残滓
俺達はひとしきりバカをやってから、ゴブリン狩りを再開する。
まだレベルアップしたばかりだから、アイルが次のレベルに必要になるために経験値は80近い。
ゴブリンの経験値は3だから、二十匹以上を倒さなくちゃいけない計算だ。
戦闘能力としては問題なくとも、そもそもそんなにゴブリンを見つけられないだろう……と、思っていたんだが。
日が沈み出し帰還しようとなった段階で、アイルのレベルは4に上がっていた。
ステータス
アイル レベル4
HP 30/30
MP 24/24
攻撃 6
防御 16
素早さ 10
魔法
レッサーヒール
マジックバリア(小)
ライトアロー
「ちょっと……あまりにもゴブリンの数が多すぎるよな」
「そ、そうですよね……」
森を抜け、街へと向かう道すがら話をする俺達二人の顔は暗い。
何か……違和感があるのだ。
俺は前に何度かこの森に入っている。
そしてその時は、これほどまでに大量のゴブリンが出てくることはなかった。
今日の森の中の様子は、少し異常だった。
ゴブリンを倒してまた少し歩くと、生き物の気配。
そして覗いてみればゴブリン。
それを倒すとまた……という感じで、とにかくゴブリンが大量にいた。
このままゴブリンを倒しているだけで、俺もレベルアップまでできるんじゃないかと思うほどに。
今日だけでゴブリンを何匹殺したのか、正直覚えていない。
ずっとメイスを握っていたような感じだったので、精神的にもかなり疲れている。
けどこの異変は……とりあえずギルドには報告しておく必要がありそうだ。
今の俺とアイルだからなんとかなったが、下手なEランクパーティーなんかがここに来たら、大量のゴブリンに数で押されかねないからな。
面倒なことになりそうだな……という予感は、的中することになる。
俺は昔からそうなんだ。
外れてほしいものっていうのは、大抵当たるんだよ。
「実は、ギルドではゴブリンキングが居ると想定しています」
「は、はぁ……」
ギルドへ戻り、ゴブリンを倒しまくった報告と、ノイエの森で感じた違和感について話をすると、俺は何故かギルドの二階へと上げられた。
一緒に報告をしたアイルは、一階に待機している。
どうしてパーティーではなく、俺だけが呼ばれる必要があるのだろうか。
もうその時点で警戒はマックスだったわけだが、そこに来て現れたのが冒険者ギルドランブル支店の幹部だという自己紹介をされた時点で、察するよな。
間違いなく、何か厄介ごとが起こっているんだろうなってさ。
「既にDランクパーティーが二つほど、ノイエの森で消息を絶っています。ギルドはこの件を非常に重く見ておりまして」
「つまりCランク以上の何かが、森にいるってことですね」
「そういうことになります」
ゴブリンキングはたしか……Bランク相当の魔物だったはずだよな。
『暁』はCランクパーティーだったから、以前話題に上ったことがある。
無理に危険を冒すことはないと当時は依頼を見てもやらなかったわけだが……そんなのが森にいるって?
ゴブリンキングはゴブリン系の魔物達を統率できる個体って話だ。
ゴブリンは最弱の魔物だが、とにかく繁殖能力が高い。
それにゴブリンメイジやゴブリンリーダーみたいな、D~Cランクくらいまでの魔物もいる。
そんな奴らが、キングの統率の下、森を支配しているとしたら……。
もしかしなくとも、ランブルにまで攻め込まれるんじゃないのか?
……俺らが下手に首を突っ込むのは間違いだな。
早い内に手を引かせてもらおう。
「口外はしないと誓いますので、引き続きよろしくお願い致します」
「チェンバーさん、あなたに一つ指名依頼をさせていただきたい」
「どうして俺なんですか、もっと適任者がいますよ。オークとゴブリンを狩って日々の生活に汲々としてる俺に、何を求めると?」
「あなたをAランクに届くと噂の超新星、『暁』の元メンバーと見込んでお願いをしたいのです」
「――っ!?」
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