新たな街へ
「カアーーーッ、カアーーーッ」
空を見上げれば、そこには夕暮れを告げてくれるカラスの姿がある。
カアカアと鳴いている彼らを見ていると、少しだけ気持ちが落ち着いてくる。
高度が高すぎてこのままだと首を痛めてしまいそうだったので、首をゆっくりと元に戻していく。
目に映るのは、夕暮れに染められている街道だ。
そろそろ視界も悪くなってくる。
今日はそろそろ野営の準備を始めた方がいいだろう。
「アイル、テントは俺が作るから適当に飯出しといてくれ」
「はい」
俺はテントを設営しながら、ここに至るまでの激動の日々を思い出す。
俺の名前はチェンバー。
『暁』というパーティーではタンクの役目を引き受け、前衛をやらせてもらっていた。
今はトールという魔剣をもらい、大剣使いに転身している(ちなみにあのあと、ギルマスから正式に譲渡されたので、トールは正真正銘俺の武器ということになった。俺のゴブリン討伐の一番の報酬は間違いなくこいつだ)。
少し前までの俺は気が置けない親友であるジェインとずっと一緒にやっていくつもりだったんだが……俺達のパーティーの仲は、スキルを授かるための儀式――通称『天授の儀』によってバラバラになってしまった。
俺が授かったのは外れスキルである『レベルアップ』。
正体も効果もわからない謎スキルと一緒になんとかソロで飯を食っていかなくちゃ……と考えていたところ、このスキルが実は相当に使えるもんだとわかった。
そんでまあ、俺と同じくパーティーを追放されたアイルを拾ってまた新たなパーティーを組むことになったり、二人でゴブリンを狩りまくっているうちにどうやらゴブリンキングがいるらしいということがわかったり。
目星をつけたやつをなんとか倒せたと思ったら、実は本物のゴブリンキングは別にいて、そいつを颯爽と現れたジェインが瞬殺したりと……結構色々あった。
無事再会を祝い合った俺達は、お互いの目的のために再び分かれてそれぞれの道を行く。
今の目的は、遠く離れてしまったジェインの背中に追いつくこと。
だから俺は一緒についていくと言ってくれたアイルと共に、ランブルの街を後にすることにした。
より強力な魔物と戦い、レベルアップをしてどんどんと強くなるため、ランブルよりも強い魔物が出る地域へと向かっている最中なのである。
ちなみに二人の今のステータスは、こんな感じだ。
ステータス
チェンバー レベル13
HP 111/111
MP 2/2
攻撃 56
防御 51
素早さ 30
魔法
ライト
レッサーヒール
ステータス
アイル レベル13
HP 60/60
MP 72/72
攻撃 16
防御 36
素早さ 28
魔法
レッサーヒール
ヒール
マジックバリア
ライトアロー
ライトジャベリン
エンチャントライト
レベル上げを頑張って、速くジェイン達に追いつかないとな。
現在の俺達は道中いくつかの街を通りながら、最終目的地であるブルドという街へと着実に距離を縮めることができている。
おそらく明日には街が見えてくるはずだ。
「できましたよ~」
「ああ、こっちも準備できたぞ」
どうやら今回のご飯は奮発したらしい。
干し肉やスープに浸して柔らかくしたパンなんかを惜しげも無く使っている。
「そろそろブルドに着くって話ですからね、保存食は使わないともったいないですから」
「なるほど、そういうことなら遠慮無く食うぜ!」
「ふふっ、どうぞどうぞ」
保存食もいくら保存が利くとは言っても、もちろん限界がある。
干し肉は水分を飛ばしてるけど、雨の日はしけるし。
硬く焼きしめられたパンだって、ジメジメした気候が続けば割と簡単にカビたりする。
本当にひもじかった頃は、カビてる部分を削って食べたりもしてたなぁ……。
もう一度やりたいとは思わないけど、あれはあれで良い経験だったと今なら思うぜ。
「ごちそうさま」
「はい、お粗末様でした」
アイルは教会で色々と仕込まれてきたからか、普通に料理もこなせる。
俺は今まで男の料理しかしてこなかったから、これは本当にありがたい。
こうやって気を抜けるところでは抜いとかないと。
いざって時に動けなくなってもつまらないしさ。
「でもあの森にいた期間が長いせいか、こうして普通に食事ができるのがやっぱり違和感ですね」
「まあたしかに気持ちはわかる」
俺達が野営をしているのは、大体馬車2つ分くらいの横幅のある石造りの道の上だ。
若干暗くなってきたからわかるが、よく見ると石の道がうっすらと光っている。
細かいことは知らないんだが、街道には魔物避けの効果のある特殊な石が使われているからってことらしい。
もちろん全部の魔物に効き目があるものではないんだが、それでも八割九割くらいの魔物はこの道に近寄ろうともしない。
ここで野営をしてれば魔物の危険は大きく減るし、道中魔物に襲われることもかなり少ない。
どちらかというと、魔物よりも盗賊を始めとする人の方が危険度が高いくらいなのだから、道中の安全度はかなり高い。
この道はなんでも古代に栄えていた帝国が作った魔道具という話だ。
おまけにこの道はかつての帝国の領土に張り巡らされており、もろもろの都合から壊されたもの以外は、今も現役で稼働しているものばかりだ。
滅んでからもう何百年も経ってる国の物を使い続けることができて、多少の劣化しかない。
こんなにすごい技術を持っているかつての大国は、いったいどうして滅んでしまったんだろうか。
世の中っていうのはわからないことだらけだ。
「とりあえず、寝るか」
「はい、本番は明日以降ですからね。まずはチェンバーさんがどうぞ」
お言葉に甘えて、寝させてもらうことにした。
パーティーが二人だと、二交代制なのが少しきついところだ。
新しい街で、信頼できる仲間の一人でも見つかればいいんだけどな。
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