一件落着
あ、俺死んだわ。
死神の鎌が首を刈りとる生々しい感触、命の火が消えていく実感。
間違いなく死んだ……はずだった。
「――ガハッ!! ゲホッ、ゲホッ……」
「チェンバーさんっ!?」
「めえぇっっ!!」
「げほっ、えほっ……俺……生きてるのか」
けれどどういうわけか、俺は息を吹き返していた。
そう言えば意識が途切れる間際、何か音が聞こえてきたような……と思いステータスを確認する。
そして俺は、絶句した。
ステータス
チェンバー レベル21
HP 180/180
MP 10/10
攻撃 102
防御 99
素早さ 66
魔法
ライト
レッサーヒール
サンダー
レベルが一気に3も上がっている。
ただ、びっくりするべきところはそこじゃない。
――各パラメータが、ありえない伸び方をしていた。
攻撃や防御も今までの最高を更新する上がり幅があるし、今まで4前後しか上がらなかった素早さも7近く上がっている。
MPも倍になり、謎の魔法まで手に入っている。
俺、ただやられただけだぞ……。
ワイバーンとの戦闘で大分経験値が溜まってはいたんだろうけど、にしてもここまで一気にレベルが上がるとなると……あの男が、とんでもない強さだったってことだよな。
「よかっだ、よかっだでずチェンバーさん! わだし魔法かけても、チェンバーさん目ぇ覚まさなくてっ!」
「めええっ!」
ぐりぐりと頭を擦りつけてくるアイルを抱きしめて落ち着かせながら、同じくすり寄ってくるメイの頭を撫でてやる。
心配かけてごめんなというと、アイル達は一層頭をぐりぐりさせてきた。
二人が落ち着くまでゆっくりと待つことにした。
幸いあの謎の男の圧力に怯えてか、周囲からは一切の魔物の気配がない。
それにあれだけ致命傷を受けたっていうのに、びっくりするくらい身体の調子もいい。
だから心配かけた二人を労うくらいの余裕はあるんだ。
(にしても……)
スッと胸を撫でる。
そこには俺が着ていた革鎧は既にない。
どうやら抜き手が鎧を貫通し、胸部装甲はどこかに吹き飛んじまったらしい。
手に返ってくる感触は、つるつるとした地肌。
つい先ほどまで内側からドバドバ血が溢れ出してたとは到底思えない。
(危険だから実際にやってみたことはなかったけど……どうやらレベルアップができれば、致命傷でもなんとかなるらしいな)
レベルアップの回復効果は、どうやら俺が思っていたよりずっと高いらしい。
遭遇して一瞬でやられたのはダサいし不運だったのは間違いないけれど……レベルが一気に上がったりと、得たものも大きい。
レベルアップのための経験値は、戦闘が終了した段階で加算される。
今回はあの男がアイルやメイを手にかけることなくこの場所から姿を消してくれたおかげで、なんとかレベルアップが間に合ってくれた。
でも、あの男が去るのがもう少し遅かったら……多分、というか確実に死んでたよな。
あの傷は、間違いなく致命傷だった。
(まあ、命があるだけ儲けもんだよな。けど次は……絶対に負けねぇ。強くなるぞ、俺は……あの男をぶっ潰せるくらいに)
ジェイン然り、あの男然り。
世の中、上には上がいる。
突きつけられるのは残酷だが、乗り越えられる目標があるっていうのは、キツいのと同時にありがたくもある。
俺も強くなったと思ってたけど……まだまだってことだな。
ワイバーンを倒せたくらいで、調子に乗ってちゃダメだ。
「うしっ、それじゃあとりあえずギルドに行くか! 話さなくちゃいけないことが、沢山ありまくりだしな」
「――はいっ!」
「めえっ!」
俺達はブルドの街へ戻ることにした。
道中ハプニングはあったが……これにて一件落着、だな。
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