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邪神


 いつものようにシリヌイさんに話をしようとしていた俺達は、報告をしようと二階へと上がっていく。


 するとその場にはシリヌイさんだけではなく、もう一人禿頭の男がいた。

 しかもシリヌイさんがその隣にいて、禿頭の男が真ん中でふんぞり返っている。


 冒険者ギルドの幹部より偉い人物……目の前にいる人物の正体を類推するのは難しいことじゃない。


「初めまして、Cランク冒険者をしているチェンバーです。こちらはパーティーメンバーのアイル」


「どうも、初めまして。アイルと申します」


「おう、俺は冒険者ギルドランブル支店のギルドマスターのディングルだ。まあこのままだといつまでギルマスやってるかはわからんが、よろしく頼むよ」


 ギルドマスターのディングルさんの年齢は、五十前後だろうか。

 タッパもかなりあり、俺もアイルも見上げるような形だ。


「さて、チェンバー。武器も持たず、そんなボロボロの状態で来たんだ。何かあったんだろ? 事情を聞くから、全部話してみろ」


 下を見て自分の姿を確認してみると、たしかに色々とボロボロだった。

 HPとアイルのヒール任せで怪我をいとわずに戦っていたせいで、既に俺が着ている革鎧はボロボロになってしまっている。


 ……そんなことにも気付かないくらい、張り詰めてたってことか。

 まあそりゃあ、自分の力不足を実感した戦いになったからな……。


 シリヌイさんの方を見ると彼も黙って頷いていたので、俺は今回何があったのか、その全てを報告することにした――。




「なるほど……腕に緑の刺青を入れた、黒いゴブリンキング、か……」


 ディングルさんは俺の話を聞くと、難しそうな顔をして黙り込んでいた。


 やっぱり色が違うのは変だよな。

 俺が話しに聞いていたよりも、ずっとタフで頑丈だったし。


 生き物には、たまに先祖返りをしたりするような者もいるという。

 もしかしたらあのゴブリンキングも、そういった類の生き物なんだろうか。


 だがギルドマスターの答えは、俺が想定したものとは大分違った。


「もしかしたらそいつは、邪神の加護を受けているのかもしれねぇな……」


「邪神……ですか?」


 この大陸で幅を利かしている聖教というのは、女神様ネアを唯一神とするゴリゴリの一神教だ。


 俺は別に全然信心深いわけじゃないが、この『レベルアップ』のスキルをくれたネア様には感謝してる。

 気が向いたら、ちょっとくらいならお布施をしてもいいかなぁ……くらいのゆるい信心だけど。


 でも邪神、か……。

 名前くらいは聞いたことあるけど、興味がないからよく知らないな。


 俺の表情を見て察してくれたのか、ディングルさんが教えてくれる。


「邪神っつうのは、まあ簡単に言えばネア以外の神様だ。一応聖教が一神教の宗教だからこの呼び方だが、人類の生存圏の外の奴らからすればこちらが邪神になるぞ」


「ギルドマスターさん、さすがにその言い方はネア様に失礼かと……」


「お前ら、まだ亜人やエルフに会ったことないのか? あいつらが信じてる神様は、ネアとはまったく違う。そのくせ邪神呼びすると、ブチ切れる奴らも多いからな……っと、話がそれたな」


 要はこの世界には沢山の神様がいる。

 人間にスキルを与えてくれるネア様以外にも、それぞれの地域や種族ごとに土着の神様がいるそうだ。


 そして世界というものは広く、魔物に寵愛を与える物好きな神様というやつもいるらしい。 どうやらその邪神様は、自分のお気に入りに力を分け与えるのが好きなんだと。


 そのゴブリンキングはその邪神の寵愛……つまるところ俺達におけるスキルのような能力を持っている、ということらしい。


 それを聞いて俺が思い出したのは、あのゴブリンキングのタフネスと身体の硬さだ。


 自慢ではないが、客観的に見て今の俺はかなり強い。

 ゴブリンリーダーを楽々屠れるくらいの実力にはなっているし、恐らくアイルと組んだ時の力はBランク冒険者パーティーくらいにはなっているはずだ。


 ゴブリンキングが強力な魔物ということは知っている。

 だがあそこまで攻撃が通らないとは思っていなかったし、ずっと疑問に思ってもいたんだが……どうやらあいつは俺らでいうところの『頑健』スキルみたいな力を持ってるってことなんだろうな。

 そう考えれば、戦闘の時の諸々ともつじつまが合う。


「だとしたらあいつは、ただのゴブリンキングじゃないってことになりますね……」


「ああ、もしかしたらこのランブルの街が終わってないのも、そのあたりに理由があるのかもな」


「それは、どういう意味ですか?」


「魔物に寵愛を与える神――邪神アジ=ダカーハはとにかく面白いやつを好む傾向がある。ってことはそのゴブリンキングは、ただ女を犯して生殖に生きるだけの魔物じゃないんだよ……多分だけどな」


 それは例えば求道者のような、ただ強さを求めるような魔物であったり。

 人をただひたすらに憎み、殺戮するような快楽殺人者のようであったり。


 そのパターンは一様とは言えないが、邪神の寵愛を受ける魔物達は、皆強力になるのだという。


「ただ、それだと違和感があるな……もしかしたらその魔物は、ゴブリンキングじゃないかもしれんぞ?」


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