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寒気


 ピッと頬に赤い線が走る。


 最初は一本だったそれが二本になり、すぐに3本になり、赤く細かった線は繋がってぽたりと血の雫を地面に落とす。


「ガアアアッ!」


 己の内に秘めた破壊衝動を思い切り出しているような雄叫びにもかかわらず、その剣筋はあくまでも冷静そのものだった。

 身体が大きくなり、その獣性が薄まってしまったかのようだ。

 その太刀筋は、今までよりもずっと正確で真っ直ぐだ。

 もしかするとこれが、あいつの本気なのかもしれない。


 どこかに活路はないか。

 それを探しながら、防御を続ける。

 防具を貫通し、腕に創傷ができた。


 けれど痛みはほとんどない。

 あるいはやってきているのかもしれないが、戦闘の昂ぶりからかまったく感じない。


 続く防御。

 トールを盾のように使うやり方は、ある程度の効果があった。


 向こうの得物も、恐らく純粋な鋼鉄製ではない。

 それより硬い属性鋼の鍛造剣だろう。


 だがそれでも、武器としての格はトールの方が圧倒的に上だ。

 恐らくミスリルと何かを合わせた合金で作られているこの武器は、剣と打ち合う度にその刀身に刃こぼれを生じさせることに成功していた。


 向こうもこれ以上刃が欠けることを嫌うせいか、斬り付けを主体とするスタイルを止め、基本的には突き、そして隙を見ての斬撃という形へ切り替えている。


 狙うべきはこの二つの転換点、つなぎ目。


 ビッと俺の目の真横に剣が通り過ぎる。

 先ほどまでより一段多い血液が、パッと花が咲くように飛び出した。


 自分の攻撃がヒットしたことを察知したゴブリンが、痛打を与えるべく今までの小ぶりの突きをやめ、斬撃に転じる。


 俺はその瞬間を見逃さずに、前に出た。


 斬り付けが最も威力の出る、振り下ろして勢いのついた剣が通るはずの空間。

 そこよりも更に一歩前に出ることで、重さや腕力が剣に伝わるよりも速く俺自身が斬撃を食らう。


 鎧が斬り付けられ、切り裂かれる。

 だが内側の肉体までは……裂けなかった!


 HPによる相手の攻撃の減衰に感謝しながら、俺は剣を振り腕が伸びきっているゴブリンの頭部に、思い切りトールを叩きつける。


 ドゴッという鈍い音が鳴り、一瞬の静寂。

 両手持ちで思い切り叩きつけたせいで、腕の先が痺れる。


 ゴブリンの身体がくらっと揺れる。

 頭を左右に揺すっているその症状は、完全に脳しんとうのそれだ。


 今のうちに攻撃を……と思った瞬間、一気に身体が重くなる。

 トールが内側に雷光をため込める限界を迎え、光が消え去ったのだ。


 構うものかと、先ほどまでよりも重たくなった槌を握り締める。


 振り下ろして地面につきそうになっている槌を、接地の寸前でピタリと止める。

 そして足先に力を込めて、それを思い切り上へ跳ね上げる。


 再度ゴブリンの頭部にヒット、これで少しは動きを止められる時間が伸びたはずだ。


「エンチャントライト、ヒール、ライトジャベリン!」


 前方からアイルの援護が飛んでくる。


 ライトアローの連発だけじゃなく、別々の魔法の連続発動まで!?


 ここにきてアイルも覚醒したようだ。


 俺は目の横にあった大きめの傷が塞がっていくのを感じながら、わずかに光を放つトールキンを突き出す。


 三撃目を、ゴブリンへと当てる。

 そして四撃目を――。


 ゾッと、得体の知れない怖気がした。

 俺は攻撃のために溜めていた動作をキャンセルし、そのまま大きく後ろに下がる。


 そしてその後すぐに、俺の第六感が正しかったことが判明する。


「グラアアアアアアッ!!」


 ゴブリンが、更に野太い雄叫びを上げる。

 そしてその目を爛々と光らせながら、荒々しい一撃を繰り出してきたのだ――。


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