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パンサーレオ


 山を登っていく。

 ここではポーションの原料になる薬草が採れたりもするらしいので、結構足跡は多い。

 ゴブリンみたいな弱い魔物達も出てくるようで、それを狩りに来た冒険者達が踏みしめた場所がある程度道になっている。

 魔物達の往来も多いからか、結構な数の獣道もあった。


 そしてようやく魔物を発見する。


「ガルルルルルルッッ!」


 現れたのはワータイガー、Cランクの魔物だ。

 来る前に目を通していた、この山岳地帯で出てくる魔物一覧表の中にはいなかった種族である。


「どうしてここにワータイガーがっ!?」


「細かいことはあとだ! 行くぞ、メイッ!」


「めえっ!」


 パンサーレオは獅子の魔物だ。

 立派なたてがみを持っていて、その全身は驚くほどに白い。

 たしか火魔法を使えるから、口を開いたら要注意と書かれていたはず。


 まずはメイが先行して駆けていく。

 俺はその少し後を、余裕をもってついていった。

 パンサーレオは少し悩んでからすぐにメイの方に駆けていく。


「めえっ!」


「ガルルルッ!」


 両者がぶつかり合う。

 二匹とも、思い切り頭突きを放った。

 その結果は――。


「ガルッ!?」


「めえっ!」


 メイの勝利だ。

 メイには物理ダメージ軽減(特大)があるために、相手の攻撃によるダメージを減らすことができる。

 どうやらスキルである程度衝撃も散らせるらしく、ぶつかり稽古をしたらメイに勝るやつはなかなかいない。


 敏捷は高くないのでそこまでの速度は出ていなかったが、それでも全力疾走をして放った頭突きだ。

 パンサーレオには衝撃がしっかり通ったらしく、明らかに視線がふらふらとさまよっていた。


 メイが打ち勝つと思ってその後ろにつき続けていた俺は、そのまま前に出てトールを振るう。

 もちろん狙うは頭部。


 無防備なパンサーレオは大剣の振り下ろしをモロに食らう。

 グシャッという頭蓋の中の脳が潰れる音がして、パンサーレオはそのまま地面に倒れ込んだ。


「めえめえっ!」


「よしっ!」


 メイの角と俺の手で軽くハイタッチ。


「めえっ!?」


 トールを振ったせいで少し雷を纏っていたので、感電したメイが目を白黒させる。


「ぷっ……ごめんごめん」


「めえめえっ!」


 どうやら不満げな様子。

 仕方がないから次のご飯は、俺たちと同じものを食べさせることにしよう。


 けど今のメイとなら、Cランクの魔物でもわりと余裕で狩れそうだ。

 これにアイルの支援も入れれば……ワイバーン相手でもなんとかなったりしてな。


 討伐証明部位である牙と魔石だけを袋にしまい、先へ進むことにした。





「うーん、ここまで来るとさすがにおかしいとわかるぞ……」


「出てくる魔物出てくる魔物、ここらへんに生息していない魔物ばかりですもんね」


 討伐自体は上手くいっている。

 順調に進めてもいる。


 けれど違和感は、どんどんと大きくなっていく。


 この山脈地帯に住むとされている魔物がまったく出てこない。

 本来この山はゴブリンやオーク、強くてもオーガくらいまでしか出てこない、比較的初心者向けの探索エリアだったはずだ。


 けれど俺たちの前に立ちはだかるのはどれもこれも、ここらで出没情報がないような魔物ばかり。


 溶岩を噴き出すラーヴァストーン、全身が鉄でできているアイアンゴーレム、空を飛びながら狡猾にこちらを狙うガルーダ……どれもこれもCランクでも強さを上から数えた方がいい魔物ばかりだ。


「おいおい、次はキマイラかよ……冗談キツいぜ」


 そろそろ中腹に差し掛かろうというところで俺たちの目の前にやってきたのは、キマイラという魔物だった。


 当たり前のように、こいつもブルドの街近辺では出てくることのない魔物だ。

 出ればこいつ一匹で討伐隊が組まれたり、優秀な冒険者パーティーが招聘されるような魔物だ。


 ワイバーンには劣るとはいえ、今の俺たちでも挑んだことのないBランク。

 同じランク帯の中では、大体中位に位置している魔物だ。


 けれどこいつに躓いているようじゃ、ワイバーンとは戦えない。

 ちょうどCランクとの戦いじゃあ、物足りなくなっていたところだ。

 ワイバーンの前哨戦と洒落込むとするか。


「全力で行く――しっかりついてこいよ、メイッ!」


「――めえっ!」

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