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全速前進


 俺達の準備は完全に整った。

 トールに雷光を充填し、エンチャントライトで光属性のオーラを纏わせ、すぐに全力を出す用意も完了している。


 だからあとは、あのゴブリン相手に奇襲ができるだけの隙。

 それさえあれば完璧だった。


「キッ!」


 黒いゴブリンが剣を使い、イノシシを一刀両断した。

 絶命を確認してから、ふっと一つ息をつく。


 ――今だっ!


 どちらが言ったわけでもなく、俺とアイルが同時に駆け出す。

 アイルは途中で止まり、自分の魔法の効果範囲をしっかり理解した上で、魔法発動のタイミングを合わせようと俺へ意識を向ける。


 エンチャントライトとヒールを俺へ使うのに、直接接触する必要はない。

 仲間へ飛ばせるのは、大体中距離まで。

 その位置をしっかりと把握できているからこそ、アイルが自分の位置取りを間違えることはない。


 プリーストであるアイルからすると少し危険な距離ではあるが、彼女もそれだけの覚悟を持って戦いに望んでいるってことだ。


 この戦い――負けるわけにはいかないなっ!



 足を前に出す。

 左足よりも右足はもっと速く。

 それを繰り返していくうちに、あっという間に最高速度へと到達する。


 駆ける。

 背中に羽根が生えたように軽やかに。

 地に根を張っているような力強さで。


 距離が縮まると、ゴブリンがこちらの存在に気付く。


 そしてこちらに向けて剣を構えながら――歯を見せて笑った。

 まるで戦うことが楽しくて楽しくて仕方ないといった表情だ。


 俺達はなんとかしようと必死になってるっていうのに、こいつからすればそんなことは関係ないわけだ。


 トールキンと剣が、互いにぶつかり合う。

 俺の防御を捨てた全力の一撃。

 更に上昇したステータス。


 正真正銘の俺の全てを乗せた一撃は――剣を持つ手を吹き飛ばし、ゴブリンの顔面にぶち当たった。


「ガ、ギッ――!?」


 よろけながらも後退するゴブリンの鼻からは血が流れていた。

 そして鼻は明らかにおかしな方向を向いており、折れているのが俺から見ても明らかだった。


 効いてる――以前とは違い、しっかりと攻撃が通ってるぞ!


 倒せる、これなら――。


「ギ……ギィガアァッ!!」


 ゴブリンの右腕にある刺青が光る。


 そしてそれと同時――その身体が、メリメリと音を立てて巨大化し始めたっ!?


 剣を上段に構えるゴブリンの肉体が大きくなっていく。

 結果として振り下ろしの際の威力もまた、加速度的に上がっていく。


 変身を最後まで待ってやる必要はない。

 俺は未だ変貌中のゴブリンのどてっぱらに一撃を加えてやった。


 今度は口から血を吐いたが、それでもまだあいつは笑みを崩さない。

 自分が負けるとは、つゆほども思ってないって表情だ。


 そして変身が終わる。

 そこには――ゴブリンリーダーを一回り大きくしたような、巨躯の黒鬼が立っていた。


 そして俺のトール同様、あいつの持つ剣からも緑色のオーラが噴き出している。

 多分だけどあれも……邪神の加護だよな。


 見れば既に折れていた鼻は、真っ直ぐに戻っている。

 先ほどまで潰れていたはずの左目も、完全に回復していた。

 あの変身……怪我まで回復させるのか。


 人のことは言えないけど……あっちもまあまあむちゃくちゃしてくるな。


 けど前使ってこなかったってことは、多分なんらかのデメリットがあるか、制限があるんだろう。

 なんの制限もないなら、さっさとあの左目を治していたはずだからな。

 だったらその手札をさっさと切らせることができてよかったと思うべきだ。


 まあ、そんな簡単に勝負が決まると思っちゃいない。

 こっちだって、しっかりと準備万端で挑んでるんだ。

 そう簡単に遅れは取らんさ。



「ッガアアアッ!!」


「そっちが本性ってか!」


 身体が小さかった頃の寡黙さはどこへやら、今のゴブリンは他のやつら同様獰猛な声を上げ、ただ全力で力を振るう。

 俺もそれに合わせるように大剣で一撃。


「ギイッ!?」


 ゴブリンの方が後退する側だ。

 腕をクロスさせて防御姿勢を取りながら、ズザザッと砂埃を巻き上げながら下がっていく。

 どうやら全力を出しても……力比べなら、こっちに分があるみたいだ。


 なら選ぶべきは――全速前進だろっ!



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