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赤とんぼ


 メイを育てる云々の前に、俺達はギルドに依頼報告をしに行かなくちゃならない。

 アングリーシープの群れを探すまでに結構手間取っちゃったし、メイは思ったよりも飯を食うことが判明したので、帰りはかなり急ぎになった。


 メイのやつは、一応その辺に生えてる雑草とかも食べられるけど、食べてる時の表情から察するに全然美味しくないらしい。

 俺達と同じものを食べてると嬉しそうなので、しかたなしに帰りの俺達の食料事情はカツカツになってしまっていた。


「……というわけです」


「なるほど……」


 ギルドで一通りの報告を終える。

 受付嬢産は、相変わらず少し風が吹けば下着が見えてしまいそうなギリギリミニスカートを履いていた。

 受付カウンターからだとそのミニスカを見れないのが少し残念……なんて思ってるわけないじゃないですかアイルさん!

 だからそんな風に訝しげな顔をするのやめてくださいな!


「この魔物について俺は聞いたことなかったんですけど、新種の魔物だったりするんですかね?」


 新種の魔物だとしたらありがたい。

 冒険者ギルドにとって必要不可欠なのは、魔物の情報。

 今まで出たことのない魔物を発見したとなれば、依頼とは別に特別報酬が発生したりすることもあるという。


「いえ、この魔物はアングリーシープと言いまして、ブルド近辺の街で発見されるのは初めてですが、魔物としてはそれほど珍しい部類のものではありません。私が前に担当してたところでは、しょっちゅう見かけましたし」


 残念ながら、アングリーシープはわりとポピュラーな魔物に分類されるらしい。

 ブルドのような低地には生息しないが、山嶺とか高原地帯とかに行くとぽこぽこといるんだと。

 まあそう美味くはいかないか。


「ちなみに魔物をテイムできたんですけど、これってそのまま街中に連れてきていいんですかね?」


「あ……なるほどです。えっとそういう場合はですね……」


 通常冒険者は自分が得意なことを書き自己アピールを行い、クライアントから仕事の受注を通りやすくすることが多い。

 俺が特技や技能欄に何も記載をしていないことを、彼女はテイマー系のスキルをもらったからだと錯覚してくれたらしい。


 ……これ、地味にありがたいな。

 これで今日から俺は、「もらったスキルは『テイム』です!(大嘘)」と言えるようになったわけだ。

 基本的にスキルに関する話題はあまり表立っては言わないのが基本的なルールではあるんだが、魔物討伐という大分直接的な戦闘能力が必要とされる冒険者界隈ではそういうのを事前に申告しておくことが必要な場合も結構あるらしいし。


 テイムされた魔物であることを示すためには、腕なり足なり見える位置に従魔リングと呼ばれるリングをつける必要がある。

 サイズ的に後ろ足にぴったりきたので、アンクレットみたいな感じになった。

 外に待機させていたメイに着けてやってから、ブルドの街に入って人心地つく。


 とりあえずゆっくりしたかったが、メイをどこかにほっぽっておくわけにはいかない。

 まずはこいつを入れてくれる宿屋から探さなくちゃいけないな。





 これは予想していなかったが、メイにオッケーを出してくれる宿屋が思ったよりずっと少なかった。

 理由を聞いてみると、


「魔物なんか厩舎に入れられるかい!」


 と言われた。

 馬が臆病な動物っていうのはまあ有名な話だよな。嗅いだことのない匂いを嗅がされただけで止まったりするって話をどこかで聞いたことがある。

 どうやら馬は、魔物にも非常に敏感らしい。

 それこそバリバリ戦う、騎士が乗っているような馬でもない限り、魔物に慣れてないせいでストレスがかかるんだって。


 だからメイを入れられるのは厩舎なんだけど、そもそも厩舎に馬が居たらNGという謎な状況に陥ってしまった。


 そして俺は街中を探し歩いた結果、一つの宿に落ち着いた。

 その宿の名は『赤とんぼ』。


 酒場みたいな名前をしているこの宿、驚くほどに人気がなかった。

 ブルドの中心部から大分離れた、武器屋や防具屋の立ち並ぶあたりを更に進んだところにある大分郊外寄りのところにある宿だ。

 アクセスが極めて悪く、おまけに店主に商売っ気がないせいで人がまったくいないのである。

 俺からすると大助かりだ。


 宿泊価格もそこまで安くはなかったが、他に泊まれるような厩舎がしっかりと仕切られている高級宿屋と比べれば半分以下だったので即決した。


 そして次の日、普通に宿を取ってケロッとした顔をしているアイルと合流。


「あ痛ぁっ! い、痛いですよチェンバーさん!?」


 飼うとか言いながら世話は俺任せなアイルの頭を、とりあえずぽこっと叩いて街を出る。

 とりあえずは特定の依頼は受けずに、東西南北全部に足を伸ばして色んな魔物を狩っていく。

 そして魔物ごとの経験値とざっくりとした実入りを確認していくつもりだ。

 依頼に縛られて討伐数や機嫌に拘束されるより、効率いいレベルアップの方が大切だ。

 多少安く買い叩かれて実入りが少なくとも、とにかくレベルを上げれば最後にはなんとかなる。


 ワイバーンを倒せれば、普通におつりが来るだろうしな。

 慌てずにレベルアップをしていこう。

 まずは……東の草原にいるらしい、ワイルドディアーでも狩りに行くとしようか。

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