前に
トールは強い武器だ。
そりゃAランク冒険者が使っていたんだから当たり前な話である。
俺は今のままだと、明らかに武器に使われている感じになってしまう。
なのでまずはこいつを俺と馴染ませるために、あのゴブリン以外の奴らと戦うことにした。
といっても、基本的には前回遭遇したところ以外に出向くってだけだ。
ゴブリン達を狩っていくスタイルは、特に変えはしない。
とりあえずあのゴブリンと戦うまでに、レベル12を目指そうということになった。
恐らくはそこで、アイルがまた何か新しい魔法を覚えるはずだ。
そこを一つの目標にして頑張っていこうということになったのである。
まず二回ほど試運転をして、トールの使用感に慣れていく。
一言で言えば……こいつは正しく俺が求めてた武器だった。
まず攻撃力が、格段に上がった。
重量があるおかげで振る際にメイスよりもずっと勢いがつくため、しっかりと全力で叩きつけることができる。そして斬るという選択肢が増えたのもなかなかにデカい。
もちろんその分動きは若干遅くはなったが、むしろこれは本来のスタイルを取り戻したと言えると思う。
俺の戦い方は矢面に立ち、傷だらけになりながらも相手に攻撃を加えていくという形を何年も続けてきている。
今はアイルがいるおかげで、当時にかなり近い形で戦うことができている。
今はHPの消費と創傷を気にせずぶちかます形になったから修整はしているが、やっぱりこのスタイルが一番俺に合っていると、改めて再確認できた。
それに使っていくうちにトールの力で速度は上がるようになる。
大体柄を持つ俺の手に光がかかるくらいで、メイスと同じくらいのスピードで動けるようになる。
なるべくそこまで速く持って行けるように、無駄振りをしたり、敢えて大振りをしてゴブリンを倒したり。
このトールを使いこなすために、今までと違う動きを織り交ぜなければならないので、ここは要研鑽だ。
そして俺はこの雷剣のおかげで、遠距離攻撃の手段を得ることができた。
無論一度使うと隙だらけになるので諸刃の剣だが、なかなかに威力は高い。
一度試しに撃ってみたところ、ゴブリンリーダーは食らっただけで絶命した。
あのゴブリンにも、かなりのダメージが通るはずだ。
だがもしそこで仕留め損なうと、疲れ、更に動きも悪くなった俺が逆撃でやられかねない。
放つタイミングは、かなり吟味しなくちゃいけないだろう。
さて、試運転を終えたら次は本格的な戦闘だ。
あのゴブリンを倒せるようになるには、相当に身を入れて戦わなくちゃいけない。
俺達は以前から何度か見ては逃してきたことのある、一際大きなゴブリン達の群れを攻略することを決めた。
そこにいるゴブリン達の数は合わせて百近い、ゴブリンソードマンやゴブリンメイジだけでなく、回復魔法を使うゴブリンプリーストもいる。
そしてゴブリンリーダーの数も四匹はおり、もし別働隊とかがいるとしたらもう一二匹くらいはいてもおかしくない。
今までは見かけても安全マージンを取って戦ってこなかったが……次にあのゴブリンと戦う時も、激戦が予想される。
それに勝つためなら、あれくらいの規模の群れの一つや二つは蹴散らせるようにならなくてはいけないだろう。
(よし、行こう)
(はいっ!)
今回は、アイルもある程度前に出てもらう。
次回あのゴブリンが群れを率いることになった場合、恐らくアイルが周囲のゴブリン達を倒す役目を担うことになる。
俺があのゴブリンと戦えるようになることを目指しているのと同時、アイルも今回一つの目的を設定していた。
それはゴブリンリーダーを単独で討伐すること。
俺達二人は前へ進むため、一歩目の足を踏み出した――。
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