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育ち

「我々のことを存じてくれているようですね。あなたにもアジ・ダハーカの加護があらんことを……」


「ああ、その気持ち悪い見てくれは、忘れたくても忘れられないからな」


「この素晴らしい刻印を見てもそんな風に感じることしかできないとは……品性下劣この上ないですね」


 その身体から発する威圧感は高い。

 俺をぶちのめしたあの男は強さがかけ離れすぎていたから何も感じ取ることはできなかったが……こいつからは闘気のようなものをしっかりと感じる。


 強いことがわかるってことは、そこまで戦闘能力に開きはないってことだ。

 それはプラス要素だろう。


 だがそもそもこんなところで『邪神教団』の人間と会うとは思っていなかった。

 ……いや、こんなところだからなのか?


 この霊峰ミヤダケは、悪党が身を隠すにはもってこいの場所だ。

 おまけに冒険者もやって来るし、いくつもある難所のせいで行方不明者が出てもそこまで不思議じゃない。


「最近巷で噂の誘拐騒ぎはお前たちのしわざなのか?」


「ええ、その通りです。彼らには邪神様の生け贄となってもらいました」


「……反吐が出るぜ」


「あちら側の世界で、彼らも敬虔な邪教徒となっていることでしょう」


 ふるふると身体を震わせながら手を組んでいるその様子は、たしかに敬虔な信者そのものだ。だがそのせいで被害に遭っている人がいる以上、そんな馬鹿げた真似はやめさせなくちゃならない。


「一つ質問を良いですか?」


 俺が戦闘態勢を整えようとしたところで、アイルがメイを引き連れて前に出てくれる。

 二人に隠れる形で、俺はトールを振って電撃をギリギリまで溜めさせてもらうことにした。

「あなたは……アリオス派ですか。一体なんです?」


「あなたは邪神アジ・ダハーカを信仰しているはずですよね? 本来邪教や邪神という言葉は、その宗教を斥けるために使われるマイナスな言葉です。なぜ教徒である貴方自身が、邪教徒を名乗るのですか?」


「良い質問ですね。それは簡単です、この世界そのものが間違っているからですよ。ネアのような女神がはびこっている世界は、糾さねばならない」


「ネア様はあまねく全ての人間たちにスキルの恩寵をもたらしてくれました。邪神が与えてくれるのはその刺青と、邪神教徒にのみ与えられる歪な力でしょう?」


「ええその通り、我々は神に選ばれたのです」


「であれば、対話に意味はありませんね」


「左様、戯れ言はこのくらいにしておき……」


 男が言い終わるよりも、俺の準備が整う方が速かった。

 大剣を下段に構え、メイとアイルの間を縫うように駆けてから、逆袈裟の一撃を放つ。


「雷剣トール!」


 爆発。

 雷が轟き、雷光が視界を真っ白に染め上げる。


 世界が色を取り戻した時、そこにはプスプスと着ている服を黒焦げにした男の姿があった。


「――話は最後まで聞けねぇのかぁ、このクソ雑魚がぁっ!」


「ああ、生憎俺は――育ちが悪くてね」

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