予想外
現状でゴブリンリーダー二匹以上を抱えている群れを倒す方法について考えることにした。
まず一番最初に思いつくのは、二人のレベルアップだ。
今戦って余裕を持って倒せるのであれば、俺のレベルが8になれば更に余裕を持って戦えるようになる。
俺がレベルアップをするまでに必要な経験値は、あと200ちょっとだった。
やっぱりゴブリンリーダーは300前後の経験値があるみたいだ。
群れをいくつか潰せばすぐに満たせるだろうということで、一番最初にこれを済ませてしまう。
そして俺のレベルアップをしたらアイルのもあと少しだということになり、日暮れまで粘って彼女のレベルも上げた。
ステータス
チェンバー レベル8
HP 83/83
MP 1/1
攻撃 34
防御 33
素早さ 18
魔法
ライト
ステータス
アイル レベル8
HP 41/41
MP 45/45
攻撃 11
防御 20
素早さ 14
魔法
レッサーヒール
ヒール
マジックバリア(小)
ライトアロー
俺は相変わらずMPは増えないが、その他の値は順調に伸びている。
アイルは順調に全ての値が伸びている。
こうやってレベルが上がってくると、各々がどういうことに向いているのかも見えてくるな。
俺は近接戦ができるだけの攻撃と防御があるが、素早さは遅め。
必然扱う武器は手数で敵を翻弄する双剣や片手剣ではなくて、一撃がでかいメイス等になる。
そしてアイルは全体的にステータスは俺より低いが、その分大量のMPがある。
とにかく後方で攻撃を食らわないようにしながら、魔法で支援をするのに適した育ち方をしている。
さて、レベルも上げたところでどうやって勝つか……と考えた時に、活路になりそうなものが一つあった。
俺達の耐久値――つまりはHPだ。
これがどのようなものなのかを知っておくべきかもしれない。
使える物は全て使わなければ、今の俺達じゃゴブリンリーダー二匹以上の群れに勝てない。
俺とアイルは『無理せず逃げろ、命大事に』をモットーにやっているせいで、そもそもの話ダメージを受ける機会があまりない。
かすり傷を作るとHPが1減ったりすることは知ってはいるんだが……どうせなら今後のことを考えて、一度確認してみた方がいいな。
「一度ゴブリンソードマンあたりと戦って、試してみる。身体は俺が張るから、アイルは後でちゃんと治してくれ」
「はい、任せて下さいっ! 辻ヒーラーとして練習を重ねたこの私にっ!」
最近ランブルで聞く、無料で治してくれると噂の回復魔法使い。
あれ……アイルだったのかよ。
「グギャッ!」
「ぐうっ――っ!」
「ギギッ!」
「がはっ!?」
俺はゴブリンソードマンに何度も切られながら、その度にステータスを見てはHPというものがなんなのかについてを身体で学んでいた。
この数値は、俺が想像していたものとは、まったくの別物だった。
これを簡単に言えば……俺の皮膚の上にある透明なアーマー、といった感じだ。
HPがある限り、俺の身体の上には透明な膜が現れる。
そしてそれが俺の肉体を襲うダメージの一部を、肩代わりしてくれるのだ。
例えば、俺がゴブリンソードマンの斬り付けを食らったとする。
そこで食らうダメージを3としよう。
するとそのうちの2がHPによって肩代わりされ、俺の身体には1のダメージが通る。
HPの仕組みは、簡単に言えばこんな感じだった。
HPが全てのダメージを肩代わりしてくれる太っ腹な時もあれば、半分くらいしかしてくれないケチな時もある。
ゴブリンソードマンによる攻撃を受け続け体当たりで行った俺の検証では、そのあたりの条件は明らかにならなかった。
だがこれ、結構有効な力だぞ。
要はHPがある限りは、俺達が食らうダメージは最低でも半分になってくれる。
半減になってくれるんなら、多少の無茶をして攻撃を受けるだけの余裕はある。
そしてHPに関して更にわかったことが一つ。
アイルが使うヒールは、俺のHPと俺のそもそもの肉体、その両方を癒やしてくれるということだ。
これはレベルアップの時と同じだ。
俺の肉体のダメージとHPが減っている量の両方を、レベル上昇に伴って回復してくれる。
身体の傷も治りHPも全回復するものだから、肉体へのダメージ=HP消費とばかり思っていた。
まったく、ややこしいシステムだ。
さて、でもこれで俺は彼女から定期的にヒールを受けることができれば、継戦に関してのあれこれをあまり心配してもよくなる。
アイルさえいれば、俺が無理をしてもそれを彼女の魔法でカバーできるからだ。
ゴブリンリーダー二匹がまとめる群れを仕留めるためには、このHPを有効活用する必要があるだろう。
無理押しも利きそうだし……うん、一度やってみるか。
俺達は戦って勝てるという敵だけを選んで戦ってきた。
そのためゴブリンリーダー二匹が統率している群れを見ると、さすがに不安に襲われそうになる。
まず数がべらぼうに多い。
ゴブリンソードマンも十は下らないくらいいるし、ゴブリンの数なんかも三十近いんじゃないか。
ただ、やり方は以前の形を踏襲する。
問題を起こし、ゴブリンリーダーを一匹ずつバラしてから戦う普段通りのやり方だ。
しかし、少し予想外のことが起こった。
ゴブリンリーダー達はそれぞれのグループに分かれるのではなく、ゴブリンリーダー二匹とそれ以外という形でわかれたのだ。
ゴブリンリーダーは問題が起こると真っ先に自分がそれを解決しに行こうとするが、まさか二匹いた場合は一緒に行こうとするとはな……。
だがこれはチャンスだ。
いつもの通りわずかな供回りしか連れていないため、ゴブリンリーダー二匹を相手取って戦うことのできる、理想的なチャンス。
俺達は早速行動を開始することにした――。
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