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一人


 ゴブリンリーダーが討伐できた時点で、一度ギルドへと戻ることにした。

 ちなみに既に、アイルのレベルは上がっている。

 一回の往復でレベルが上がるとは……ゴブリンリーダーを倒して得られる経験値は、かなり多いってことだろうな。


 これで彼女も俺と同じく、レベルが7になった。




ステータス


アイル レベル7


HP 38/38

MP 40/40

攻撃 9

防御 19

素早さ 13


魔法

レッサーヒール

ヒール

マジックバリア(小)

ライトアロー



 新たな発見としては、彼女のMPが6上がったことだろうか。

 今まで二人とも最大で5までしか上がったことがなかったから少しびっくりした。

 もしかしたら運がいいと、一度に7や8とか上昇することもあるのかもしれないな。


「これでチェンバーさんと同じレベルになれました!」


「……そんなに嬉しいことか?」


「ようやくあなたと肩を並べられたんです。大怪我をしても安心して下さい、きっと私が治してみせますから!」


「最近はアイルのおかげで、傷が身体に残らなくなってきた。感謝してるよ、ホントに」


 魔法は使用するMPというのがあらかじめ決まっている。


 普通の魔法使いはなら自分の体内にある魔力の残量は目では見えないから『あと何発くらいなら打てそうだ』という感覚で理解する。

 事実アイルもステータスが見られるようになるまでは、そうしていたらしい。


 けれど今の彼女は、自分が持っている魔力と、魔法を使うのに必要な魔力を具体的な数字として見ることができるようになっている。


 魔力量がしっかりと把握できるようになったおかげで、以前よりも魔法を使うタイミングが上手くなったり、魔法の練習を効率的に行うことができるようになったんだとさ。


 そのおかげで、最近アイルの回復魔法の腕はメキメキ上達中だ。

 使う魔力は一緒でも、やっぱり習熟していくうちに威力や効力っていうのは上がっていくらしいからな。


 ちなみに一度の回復魔法で傷が治せない場合は、何度も繰り返し発動することで徐々に治していく。


「ヒールを何回か連続して使えば、多分骨折くらいまでなら治せます」


 以前アイルは、自信ありげにこう言っていた。


 まだ大きな怪我をしたことがないからなんとも言えないが、いざという時は頼りにさせてもらおう。

 そんな日がこないのが、一番なんだけどさ。





「ゴブリンリーダーを倒した、ですか……」


 ギルド幹部のシリヌイさんは、俺達が持ってきたゴブリンリーダーの魔石を見て少し驚いたような表情を浮かべている。


 無理はしないとあらかじめ言ったはずなのに、今の俺達の実績からすると無謀とも思えるゴブリンリーダー狩りをしてきたことが、予想外だったようだ。


 ギルド側の資料ではただのCランクパーティーを追い出された男と、Dランクパーティーを追い出された女ってことになってるだろうからな。


 レベルが上がって俺達はどんどん強くなっているわけだけど、ギルド側はそれを今回初めて知ったってわけだ。


「だとすると、アイルさんをCランクに上げてもいいかもしれませんね」


「いいんですか、そんな簡単に決めてしまって」


「……ここだけの話、Cランクが一人でも多く居てくれた方が、ギルドとしても面目が立ちますから。さすがに冒険者達が全員逃げ出してしまったというのは外聞も悪いですし……」


