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レベルアップ


『暁』というパーティーは、自慢じゃないが街の中では結構有名だった。


 未だ年若い奴らがCランクにまで上がったという物珍しさと、俺を除いた三人が美男美女だったというのがその理由だったりする。


 アングレイの街で変わらず活動をしていれば、『暁』の噂は絶対に耳に入ってくる。

 それに冒険者ギルドで鉢合わせする可能性だってゼロじゃない。


 俺が抜けた後パーティーがどんな風になっていくのか。

 気にならないといえば嘘になるが……もう彼らと俺の人生は交わらないのだ。


 知っても意味のないことを知ったせいで妙な気を起こすのも嫌だったし、俺はホームを変えることにした。


 新天地で心機一転、ソロ冒険者のチェンバーとしてやっていこう。





「クソッ……やっぱりソロだと、こうなるよなっ!」


 盾でオークの棍棒の一撃を受け、そのまま右手に持つメイスを振る。

 腰のあたりに当たり、オークはそのまま悶絶しながら地面に倒れ込んだ。


 トドメを刺すだけの余裕はない。

 軽く腹にメイスを落としてやってから、すぐに周囲を確認する。


 残るオークはあと三体。


 今までなら、俺が相手を倒す必要はなかった。


 相手を倒してくれる奴らの準備が整うまで、俺が相手の攻撃を食らっていれば良かったからだ。


 俺の基本戦法は、待ち。

 耐えて耐えて注意を引き、その間に仲間に攻撃を入れてもらう。


 けれどソロになった今は違う。

 攻撃も防御も、全部自分一人でやらなくちゃいけない。


 ナルはいないから、回復だってポーション頼みだ。

 バカスカ使っては足が出るから、あまり怪我を負わないような戦いを心がけなくちゃいけない。


 ――パーティーとソロは、こんなにも違うのか。


「うおおおおおおおおっ!」


 俺は気合いを入れ直し、オーク達の下へと吶喊していく――。






「ふうっ、ふうっ……」


 最後のオークが動かなくなるのを確認してから、周囲を見渡す。

 敵影はなく、気配もない。

 これで討伐完了だ。


 オークはいい。

 肉が美味いから、新鮮であれば魔石以外の部位もいくつか買い取ってもらえる。

 持ってけない分は自分でも食えるから、バーベキューもできるしな。


 まあ……一人だと楽しさ半減ではあるんだけど。


 装備の調子を確認する。

 留め具が緩んでいたりもしないし、特に大きな傷もなさそうだ。


 俺の今の防具は、フロストリザードという魔物の革で作った革鎧と、鋼鉄の盾。

 そして武器は、盾と同じく鍛冶屋で作ってもらった鋼鉄のメイスだ。


 Cランク冒険者としては可もなく不可もなくって感じか。


 ただオーク四匹相手に全力を出さなくちゃいけないってなると……俺個人の今の戦闘能力は、よくてもDランク程度だ。


 下手に欲を出さずに、軽いクエストからこなしておいてよかった。


「俺、これからやっていけるのかな……」


 採集を終えて、一人呟く。


 パーティーでの戦い方に染まりきってしまっている俺からすると、ソロでの戦いはむちゃくちゃやりにくい。


 そもそも注意を引くことが主目的の攻撃ばかりをしていたから、相手をしっかりと倒すための攻撃にも慣れていないし。


 ソロでやっていくんなら、耐えるんじゃなくて傷つかないような戦い方をしなくちゃいけない。


 今回だって、既に何個か擦り傷ができている。

 こんなんにポーションを使ってたらキリがないから、我慢しとかなくちゃな。


 けど……こんな戦い方をしていればすぐに傷だらけになる。

 そしてそれを治してくれるナルはもういないのだ。


(……またパーティーを組むか。ジェイン達とまでは行かずとも、Dランク冒険者の奴らなら、食いついてくれるメンバーの一人や二人はいるだろ)


 俺はソロでの活動に、早くも限界を感じていた

 やっぱりタンクにソロは向いて……。



『テレレレッ!』



「……は?」


 踵を返そうとした俺の思考を遮ったのは、聞いたことのない異音だった。

 なんだこの音、いったいどこから――。


『レベルアップ! チェンバーのHP、MPが全回復した! チェンバーのレベルが2に上がった! 攻撃が+3、防御が+2、素早さが+2、HPが+4、MPが+1された!』


「……はあっ!?」


 身体がいきなり光り出す。

 全身が謎の緑色の光に包まれ、戸惑っているうちに……光は一瞬で消えてしまう。


「……なんだったんだ、あれ」


 どこから聞こえてきているかもわからない謎の音声やら光やら、ワケのわからないものの連続で頭が混乱している。


 俺の頭がおかしくなったのかと思い、頬をつねろうとしたタイミングで気付く。


 手のひらの傷が……消えてる。

 そういえばさっきの声……必死になって、どこからか聞こえてきた言葉を思い出す。


「『レベルアップ』は……怪我を回復させるスキルだったのか? ――うおっ、今度はなんだっ!?」


 俺の答えを否定するように、目の前に光の板が現れる。

 そこに書かれていたのは……。




ステータス


チェンバー レベル2


HP53/53

MP1/1

攻撃11

防御15

素早さ6


魔法

なし




「なんだ……これ」



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