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判断

(ゴブリンリーダーか……しかもその周りにゴブリンソードマンまでいる)


(逃げましょうか?)


(……一旦離れよう。俺達の目的はゴブリンの殲滅じゃなくて、あくまでも調査だ)


 とりあえず森を進みながら、奇襲でゴブリン達を倒すことしばし。

 俺達は最初の壁にぶつかっていた。


 視線の先遠くの方には、先ほどまで遭遇してきたゴブリン達とは一線を画す存在感を放っている魔物の姿がある。


 筋骨隆々の、どちらかといえばオーガと言われた方が納得してしまうような見事な体躯。

 六つに割れた腹筋を持つあいつは、間違いなくCランクのゴブリンリーダーだ。


 ゴブリンリーダーがこういう形で森に出向いているということは、あいつがトップではないってことだろう。

 ここはまだ森の最奥にはほど遠いし、群れ全体を統率しているには周囲にいるゴブリン達の数も少ない。


 つまり彼らを統べるのはやはりゴブリンリーダーよりも上……ギルドの奴らが想定していた通りの、ゴブリンキングってことになる。


 ゴブリンリーダーがいたってことだけで、俺の指名依頼は完了したと言っていいだろう。

 さすがにゴブリンキングを直に見たら、生きては帰れないだろうし。


 ただここ、まだノイエの森の中央あたりだぞ。

 いったいどれくらいのゴブリンがいるんだ……ちょっとこれは本格的にマズいかもしれないな。


(ではこちらから……チェンバーさん、こっちに来ます!)


 俺が思考を止めて顔を上げると、たしかに群れが二つに分裂していた。

 複数のゴブリンソードマン達がまとめる十匹前後の群れと、ゴブリンリーダー率いる十五匹程度の群れに別れたのだ。


 これは……俺達にとっては僥倖だろう。


 さすがにあの集団を相手にしていては勝てなかったが、分散してくれたのなら俺達でも十分戦える芽が出てきた。


 どっちか片方……もし可能なら両方とも、俺らの経験値にしてしまいたい。

 今後もゴブリン討伐を続けるのなら、レベルアップをしておくに越したことはないからな。

 じっと息を潜め、俺達の方へとやってくるゴブリンリーダー達から身を隠す。

 Cランクの魔物と言えど感覚はそこまで鋭くないようで、無事にやり過ごすことができた。

 それならまず倒すは、ゴブリンソードマン達の群れだ。

 ゴブリンソードマンならば、群れていたところで俺だけで十分対処できるからな。


 ゴブリンリーダー達の姿が消えてからしばらく待ちの時間が続く。

 じっとりと額に汗がにじんだ。


 戦闘の音に気付かなくなるのは、果たしていったいどれくらい離れたらなのか。

 あまり時間をかけすぎれば戻ってきてしまう可能性も高いため、待ちすぎるわけにもいかないのが面倒なところだ。


(よしっ、行ってくる!)


(何かあったら、ライトアローを打って異変を知らせますので!)


 俺はアイルを背にして、ゴブリン達の群れへと駆けていく――。




 今回は数も多く、周囲全体に注意が散っていたため、接近に気付かれるのがいつもよりも早かった。

 結果として俺がゴブリン達の集団の下に辿り着いた時には、既に四匹のゴブリンソードマンが弓なりになって俺を包囲しようという構えを見せている。


 レベルアップを重ねて身体能力が全て倍近くまで上がっているとはいえ、さすがに一対四で戦うのは分が悪い。


 それにこれは正々堂々とした勝負でも決闘でもなく、ただの殺し合いだ。

 バカ正直に戦う必要はない。


 包囲を徐々に狭めようとするゴブリンソードマン達にジリジリと近付いていってから……咄嗟に反応が不可能な速度を出し、右翼へと向かう。


 右側の二匹のゴブリンソードマンが即座に迎撃の構えを見せる……が、二対一なら俺に分がある。


 振り下ろしと振り上げが俺目掛けて放たれるが、連携は大したことはない。

 十分に余裕を持って右側の奴の攻撃をよけ、左側の奴にカウンター気味にメイスをぶち当てる。


「ふんぬうぅっっ!」


 いつもと違う、全力でのぶちかまし。

 ソードマンは剣でそれを迎撃しようとするが、俺は剣ごとまとめてその身体を左へ吹っ飛ばした。


 そしてそいつを、左側にいた二匹のゴブリンソードマン目掛けて吹っ飛ばす。

 俺を包囲するために動こうとしていたソードマン二匹の腹に、横っ飛びの形になった同胞の身体がぶち当たった。


「ギイィィィッ!」


 ラッキーなことに、そのうちの一匹に元々持っていた剣が刺さったらしい。

 これで二匹にかなりのダメージを与えられたぞ。


 三匹が一纏めになっているうちに、次撃に移ろうとしていたゴブリンソードマンにメイスを振り下ろす。

 腕によるガードも虚しく、俺の一撃が頭部に当たり、ゴブリンソードマンが息絶える。


 そしてくるりと振り返る。

 振り向きざま確認したが、ゴブリン達がこちらに向かってくる様子はなかった。


 そしてなんとかして起き上がろうとしているやつと、腹に剣が突き立ったやつを放置し、同胞が腹にヒットこそしたものの未だ大した怪我を負っていないゴブリンソードマンを次のターゲットに定める。


 一対一なら遅れを取るわけもなく、一匹を簡単に沈める。

 そして残るは手負いのゴブリン二匹と、既に逃げる準備を始めているゴブリン達のみ。


 俺は一切の容赦なく、彼らを殲滅することに成功した。

 さて、これであとの問題はあのゴブリンリーダー達を倒しに行くか、だな……。



 アイルと身を隠せる岩陰に潜んでから少しだけ結果、今日はこのまま急ぎ帰ろうということになった。


 何せ既に、Dランク冒険者パーティーが消息を絶っている。

 その事実から、ゴブリンリーダーの強さを甘く見積もり過ぎない方がいいだろう。


 幸いなことに、ゴブリンリーダーが仲間を殺されたことに気付き、俺達を追いかけてくることはなかった。

 というわけで俺達はノイエの森に深入りはせずに引き返し、森の北の方でできる限りゴブリン狩りに勤しみながら帰還することにした。


 この依頼をこなすだけで、とんでもない量のゴブリンを倒している。


 おかげで俺もアイルもレベルが上がった。

 どうやらランクが一つ上がると、もらえることになる経験値も結構違ってくるらしい。


ステータス


チェンバー レベル6


HP 72/72

MP 1/1

攻撃 25

防御 28

素早さ 14


魔法

ライト



ステータス


アイル レベル5


HP 32/32

MP 29/29

攻撃 7

防御 17

素早さ 11


魔法

レッサーヒール

マジックバリア(小)

ライトアロー


 ちなみに今回は新たな魔法や能力は手に入らなかった。

 さて、さっさと報告に行かなくちゃな――。


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