ゴブリンキング
複数匹のゴブリンリーダーを相手にするにあたって、今後はアイルも攻撃に晒されることが想定される。
そのためアイルには修道着の下に、チェインメイルを着てもらうことにした。
女が持つにはちと重いぞ、と鍛治師の人はしぶしぶ引き受けていたが、以前と変わりなく普通に走ったりもできるアイルを見て口をあんぐりと開けていた。
箸よりも重いものとかが持てなそうな、いかにも修道女然とした格好をしたアイルが、案外パワー系で驚いたんだと思う。
俺達は最近、最低でも二匹以上はゴブリンリーダーを狩って街へ戻ってきている。
最初は半信半疑というか、若干俺達の実力を疑っていたシリヌイさんも、最近は何も言わずに、にこっと笑うだけになった。
もっとも俺達が持ち帰る魔石の数が一向に減らず、むしろ増え続けている様子を見て、冷や汗を掻いていたけど。
「こ、これだけ大量のゴブリンが森から湧いていたとしたら……ランブルの街は、間違いなく地図から消えていたでしょう」
彼は俺達が帰ってくる度に、ありがとうと労ってくれるようになった。
まあ言ってくれるだけで別に報酬が上乗せされたりするわけじゃないんだが、人から感謝されるのは、その裏に打算があろうとも悪くはないもんだ。
俺達は毎日複数匹のゴブリンリーダーを倒し続けている。
おかげで俺達のレベルは順調に上がっていた。
そうそう、そういえばレベルアップに必要な経験値の数値に変化があったんだ。
今まではレベルを6から7に上げるのに必要な経験値が640、7から8に上げるのに必要な経験値が1280……というように倍々で上がっていた。
けどレベルを8から9に上げる時に必要な経験値は、1500になっていたのだ。
2560とはなっていなかったため、想定より早く二人ともレベルを上げることができた。
そしてその次に必要な経験値は2000で、その次は2500であることがわかった。
どうやら以後は、必要な経験値は500ずつ上昇していくらしい。
まあこれも、いつまで一定の法則性に則っているのかはわからないけれども。
さて、俺達のレベルは8から9、9から10と更に2も上がった。
残念なことに俺は新しい力は覚えなかったが、アイルの方はレベルが9になると新しい魔法を覚えた。
そして俺にも一つ変化が起こったのだ、ふふふ……。
ステータス
チェンバー レベル10
HP 94/94
MP 2/2
攻撃 43
防御 40
素早さ 22
魔法
ライト
レッサーヒール
ステータス
アイル レベル10
HP 49/49
MP 56/56
攻撃 12
防御 26
素早さ 19
魔法
レッサーヒール
ヒール
マジックバリア
ライトアロー
ライトジャベリン
俺のステータスを見ればわかると思うが、俺はなんとレッサーヒールを習得することに成功したのだ!
MPが2に上がったから理論上は使えるよなってことで、アイルから手ほどきを受けた結果だ!
使えるようになるまでは、結構頑張ったんだぞ!
……一度使ったら魔力切れで疲労マックスじゃんとか、そういうことは悲しくなるから言わないでほしい。
今までは無理だった回復魔法の使用が可能になったってことが、何よりも大事なのだ。
少なくとも俺はそう思っている。
そしてアイルの方だが、彼女は以前より大きなマジックバリアを張れるようになり、(小)の文字が消えた。
あ、ちなみにマジックバリアっていうのは紫色の、魔力によって形作られた障壁のことだ。
ある程度の攻撃であればガードすることができて、高い威力の攻撃であってもこいつを間に挟んでおけばいくらかダメージを軽減することができる。
より戦闘が楽になるようになったのは、アイルがこのマジックバリアを常に張るように戦法を切り替えてからだ。
マジックバリアとHPでダメージを分散させ、HPと自身の身体に問題が起こればヒールで治す。
魔力消費量こそ多いが、今のアイルには当初とは比べものにならないほど大量の魔力がある。
自然回復を待たなければならないため連戦ができないのは難点だが、魔力の出し惜しみをしなければ、アイルは下手をすれば俺よりも硬い総合的な防御力を手に入れることができている。
もっとも、基本的に近距離攻撃手段が杖しかないから、遠くからガチガチに守って魔法を連射するっていうやり方が基本スタイルなんだけどさ。
ちなみにレベルが9になって新しく覚えた魔法っていうのは、ライトジャベリンのことだ。
これは光の槍とでも言うべきもので、簡単に言えば攻撃力と貫通力の上がったライトアローである。
使用するMPは5。
ライトアローとレッサーヒールが2、ヒールが3であることを考えると消費量は多めだが、その分威力が高い。
以前のようにライトアローを何発も入れずとも、ライトジャベリンを一撃、目か局部に差し込めば、それだけで勝負を決められるほどの貫通力がある。
結果としてゴブリンリーダーを相手にした戦闘時の使用MPは、以前より減ったくらいだ。
さて、こうして俺達は順調に新しい力を手に入れ、装備を更新し、レベルを上げて能力を高めることに成功している。
ゴブリンリーダー三匹の群れであっても、今ならば問題なく倒すことが可能だ。
けれど俺らは無理をして、更に森の奥に行こうとは考えていなかった。
ゴブリンキングがどれほどの力を持っているのか、そして奥にどれほどゴブリンが密集しているのかといった、不確定要素があまりにも多いからだ。
アイルは防御力は相当上がったが、その分以前と比べれば魔力の使用量が増え、連戦ができなくなった。
そして節約して戦ってもしものことがあると考えると、今はまだそのスタイルを崩してほしくはない。
それに未だこちらにやってくるゴブリン達を倒せば、レベルを上げていくことはできる。 もし戦わなくちゃいけないとしても、できるだけ万全な状態で挑みたいからな。
ゴブリンリーダーと最初に戦ったときは結構危なかったからな。
あの教訓を活かして、俺達は少し安全マージンを多めに取るようにしているんだ。
けれど、そんなことを言ってられない事態が起こった。
俺達がいつも通りに戦っている時に……とうとうその時が来たのだ。
――自分の同胞を狩られ続けていることに業を煮やしたのか、ゴブリンキングがやってくる時が。
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