遭遇
「しゃおらっ!」
トールが魔物の胸を打ち据えた。
魔物は苦悶の表情を浮かべながら、断末魔を上げる。
こちらを小動物のような顔をして見上げてくる魔物に――俺は容赦なくトールを振り下ろした。
バヅンッ!
雷撃を最大限まで纏っていたトールから紫電が打ち出され、インパクトの瞬間に魔物を焼き焦がす。
完全に絶命した魔物を見て、ふぅと小さく息を吐いて立ち上がる。
『レベルアップ! チェンバーのHP、MPが全回復した! チェンバーのレベルが17に上がった! レベルアップ! アイルのHP、MPが全回復した! アイルのレベルが17に上がった! レベルアップ! メイのHP、MPが全回復した! メイのレベルが12に上がった!』
どうやらまたレベルが上がったようだ。
わざわざアイルに魔法を使ってもらう手間が節約できたな。
全身が淡い光に包まれたかと思うと、先ほどまで身体の至る所にあったはずの傷が既に消えている。
「にしても魔物の数が多いな……」
今倒したのは、Bランク魔物であるエレメントアリゲーター。
魔法をしっかりと使いこなすこの魔物を始めとして、アイアンアントの巣にスカイフィッシュの群れ、そしてミスリルゴーレムなど、どれもその脅威度はBランクに届くようなものばかりだ。
生態系も滅茶苦茶で、既にこの山はどこからどんな魔物が飛び出してくるかわからないびっくり箱状態である。
だがおかげでレベルはかなり上がった。
山に来る前よりステータスもかなり向上してくれている。
ステータス
チェンバー レベル17
HP 135/135
MP 4/4
攻撃 76
防御 71
素早さ 41
魔法
ライト
レッサーヒール
ステータス
アイル レベル17
HP 82/82
MP 98/98
攻撃 23
防御 45
素早さ 39
魔法
レッサーヒール
ヒール
マジックバリア
ライトアロー
ライトジャベリン
エンチャントライト
ハイヒール
ステータス
メイ【アングリーシープ(ユニーク個体)】
レベル13
HP 179/179
MP 0/0
攻撃 30
防御 56
素早さ 15
魔法
なし
魔物スキル
物理ダメージ軽減(特大)
これが今の俺たちのレベルになる。
一番デカいのは皆のステータスがしっかりと強くなっているところだが、アイルがハイヒールを覚えたというのも実はかなり大きい。
ヒールで回復するHPは、ざっくり20前後。
そしてハイヒールで回復する量はその倍以上の50前後。
これをヒールの倍の4のMP消費でできるのは戦いの最中に大きな違いになる。
ヒールを飛ばしてから再度精神を集中させ、そしてもう一度ヒールを放ってHPを40前後回復というのが、ハイヒールを一発打てば賄えるようになったからだ。
今のアイルには攻撃魔法やエンチャントライトのような、援護の魔法を放つ余裕ができるようになった。
あ、ちなみにアイルをパーティー強化の対象に指定した場合はMPの消費量が少し減り、魔法の威力が上がることが判明している。
これも地味な強化ポイントだ。
メイも既に立派なタンクに成長してくれている。
今はもう俺より体力があり、防御力も上がっているので、一番身体を張るのはメイの役目だ。
ちなみにメイの場合は、パーティー強化で防御力が上がる。
そしてメイには戦っていくうちに新たな強化方法が見つかった。
恐らくワイバーン戦では、そいつを使うことになるだろう。
あ、ちなみにサブメンバーについてだが、これは簡単に言えば、パーティーメンバーにせずともレベルアップの恩恵を得ることができるようになる力だった。
サブメンバーには経験値は割り振られず、大体パーティーメンバーの三分の一ほどの経験値が自動で獲得できる。
こいつを使うと、以前アイルが言っていたように俺がレベルアップで強化した戦士を大量に生み出すこともできそうだ。
そんなものが必要になるような機会が、来ないといいんだけどな。
「っと、また魔物か」
俺は再度鎚を構え、新たにやってきた魔物へと駆けていく。
この山に登ってからというもの、ほとんど息つく間もない。
魔物を倒してから歩けば、数分もしないうちに別の魔物に見つけられ、襲いかかられて戦闘、というパターンがずっと続いている。
レベルアップとアイルの回復のおかげで傷らしい傷はないとはいえ……さすがに魔法では精神的な疲労は取り除けない。
連戦が続いているせいか、少し大剣が重くなってきたような気がする。
ワイバーンと出会う時に消耗しすぎては本末転倒だ。
ここの魔物の一回ごとの経験値は3000近くあるので、レベルアップがしやすいのはありたがいんだがな。
ざっくりと俺とアイルのレベルアップまでに必要な経験値を計算し、敵を倒していく。
レベルが上がり、そして戦闘経験を急激に積んでいる俺たちにとって、Bランクの魔物と戦うことは、気付けばそこまでの苦ではなくなっていた。
これならワイバーンを相手にしても、しっかり戦えるはずだ。
戦うたびに自信をつけながら、先へと進んでいく。
すると山頂付近に来たところで、周囲から魔物の気配が消えた。
そして……、
「ギャアアアアアアアオッ!!」
真っ黒なワイバーンが、咆哮で俺達を出迎えたのだった――。
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