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 俺達はブルドの街から見て南西方面にある、高山地帯へと向かっていた。

 背負っているリュックには保存食がぎっしりと詰まっている。

 万が一遭難したとしても引き返す余裕があるくらいには用意してきたぞ。


 え、メイの食料はどうするのかって?

 メイには基本雑食なので、その辺の草を食んでもらう。


「めぇ……」


 ブルドの街で餌付けをされてきたせいで舌が肥え始めているが、さすがに魔物が必要な食料をがっつり運ぶとなると積載容量が心許なさ過ぎる。

 しばらくの間は粗食で我慢してくれ。


 道中も魔物を狩っていると、俺、アイル、メイ全員のレベルが上がった。

 あのゴブリンパーティーで感覚が麻痺してきているのかもしれないが、レベルが一つ上がるのにもずいぶん時間がかかるな……三分割だと更に。

 これで今の俺達のステータスは、こんな感じになった。


ステータス


チェンバー レベル14


HP 116/116

MP 3/3

攻撃 60

防御 55

素早さ 32


魔法

ライト

レッサーヒール


ステータス


アイル レベル14


HP 65/65

MP 78/78

攻撃 18

防御 37

素早さ 30


魔法

レッサーヒール

ヒール

マジックバリア

ライトアロー

ライトジャベリン

エンチャントライト



ステータス


メイ【アングリーシープ(ユニーク個体)】


レベル4


HP 121/121

MP 0/0

攻撃 17

防御 28

素早さ 6


魔法

なし


魔物スキル

物理ダメージ軽減(特大)



 全体的に強くなっただけで、新たな力なんかは特にない。

 今ふと思ったんだが、アイルはレベルが3上がるごとに新技を覚えるのは、もしかすると彼女の才能なのではなかろうか。


 俺はパーティー編成を覚えてからというもの、新たに何かを覚える気配はない。

 メイは何か新たな力が手に入ったりするんだろうか。

 もしメイがどんどん強くなるようなら、四つ目の最後のパーティーメンバーにも魔物を入れるという選択肢が現実的になってくる。


「にしても、魔物の数が少ないですねぇ」


「ワイバーンが狩りすぎたから、じゃないのか?」


「普通に考えたら、そうなんでしょうけど……」


 道行く先に遭遇する魔物の数は、進むにつれて減ってきている。

 ワイバーンが食い散らかしたのがその原因だろう。


 ワイバーンが住んでいる峰は、好き放題暴れられたせいではげ山になっているって話だし。


 魔物を好き放題に食いまくった結果生態系が壊れ、魔物の数がガクッと減り、結果として餌がなくなったワイバーンが人を餌にするために人里まで降りてきた……って考えるのが普通だけど。


 どうやらアイルはなんだか違和感を感じているらしい。


「めぇ……」


 そしてメイはまともな食事にありつけないことに、絶望を感じているらしい。

 その鳴き声があまりに悲壮感に溢れすぎていたので、俺は持っていたジャーキーを一枚あげることにした。


「まぐまぐ……めえっ!」


「よし、元気が戻ったな。……にしてもアイル、そんなに変に思う理由でもあるのか?」


「魔物の数が、ワイバーンが狩ったにしても少なすぎると思うんです」


 言われてみればたしかにそうかもしれない。

 自分が腹を満たせるくらいにデカい魔物を狩るのはわかるが、ちっちゃい魔物までここまでいなくなるのは変だよな。


 食物連鎖が崩れて……的なことになるなら、どこかで爆発的に増えている魔物がいてもおかしくないはずなんだが、どうにもそういう感じでもなさそうだ。


 俺達は不思議に思いながらも、ワイバーンが棲んでいるという山脈まで辿り着いた。

 上を見上げても先が見えない。


 繁っている木々のはるか先に、ワイバーンがいるんだろうか。

 そんな風になんとはなしに空を見上げていた時のことである。


「ギャアアアアアアアオッ!!」


 遠くから、鳴き声が聞こえた。

 獰猛そうで、金属を擦れ合わせたような耳障りの悪いの悪い音だ。


 でもおかげで、ワイバーンがいる山はすぐにわかった。

 ここを上っていれば辿り着くことはできるはずだ。

 だが今の俺達に、ワイバーン狩りはまだ早い。

 帰ろうかと提案しようとすると、ブルブルと震えているメイの姿が目に入った。


「めえ……めえめぇっ!」


 メイは必死になって何かを伝えようとしている。

 時間をかけて読み取ってみたところ、こいつの言おうとしていることがわかった。


『ワイバーンが悲しそうに鳴いていた』


 メイはそう言っている。

 俺にはその言葉の意味はわからなかった。


 そもそもワイバーンの鳴き声を初めて聞いた俺に、そんな判別がつくわけもない。

 メイはどうしてそれがわかったんだろうか。魔物なりに通じるところがあるってことなのかな。


「ワイバーンってそもそも、悲しんだりするのか?」


「一応龍ですし、普通にものを考えるくらいの頭はあるでしょうから、そうおかしなことでもないんじゃないでしょうか」


「じゃあ気にしなくちゃいけないのは、その理由だな。ワイバーンが悲しむ理由って、いったいどこにあるんだろうか」


 一番ヤバいのは、ワイバーンでもどうにもできないような強力な魔物が棲み着いてしまっている場合。

 ワイバーンでさえ倒せるかどうかは微妙だっていうのに、そんな魔物が現れたとなるとさすがにヤバい。


 ブルドの街のためにも……もう少し深入りすべき、か。


 既にワイバーンだけでどうにもならなくなっているブルドの街にこれ以上何かあったら、街そのものの存在が危うくなってしまう。


 それに……俺は強くならなくちゃいけない。

 もしこの先に何かがあるって言うのなら、俺は行かなくちゃいけないだろう。


 危険を前にブルってちゃあ、ジェインに追いつくことなんか到底出来やしないからな。


 こうして俺達は、ワイバーンが棲み着いている山を上っていくことを決める。

 まさかこの時の俺達は、これから先に激戦が続くなどとは、思ってもいなかった――。

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