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仲間


 ゴブリンリーダー二匹を相手取る場合、最初からアイルを参加させるわけにはいかない。


 今の彼女はレベルアップをして強くなっているとはいえ、ゴブリンリーダーを相手にして戦い抜けるだけの戦闘能力はまだないからだ。


 なので俺がまずはなんとかして、ゴブリンリーダー達を相手取る必要がある。


 だから前に出たんだが……そこで感じたのは、違和感だった。

 けれど今回の場合は、どちらかといえば良い意味の方のだ。


(……妙だな)


 以前と比べると明らかに、俺のスニーキング能力が上がっていた。


 特に歩法を意識しているわけでもないのに足音が自然と立たなくなったりしているし。

 多分こっちは、レベルアップによる素早さや攻撃の上昇で俺の力が増えたからだろう。


 この足音の方は、少し考えれば別段おかしなことじゃないってことに気付く。

 俺が違和感としてより気になったのは、ゴブリンリーダーがこちらに意識を向けるのが、前と比べると明らかに遅くなっている点だった。


(もしかしたら……隠密、みたいな隠し能力があったりするのか?)


 なんにせよ、より近付けるというのなら俺にとってはありがたい話。

 ゴブリンリーダー達がこちらに気付いた時には、既にそこはメイスの間合いだった。


「シイッ!」


 一撃。

 レベルアップによって強化された腕力による攻撃は、以前よりも速度を増して放たれ、ゴブリンリーダーの頭部を捉える。


「グガァッ!?」


 吹っ飛ぶゴブリンリーダー。

 そこをもう一匹のゴブリンリーダーがカバーに入ろうとする。


 げに麗しき仲間意識じゃないか。


 だが見れば、俺が吹っ飛ばしたやつは脳しんとうでも起こしているのか、明らかにぐわんぐわんと目を回していた。


 できればこいつが回復しきる前に、この一匹を処理してしまいたいところだ。


 十全の状態のゴブリンリーダーと向かい合う。

 そしてどちらからともなく駆け出した。


 剣のように軽々とメイスを操ることができるからこそ、こちらを斬り付けようとするゴブリンリーダーと同じだけの速度が出る。


 剣を中段に構えながら、最低限の動きで斬り付けようとする身体の動かし方だ。


 二つの影が交差する。

 俺はこちらに向けて剣を振るゴブリンリーダーの、その得物を狙って一撃を放つ。


 ガィンと硬質な音を立てて、剣とメイスがぶつかる。

 膂力は既に俺の方が上、ゴブリンリーダーは衝撃に身体を持っていかれた。


「ライトアロー!」


 重心が高くなり、地面につま先立ちで立っているゴブリンリーダーの頭部目掛けて、アイルが的確にライトアローを放つ。


 上手いことターゲッティングをされた光の矢が、ゴブリンリーダーの左目に突き立つ。


「グッギャアアアアアッ!」


 俺は即座に身体を右に倒し、ゴブリンリーダーの死角に入る。

 そのまま狙うは――股下からのかち上げ!


 見事に決まる。

 攻撃を食らいがに股になっていたゴブリンリーダーに、しっかりと金的を決めてやった。


「グ、グギギ……」


 頭部を叩かれても若干の脳しんとうで済むみたいだが、さすがに金的の痛みには耐えられないらしい。

 頭部よりも局部を狙った方が効くっていうのが少し複雑だが、弱点はしっかり狙わなくちゃならない。


 俺は股を押さえるその手を巻き込んで、再度局部を殴打する。

 そして守るために体勢を変えようとすれば、即座に頭部を叩く。


 頭を隠せば局部が隠せず。

 局部を守ろうとすれば他がおろそかになる。


 以前よりも少なく都合五発ほどで、ゴブリンリーダーをノックダウンすることができた。

 倒れたゴブリンリーダーに、二発メイスの振り下ろしを入れると、さすがに倒れてくれる。

 見れば残る一匹の方には、頭部と局部に何本もの光の矢が立っており、完全に串刺しになっていた。


 なんか……ゴブリンリーダーが磔刑を受けてるみたいで、ちょっといけないことをしているような気分になってくる。


 だが内側に打撃の衝撃を通すよりも、光の矢で貫徹した方が早いらしい。

 局部と頭部を打ち抜かれたゴブリンリーダーは明らかに絶命していた。


 ライトアローをしっかりと狙った場所に当てられるなら……アイルも十分ゴブリンリーダーを倒せるってことだな。


 今後二匹以上を相手取る場合は、まずは俺が一匹に不意打ちを決めて意識を刈り取る。

 そしてもう一匹を倒している間に、動きがとろくなった方のゴブリンリーダーと、周囲にいるゴブリン達をアイルに仕留めてもらう……って感じになりそうか。


 残っていたゴブリンを蹴散らし、合流する。

 アイルの様子を見て、俺は彼女の異変に気付く。


 いつにも増して疲れているように見えるのだ。

 そして彼女の修道着に、いくつかの破れがあった。


 どうやらゴブリンリーダーにトドメを刺すことを優先させたために、ゴブリンに対して完全な対応ができなかったようだ。


 そして結果として大量のライトアローや、自分にかけたヒールのせいで、相当な回数の魔法を使った。

 疲労の顔が浮かんでいるのは、恐らくそのためだ。


 やっぱり……二匹以上を相手にするとアイルも攻撃にさらされるようになるか。


 俺はやっぱりなんとかして上手い分断の手を……と言おうとしたんだが、その言葉を口から発するよりも、アイルが口を開く方が早かった。


「やりますよ、私も戦います。いつまでもチェンバーさんの傷を治すだけじゃ嫌です。守られてるだけじゃ嫌です! 私だって――私だって戦えるんです! 次は私が、チェンバーさんを守ります!」


 その覚悟の籠もった瞳を見て、否と言えるはずがない。

 思い返してみれば。

 俺はアイルに手を差し伸べてからというもの、彼女をほとんど矢面に立たせずに戦ってきた。


 危険があれば俺がまず先に出て。

 彼女に危険が迫らない範囲で、攻撃や回復をさせてきた。


 アイルにとってきっとそれは、忸怩たるものがあったんだろう。


 だって俺らは――同じパーティーだ、命を懸けて高みを目指す仲間なんだ。

 だったら俺も、アイルのことを信じてあげなくちゃいけないよな。


 こうして俺は、今後も積極的に複数のゴブリンリーダー達を狩っていこうという方針を変えずにいくことにした。


 なんとしてもゴブリンリーダーを狩りまくって、レベルを上げなくちゃいけない。

 きっとそうしなければ、俺達はゴブリンキングを相手にして、逃げることもできないだろうから……。


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