火花
オークキングは、岩を彫って作った玉座のようなものに座っていた。
身体はオークリーダーたちよりも一回り大きく、腕なんかは巨木の幹みたいに太い。
「ぶぅっ!」
どうやらオークキングは、まずは自分の部下をぶつけるつもりらしい。
配下を使って自分は何もしないとか、どうやら本当に王様気取りのようだ。
俺たちをじっくりと観察するつもりなのか、どう調理してやろうかという感じでこちらを値踏みしている。
戦わないんならそこで見とけって感じだ。
見られてようがそうじゃあるまいが、別にやることは変わらない。
まず潰さなくちゃいけないのはヒーラーだ。
前衛にダメージを与えまくってからそれを治されたんじゃ、たまったもんじゃないからな。
オーク達の群れは全面に普通のオークが、真ん中当たりにオークメイジやオークプリーストが、そして一番奥の玉座のようなところにオークキングという位置取りになっている。
間違いなく乱戦になるだろうが、やるしかない。
「行くぞ、メイッ!」
「めええっ!!」
俺とメイが前に出る。
気付けばイーブさんの姿は既になく、見れば既にオーク達の真ん中あたりまで移動していた。
瞬間移動でもしたんじゃないかってくらいの早業だ。
「おおおっっ!」
大剣を振る。
一匹目のオークを横から真っ二つに裂き、そのまま少し上げてからの振り下ろしで二匹目のオークを潰す。
三匹目、四匹目、五匹目。
周りにはまだまだオークがいるので、剣を振ればすぐにでもオークに当たるという状態だ。
大剣は乱戦に向いている。
剣をブンブンと振り回し続けることさえできれば、相手に接近されることなく攻撃を続けることができるからだ。
ただ、大剣を振るためにはどうしても隙が生まれる。
だがその隙を埋めてくれるのが――。
「めえっ!」
物理攻撃に対して極めて高い体勢を持つメイだ。
メイが俺目掛けて放たれたオークの棍棒の一撃を、その身で受ける。
一見するとふわふわの羊毛は、驚くほどにクッション性が高い。
子供がメイの上で跳ねることができるほどに弾力性もある。
そしてメイが持つ物理ダメージ軽減(特大)のスキルも合わせれば、相手の完全に攻撃の威力を殺すことができる。
棍棒の一撃が身体に届く時には勢いは完全に殺されており、メイの身体には傷一つつけることができなかった。
「そいっ!」
そして攻撃をいなされたオークへ、俺は一撃を叩き込む。
メイが攻撃までの時間を稼いでくれたおかげで、威力の乗った攻撃が打てる。
横薙ぎはオークの身体をぶち抜き、更に勢い余ってその隣にいるオークも真っ二つにしてしまう。
勢いを殺さずにそのまま腕の力も足してやり、近くにいたオークにも攻撃を当ててやる。
一瞬にして三匹の同胞が死んだことで、オーク達がずさっと後ろに下がる。
……そういえばオーク達に回復が飛んでこないなと思っていると、既にオークメイジとオークプリーストはイーブさんによって殲滅させられていた。
おいおいメイ、俺たちも負けてられないぞ。
距離を取ってくれたのは、むしろありがたい。
大剣は攻撃に威力を乗せるために、思い切り叩きつけるだけで面白いようにオーク達が倒れていく。
気付けば俺達はオークの群れの真ん中あたり――オークの上位種たちのあたりまでやってくることに成功していた。
ここまで来れば、後は簡単だ。
俺とメイに加えてイーブさんも入ったおかげで、純粋に手数が増える。
とりあえず攻撃範囲が一番広い俺が、残存しているオークを潰しながらオークの上位種たちにもしっかりと攻撃を加えていく。
どうしても避けられないタイミングがあったら、メイに攻撃を肩代わりしてもらう。
そこで生まれた隙を使って俺とイーブさんが着実に魔物を仕留めていく。
今回の討伐は、ヒーラーがいない。
もちろんポーションは持ってきているが、数は限られているし、飲んでいる間の隙も大きい。
なのでとにかく、ダメージを負わない戦い方ができるよう気を付けながら戦う。
俺とメイだけでは対処しきれない事態になった時には、イーブさんが助太刀をしてくれる。 Bランク冒険者というのは伊達ではなく、魔斧に大量の血を吸わせたイーブさんは、既にその姿を視界に収めるのが難しいほどにスピードが上がっていた。
は、速いな……Bランクの中でも、かなり強い方なんじゃなかろうか。
イーブさんの高速機動に圧倒されながらも倒していると、ズザッと奥から大きな音がした。 何かと思えばどうやら目の前の状況を見たオークキングがとうとう戦うつもりになったらしい。
周囲にいるオーク達を蹴散らしてから、イーブさんがこちらを試すような、挑発的な目で見てくる。
「それじゃあこれからチェンバーがBランクになれるに相応しいか……見せてもらう」
「了解です、特等席で見といてくださいよっ!」
駆ける。
レベルが上がり、土埃が舞い突風を起こすほどの全力疾走で前に出ながら、剣を後ろに退く。
そして溜めて溜めて、ギリギリまで溜めてから――ここだっ!
「おおおおおおっっ!!」
「ぶひいいいいっっ!!」
オークキングが持つ得物は、メイスのような大きな杖だ。
軽々しく振り回しているが、金属製なのだろう。風を切る音は重たく、低かった。
オークキングの振り下ろしと、俺が振り上げたトールが激しくぶつかり合う。
激しい火花が散り、視界がちりちりとオレンジ色に燃えた。
さっさと蹴散らしてやるよ。
俺はこんなところで――止まれねぇんだ!
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