見送り
エレーナさんがしてくれた話は飽きないものばかりだった。
既に『邪神教団』をサーチ&デストロイしていたのがジェインだというのには驚いたし。
その後に付け加えてきた、ブルドのギルドの受付嬢のミニスカはエレーナさんの趣味だという話にも驚いた。
まあなんにせよこれで街の目の上のたんこぶだったワイバーン騒ぎは収束したことになる。
今後しばらく、ブルドの街は少しは落ち着くことだろう。
「さて、次は何をするのがいいのかな……」
エレーナさんとの話が終わった俺は、とりあえず依頼が並んでいるギルドボードに目を通していた。
メイを拾うことになったアングリーシープ戦から黒いワイバーン戦、そして『邪神教団』の幹部らしき男と、ここ最近は冗談抜きで戦い詰めだった。
たまには休みも取らなくては、戦うのは嫌いじゃないとはいえ、流石にしんどい。
人生には潤いが必要なのだよ、潤いが。
どうせなら将来的にサブメンバーになってくれるような仲間を探すのもいいかもしれない。
俺のスキルは、わりと簡単に人を強くすることができる。
だから現時点の強さとかよりも信頼できるかどうかとか、協調性があるかどうかとか、そういったところで人を選んでみたいところだ。
ギルドボードを眺めてみるが、残念ながら俺の琴線に触れるようなものはなかった。
今ならワンちゃんの散歩とかでも受けたい気分なんだが……そう言った楽だが金払いがそこそこいい依頼っていうのはあっという間に消えてしまう。
とりあえずワイバーンの素材の方の鑑定は終わったかと尋ねに行く。
受付では既に準備は整っており、色んな人間が上乗せに上乗せを重ねたワイバーン討伐の報酬が手渡される。
き、金貨がこんなにずっしり……これだけあればしばらく金には困らなそうだ。
「売るのは火炎袋と肉だけでいいんですね? できれば爪や鱗や皮も売ってくれるとありがたいんですが」
「そっちは装備の新調に使いたいので、すみません」
素材は自前なわけだから、鎧や革の鎧下、メイ用の爪武器なんかを作ってもさほど金はかからないはず。
それなら余った金で、しばらくは困らない生活ができそうだ。
ルンルン気分でギルドを去ろうとする俺だったが、受付嬢さんはすかさずたたみ込んできた。
「おめでとうございます。貢献度が一定に達しましたので、チェンバーさんとアイルさんの両方がランク昇級試験を受けることができるようになりました。今だと無料で受けられますが……どうしますか?」
ランクがBに上がれば、更に強い魔物の討伐依頼を受けられるようにもなる。
そして何より、今だけ無料の魅力には抗えない。
俺は予定を確かめるべく、急いでアイルを探すのだった――。
パーティーとしてだと同じランクだが、俺たち個人のランクは違う。
ランクの昇級試験は個人で受けるものであり、パーティーとしての評価とはまた少しズレてくる。
俺たちはCランクパーティーとして登録しているが、俺はCランクでアイルはDランクだ。
なので今回受けるのは俺がBランク、アイルがCランクへの昇級試験ということになる。
当然ながらランクが上に上がれば上がるほど試験を受ける人数も減ってくるし、そのための手間も必要になってくる。
というわけで俺よりも先にアイルの方が試験を受けることになった。
「行ってきまーす、お元気でー」
「帰ってこいよー」
「めぇー!」
俺達は元気に手を振るアイルを見送る。
彼女の姿が見えなくなるまで手を振り返してから一息つく。
とりあえず……武器防具屋に行くとするか。
穴の空いた鎧なんか着てたらさすがに依頼も受けられないしな。
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