新魔法お披露目
オークキングという魔物のランクはB。そしてなんなら魔物としての強さも、Bランクとしては上から数えた方が早い。
Bランク昇格試験で倒すには、少々しんどい相手な気がするが……。
「オークキングの難易度は、周囲の配下達を含めてのもの。取り巻きや雑魚オーク達をある程度間引いて、ギリギリBランクに入るくらいの難度に調整する」
ということらしい。
試験官にそう言われれば、俺の方からは何も言うことはない。
そもそもキマイラ然りワイバーン然り、パーティーでの討伐とはいえBランクの魔物を倒した実績もあるんだ。
やってやれないことはない。
「オークの巣の規模が大きくなってきているせいで、近隣の村にも被害が出始めてる。悲劇は私たちの手で、終わらせる」
無表情のまま、イーブさんがグッと拳を握る。
感情表現が乏しいのでクールな人なのかと思っていたけど、どうやら思っていたよりずっとアツい人みたいだ。
そういうのは正直……嫌いじゃないぜ。
がぜんやる気を出しながら、馬車に揺られることしばし。
ブルドから少し離れた場所にある村の近くで下ろしてもらい、そのまま村とは反対方向へ向かう。
村に一日逗留して疲れを取ってもいいと言われたが、別にこれくらいじゃほとんど疲れも感じないしな。
それならさっさと試験も、村の人たちの不安も、終わらせた方がいい。
「作戦は単純、正面突破」
「了解です」
「最悪できなかったらチェンバーを逃がしてから私が殲滅するので、死なないようにだけ気を付けてくれればいい」
「了解しました」
小走りで駆けていった先に、オークの巣が見えてくる。
恐らく洞穴の中に住んでいたのだろうが、オークの数が増えすぎたからか、外にまでいくつかあばら屋のようなものができはじめていた。
数はかなり多そうだ。
なるべくサクサク倒さないと、囲まれてこちらが不利に追い込まれそうだ。
ここはスピード重視の機動戦で攻めてくか。
「ぶひいいいっっ!」
こちらの接近に気付いたオークが、豚みたいな声を発しながらドスドスと近付いてくる。
合わせるように近くにいたオークたちも動き、合わせて三匹ほどが俺の方に向かってきた。
まだ少し距離があり、剣の間合いじゃない。
とそこで俺にある閃きが。
せっかく暇だし、レベルを上げて新たに手に入れた魔法を試してみるか。
「サンダー!」
接近しながら魔法を使う。
バチバチバチッと光を発しながら、雷が生み出され、オークたちへと飛んでいった。
攻撃は当たるが……焼け焦げて炭化するほどのものではない。
オークたちの動きは若干遅くなっているが……それだけだ。
(チクショウ、折角魔法が使えるようになったのに、結局物理的に倒すしかないのかよ!)
雷に痺れて動きが鈍くなったオークに、雷剣トールを叩きつける。
脳天からの唐竹割りの一撃で、オークは完全に絶命した。
俺はやっぱり魔法使う意味……ねぇな!
魔法剣士とかに憧れたりもしたけど、
「これがっ!」
「ぶひっ!?」
「ネア様の!」
「ぶひぐっ!?」
「思し召しってやつかよっ!」
回転斬りを使い、オーク達を一掃する。
魔法より物理の方が圧倒的に強い俺のステータス。
スキルが神様が適性を見てくれるものっていうんなら、俺のこの物理特化型のステータスが一番俺に合ってるってことなんだろ。
ちょっと残念な気持ちもあるけど、別に構わんさ。
それならこのまま……突っ走るだけだからな!
「お見事。このまま中に入るけど……準備はオッケー?」
「――上等ッ!」