 やられる危険を考慮して、指名依頼が入る前に逃げていってしまった冒険者達。

 多分追って罰則金なりランク降格なりは入るだろうが……全員ふん縛って連れてくるってのができないのが、ギルドの悲しいところだよな。


 ギルドは互助組織だが、冒険者達を強引に動かすだけの強制力はないのだ。

 これがギルドがその土地に根付いた冒険者達を育てようとしている理由の一つでもある。

 自分の生活圏を守るためなら、命を張るって奴らも出てくるからな。


「現状、街と森の境目に柵や土嚢、落とし穴などの防衛設備を建築中です……とにかく私達に必要なのは時間ですので」


「了解です。自分達も無理しない程度に頑張りますよ」


 立ち上がり、宿に帰ろうとする俺を、シリヌイさんが引き止めた。


「ゴブリンリーダーを倒すのは、無理ではないのですか?」


 振り返りながら、俺は笑う。


 無理じゃないさ。

 俺とアイルなら、まだまだやれる。


「できることをコツコツやっているだけですよ、俺達は」


 その言葉にシリヌイさんは、「そうですか……」とだけ言い、頷いた。

 俺達は今日の疲れを取ろうと、ギルドを後にする。


 まだまだ明日からも戦いは続く。

 とにかくできることをしていかないとな。


 けど、どうしてだろう。

 街が危機的状況だっていうのに、この状況をどこか楽しんでいる俺もいるんだ。


 強くなっている実感っていうのは、こんなに人を変えるんだな。


 明日はゴブリンリーダーを二匹、狩ってみせる。

 次はもっと上手くやってみせるさ。





 二度目のゴブリンリーダーとの戦いに入る前に、もう少しアイルとの連携を上手くやっていこうという話になった。


 今のアイルの攻撃は9。

 実は値だけを見れば、レベルが上がる前の俺よりも高いのだ。

 おまけに防御も素早さも格段に上がっているため、恐らく今のアイルであればゴブリンソードマンやメイジを相手にすることは十分にできる……はず。


 今まで彼女には普通のゴブリンをライトアローで倒してもらっていたが、今回は一度アイルに戦闘を任せ、彼女にゴブリンソードマンの率いる群れを相手にして、どこまでやっていけるかを試してもらおうということになったのだ。


 もちろん、何かあった場合は俺が即座に助けに入らせてもらう。

 でも多分、その必要もないと思うんだよな……。




(では、行ってきます)


(おう、ファイトだ)


(はいっ!)


 いつもとは逆で、俺がアイルを送り出す側だ。

 地味にこうやってアイルが戦う姿をじっと見るのは、今回が初めてだ。

 アイルもいっつもこんな風に、俺のことを見ているんだろうか。


 俺に見えているのは背中だけだというのに、何故かアイルがとても力強く見える。


 追放され、縋るために伸ばそうとしていた手を、おそるおそる引っ込めていた時とはまるで別人のようだ。


 顔は見えないが、今のアイルが目をキッと開き、戦うために全神経を集中させているのが俺にはわかった。



 今回の敵はメイジが二匹、ソードマンが一匹、通常のゴブリンが六匹。

 規模としてはまあ普通って感じだ。


 アイルはまず、相手に近付かれないラインまでぐんぐんと距離を縮めていった。


 その足取りには、まったく躊躇がなかった。

 どのあたりまで行けばゴブリン達が勘付くかを、多分俺の戦闘を見て覚えているからだろうな。


 アイルはズンズンと進んでいき、そしてゴブリン達が気付くより早く魔法を放つ。


「ライトアロー! ――ライトアロー! ――ライトアロー!」


 若干ラグこそあるものの、ライトアローの三連発か!


 魔法を連発するのにはコツがいるってマーサに聞いたことがあるが、アイルはもうそんなテクニックまで身につけてたんだな。


 一発はゴブリンソードマンの頭に吸い込まれるように飛んでいき、そのまま突き立った。 今のアイルのライトアローなら、間違いなく脳まで届いているだろう。

 これで一番不安だった近接戦闘が得意なソードマンを潰せた。


 続く二発目は、ゴブリンメイジの胴体に突き立った。

 メイジはさほど防御力が高くないし、怪我を負っていると魔法を使うまでに時間がかかるようになる。

 これで無力化したも同然だ。


 そして三発目は、さすがに対応された。

 ゴブリンメイジはひらりとライトアローを避け、アイル目掛けて魔法を放つべく杖を掲げる。


 アイルはそれを見て――更に前に出た。

 おいおい、強気だな。


「ギアッ!」


 ゴブリンメイジが初級火魔法であるファイアアローを放つ。

 アイルはそれを、スッと容易く避けてみせた。


 今の彼女の素早さは13だ。

 値はレベルアップを始める前の倍近い。

 下手に重たい得物を持っていない分、アイルの方が多分今の俺よりも素早いだろう。


 それだけのスピードが出せるのなら、見てからファイアアローを避けることもできるだろう。

 俺も似たようなことはできるしな。


 アイルは攻撃を避けながらも前進を止めない。


「ライトアロー!」


 そして今度は避けられないほどの距離から、ライトアローを放ちしっかりとゴブリンメイジに命中させる。

 その飛んでいくスピードは、最初に俺が見せてもらった時よりもずっと速くなっていた。


 今度は避けること敵わなかったゴブリンメイジが、ぐらっと倒れる。


 彼女は周囲にいるゴブリンに注意を向けながらも、倒れたメイジの頭に杖の先を刺してしっかりとトドメを刺した。


 彼女が持っている杖は、先端が尖っており、鉄で補強されている。

 いざという時は武器としても使えるようになっているのだ。


 ただ今後の戦いのことを考えると、杖ももうちょっと新調していいものを買うべきかもしれない。

 今の彼女なら、鉄製の杖を持っても問題なく使いこなせるんじゃないだろうか。


 杖術なんてものもあると聞いたことがあるし、杖でも接近戦はできる。


 アイルの場合回復役も兼ねているから、MPを使わずとも攻撃できる手段をしっかりと持っておいてもらった方が、ゴブリン狩りがスムーズに続くはずだ。


 俺が色々と改善案を脳内でこねくり回していると、討伐を終えたアイルがこちらに向けて手を振っていた。


 俺は笑顔の彼女に釣られて、笑いながら魔石採集を行うのだった――。


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