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迷宮都市



 迷宮都市は、今まで俺が過ごしてきたどの街とも違う。

 検問抜けを待つために待っている間だけでも、それがすぐにわかった。


「なんていうか……熱気がすごいな」


「そうですね、生命力に溢れているといいますか……ものすごくエネルギッシュな感じがします」


 検問待ちの列に並んでいる人間たちの目が、ものすごくギラついているのだ。 

 迷宮を目当てにやってきた冒険者だけではなく、何かをやりに来た若者や物を売りに来た商人たちも、皆一様にギラギラとその瞳を輝かせていた。


 彼らを見ているせいか、城門の内側にある街からも何か熱気のようなものを感じる気がする。

 生命力に溢れているというアイルの言葉は、なるほど的を射ているように思える。

 

 検問を抜け、中に入る。

 自分たちの直感が間違っていなかったことは、入ってすぐにわかった。


「これが、フィルロスか……」


 迷宮都市フィルロスには、三つの迷宮がある。 

 フィルロス小迷宮、中迷宮、大迷宮の順に大きく、そして難易度も高くなっていくのだ。


 フィルロスは迷宮から得られる資源やそこに集まる人たち相手の商売人たちが寄り集まっていった結果生まれた迷宮都市だ。

 その所以故に、この街は大きくわけて三つの区画に分かれている。


 小迷宮のある外縁区。

 中迷宮のある商業区。

 そして大迷宮のある中央区だ。


 一番難易度の高い大迷宮に挑戦するには中迷宮の踏破が、同じく中迷宮の挑戦には小迷宮の踏破が必要になる。

 故に冒険者達はまず最初に外縁区で過ごし、小迷宮を攻略することを第一の目標にするのだ。


 外縁区には外から来たよそ者たちや、中迷宮に挑むほどの実力がないままくすぶっている冒険者たちが多い。

 つまりそれが何を引き起こすのかというと……


「や、やめてくれ、うわあああああっっ!!」


 冒険者らしき男が、複数の小汚い男たちに囲まれてボコボコに殴られている。

 それを見ても、誰も手助けをしようとはしない。それどころか舌なめずりをしながらそのおこぼれに預かろうとしているやつや、騒ぎに混じって自分も取り分を得ようとしているやつらの方がずっと多かった。


 あっという間に男は路地裏に連れ込まれていき……叫び声が一段と大きくなる。

 そして数分もすると……先ほどまでの叫びが嘘であったかのようにしぃんと静かになる。

 何が起こったのかは、推して知るべしというやつだろう。


 その一連の様子を見ても、外縁区の十人は顔色一つ変えていない。

 顔を青くしているのは、俺とアイルだけである。

 いや違う、よく見るといじめられていた時のことを思い出したからか、メイも少し青い顔を青白くしていた。


「話に聞いてたより、ずっとヤバそうだな……」


「で、ですね……私たち、ここで暮らしていくんですか……?」


 そう、この外縁区は――とにかく治安が悪いのだ。

 身ぐるみを剥がされたり、強盗恐喝程度なら当たり前。

 法律がまともに機能をしておらず、自分の身を守れないやつには生きる権利もないと言わんばかりの弱肉強食の無法地帯と化している。


 一応貴族が収めてはいるらしいんだが、その貴族もほとんど何も言わないそうだ。

 最も税収が上がるような形を目指した結果、フィルロスでは商業区と中央区に経済がほとんど集中してしまっている。

 不満のはけ口にすると同時に、治安悪化要因を潰し合わせて自浄作用で処理させるために、このようなアルティメット弱肉強食ワールドな地獄絵図ができあがっているということだった。


「その辺の人から情報を集めるわけにもいかないだろうし……とりあえずギルドで色々と話を聞かせてもらうか」


「ですね、流石にギルドの人であればちゃんとしてると思いますから……」


 ただギルドの場所がわからない。

 とりあえず人通りの多い方へ歩いていると、品定めをするようにいくつもの視線が飛んでくる。

 俺たちの方を見てからメイの方を見て、何人もの人間が舌打ちをしながら去っていく。


 どうやらメイが天然の人よけになってくれているようだ。

 ブルドの街とは逆の現象である。


 だがやはりどの場所にもバカというのはいるもので……


「おいお前ら、金目のものを全て置いてけ。あとそっちの姉ちゃんはこっちに来い、俺らが満足させてやるからよ……ゲヘヘッ!」


 歩いていると、ナチュラルに恐喝にあった。

 刃物を持っている男たち五人が、こちらを見て笑っている。


 ここはなめられたら終わりの場所だ。

 一度馬鹿にされれば周囲の人間もいいカモが来たと調子づくだろう。


 で、あれば。

 最初に一発ぶちかますのが手っ取り早いだろうな。

 俺とアイルは目を合わせ頷き合い、即座に戦闘態勢に入る。


「とりあえずこいつらぶちのめして、ギルドの場所を聞くか」


「ええ、そうしましょう。この街には聖光教の威光が届いていないのでしょうか……残念なことです」


 俺は握りしめたトールを、そのまま刃物を持っている男たちへとぶちかました――。

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