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そろそろ


 メイとの訓練を終えて、俺達はブルドの街へと戻る。

 ブルドの街は、しっかりとした石造りの城壁に囲まれている。

 防衛上重要そうなところは、鉄板で補強されている気合いの入れようだ。

 恐らくは魔物の侵攻を想定しているんだと思う。


「よぉメイ、今日はどうだった?」


「めぇ~」


「おお、そうかそうか」


 門番のおっちゃんはうんうんと頷きながら、メイにきゅうりを上げる。

 絶対メイが何を言ってるかはわかってないと思うが、もう一人のおっちゃんの方もそうだよななどと言っている。


 メイはわりと雑食なので、出された野菜スティックをぽりぽりと囓り始めた。

 嬉しそうにめぇめぇいいながら頬張っている。


 育ってきた環境が過酷だったからか、メイはわりとどんなものでも美味しそうに食べる。

 そのせいか衛兵のおっちゃん達は、結構な頻度でメイを餌付けするようになっていた。

 最近では渡すための餌を持ってきていることも多い。


 餌付けされすぎではとか、こいつは既に野性を失っているなと思うこともあるが、餌代が浮くのは正直助かるから放置である。


 なので基本、メイには餌を頬張らせることにしている。

 ほれほれ、好きなだけ食べてどんどん野性を忘れるといい。




 おっちゃん達の歓迎を受けたら、次は立ち並んでいる店からの歓迎だ。


 メイは最近、ブルドの街で人気者になりつつある。


 通常、テイマーが引き連れている魔物は強そうな見た目のものが多い。

 シュッとした猛禽類とか、ワイルドな狼みたいな。


 その中でメイの見た目は、なんというかその……ファンシーで浮いている。

 めぇめぇ鳴きながら目を細めてのほほんとしているメイは、マスコット的なかわいさから徐々に人気を獲得しつつあるのだ。


 その食事風景の時に見せるあどけなさも相まって、今ブルドの街の人達の中では熱狂的なメイ信者が生まれ始めているほどである。


「ほらメイちゃん、これ食べな!」


「メイ、不揃いのきゅうりが余ってるぞ、食べていきな」


 肉屋のおばさんが血の滴る肉をメイに渡すと、バクバクと食べ出した。

 口の周りが真っ赤になったグロテスクな様子のまま、メイはきゅうりも美味しそうに食べ始める。

 きゅうりはさっきも食ったと思うが、特に飽きた様子もない。


「ほらメイちゃん、口をむーってしてください」


 獣を噛み殺してきました、みたいなワイルドな口周りになっていたので、アイルがすかさずにふきふきし始める。

 もう何度もやっているので、アイルの方もずいぶんと手慣れたものだ。


 出店ゾーンを過ぎても、メイの無双タイムは終わらない。

 次にメイを待ち構えているのは――。


「わあっ、メイだ!」


「メイちゃんだ!」


 広場で走り回って遊んでいたガキンチョ達である。


「わあっ、もこもこっ!」


「ええい、ひっぱれひっぱれっ!」


「めええええぇぇっっ!?」


 女の子にお尻からダイブされたり、もこもこの羊毛をあっちこっちに引っ張られたりと、メイは子供達にもみくちゃにされる。


 びっくりして目を見開いたりはしているが、メイの物理耐性はかなり高い。

 子供達に何をされてもめぇめぇ鳴くだけで、実際にダメージを受けてはいなかった。


 メイはそこまで気性も荒くないので、何かをされても怒ったりやり返したりもしない。

 基本的にはされるがままだ。


 子供達もメイが抵抗せずに好きにさせてくれるとわかっているから、躊躇なく飛びかかることができるんだろう。

 つまりああやって体毛をあっちこっちに引っ張られているのも、子供達なりの信頼の証なのだ……多分だけど。



 子供達の洗礼を受けてから更に歩くと、ようやく宿へと辿り着く。

 最初は一人で宿を取っていたアイルも、メイの面倒を見なければいけないと思ったからか、今では『赤とんぼ』に暮らしている。


 メイのレベルも今日3になった。

 今では度胸もついてきたし、HPもレベル3にして13まで上がっている俺を抜いている。

 色々と検証をした結果、メイの物理ダメージ軽減(特大)はHPダメージを半分以上の割合でカットできるようなので、こいつの防御力は既に俺を超えていると言っていい。


 最近では度胸もついてきたし、そろそろ狩り場を変えた方がいいだろうな。


 ダメージ量で考えても、もっと強い魔物と戦っても問題はない。

 今のままだと経験値効率も悪いしさ。


 俺とメイのツートップで挑んでそれをアイルが援護すれば、もっと強い魔物だって狩れるようになるはずだ。

 今は強いのでもD止まりだったから、そろそろCランクの中でも強いような魔物と戦った方がいい。


 ワイバーンが棲んでいると考えられるのは、ブルドから少し離れた場所にある高山地帯。

 Cランクの魔物がゴロゴロいる、周辺では一番危険な場所だ。


 そろそろワイバーンの討伐を視野に入れなくちゃいけないだろうし……一度行った方がいいだろうな。

 人攫いの被害が本格的になって騎士団に倒されたりしたら、挑めなくなっちゃうしな。

 よし、それなら――明日早速、挑戦してみるか。


「喜べメイ、明日からはもっと強くて戦いごたえのある魔物との戦いが待ってるぞ」


「めええぇっっ!?」

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