれば攻撃は簡単にヒットした。
(どうやら速度に関しても、こちらに分がある。距離を詰めちまえば、こっちのもんだ!)
相手が避けられぬよう、点でなく面の攻撃を続ける。
服越しだろうが腕越しだろうが、思い切り叩きつけてやれば相手にダメージは入るつく。
乱暴な戦い方だと自覚はしているが、俺の場合は実際こうやってパワーで押し切ってしまった方が勝ちパターンに入れやすいのだから仕方がない。
「爆雷!」
男は距離を取ろうと下がるのではなく、その場で雷を生み出してきた。
黒い雷が波状に広がり、俺とメイ、そして後方にいるアイルへと襲いかかる。
俺とメイには直撃したが、アイルはマジックバリアで攻撃を防ぎきっていた。
どうやら距離に比例して、威力がガクッと落ちる仕組みになっているようだ。
けれど距離を離したらこちらが一方的にやられるとわかっているので、痛みを覚悟で前に出なくちゃいけない。
「ちいっ、鬱陶しいっ!」
「離させねえよっ!」
攻撃を受けている間に再び逃れようとしていた、ガビウスに剣の腹を叩きつける。
があっと呻きながら、こちらを驚いたように見つめている。
「なぜ、俺の雷を食らっても動けるのだ……っ!?」
最初は言ってる意味がわからなかったが、後ろにいるメイのか細い声を聞いたところで理解が及んだ。
多分だけどこいつの雷には、相手の行動を阻害したり麻痺させたりする効果があるんだ。
俺に効かない理由は多分……トールの雷を常に浴び続けて耐性ができてるからってところか?
恐らくこのガビウスの基本的な戦法は、黒い雷を食らわせて相手を麻痺させながらの一方的な魔法攻撃に違いない。
なんともいやらしいが、防ぎようのない戦い方だ。
身体が動かなくなれば、一方的にやられることしかできないだろうからな。
だが残念だったな。
どうやらお前にとって、俺は天敵らしい。
俺は冷や汗を掻いているガビウス目掛けて、手を緩めることなく猛攻を続けていく――。




