ギルドへ
「おぉ……広いな、ブルドの街は」
「領土のサイズ的には王都よりも大きいらしいですけど、それほどごみごみしてないのがいいですね」
明けて次の日、俺達は無事ブルドの街へやってくることができた。
門番の人間は俺達の差し出したギルドカードを水晶に翳す。
そこにあるカードは銀色、つまりは俺達がCランクの冒険者であることを示している。
彼らが使っているあの水晶は、それが本物かどうかをたしかめるための魔道具だ。
あのままゴブリンキングを倒すことができれば俺達の昇級も目じゃなかったんだが、残念ながらゴブリンの群れを殲滅したのはジェイン達『暁』だ。
なので俺達のランクは結局Cのまま。
何か実績を作って、Bランクを狙いにいきたいところだよな。
ブルドの街の傾向を考えても……などと考えているうちに、チェックが済んだようだ。
並びから解放された俺達を出迎えるのは、小綺麗に整った街並みだった。
基本的には石造りの家が多い。
通りすがりの人達の格好は、比較的裕福そうだ。
ボロボロの麻布を着て頬がこけていて……みたいな者達の姿は見えない。
「ええっとたしか……ブルドの街は二つに分かれてるんだよな」
「はい。主に貴族方が使っている東側のエリアと、それ以外の者達が使う西側のエリアの二つに分かれていますね。装備や魔道具なんかも、基本的に西側の方が揃っているみたいです」
この街は東側のいわゆる貴族街と西側の平民街の二つに分かれていて、両者の間には壁がそびえ立つ作りになっている。
勝手に壁を乗り越えたりした場合は厳しい罰則が科されるらしい。
そのため俺達は基本的には西側で生活をしていくことになる。
けれどこんな造りをしていれば当然の結果ではあるんだけど、この街の富は東側に集まっている。
そのため腕のいい職人が、金払いの良い東側へ行ってしまっているらしいのだ。
俺達にとっては死活問題である装備を整える武器防具屋も、東の方が品揃えが上らしい。
「とりあえずまずはギルドに行くか。実際に見てみないと分からないことも多いだろうしな」
「ですね、ちなみに事前に聞いてますよ。あっちの方です」
「おお、さすがアイル。基本的にはしっかりしてるな」
「それ、どういう意味ですか!?」
俺らが知っているのはあくまで他の街で得た又聞きの情報だ。
歩いていたりその辺の人の話に聞き耳を立てているうちに、見えてくるものもあるだろ。
「ようこそ、冒険者ギルドブルド支部へ!」
ギルドに入った俺達を出迎えてくれたのは、かなりギャルっぽい見た目をした女の人だった。
ギルド職員が身につける制服も、俺が活動していたどの場所よりもぴっちりと身体のラインが浮き出るようになっている。
そしてとりあえず目に付く職人の人が、全部女性だ。
彼女達……スカートもめちゃくちゃに短い。
あんな短さだと、階段を一段上っただけで下から下着が見えてしまいそうだ。
なんだかランブルと随分と雰囲気が違う。
都会っぽいというか、なんというか。
俺達の父親世代が見たら、最近の若者はけしからんとか言い出しそうだ。
「チェンバーさん達はCランク冒険者なんですね。今のブルドはそれほど強い冒険者さん達を滾らせるようなものがないので、実力者はいつも不足してるんですよ。やってきてくれて本当に助かります」
たださすがは彼女達もプロ。
チャラチャラしているのは見た目だけで、その対応は完全に仕事のできるギルド職員のそれだった。
冒険者はランクごとに得られる情報を始めとした、ギルドから受けることのできる恩恵が変わってくる。
とりあえずCランクの俺達なら、今欲している情報については聞いても問題ないはずだ。
そして予想通り、受付のシャルさんは今の俺達にとって何より必要な、強力なモンスターの情報を持っていた。
「ああ、そういうことですか。情報が早くて助かります。その通りです――今ブルドの街は二つの脅威に襲われておりまして。一つ目が、人さらいに味をしめたワイバーンによる襲撃。そして二つ目が、北側で起こっている商隊の失踪事件ですね」
俺が事前に知りたいと思っていたのは、ワイバーン騒ぎだけだ。
だがどうやら今のブルドの街には、それ以外の脅威もあるらしい。
いきなりワイバーンに挑むのは無謀だとは思ってたんだ。
肩慣らしがてら、その二つ目の方から挑んでみることにしようか――。
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