表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/103

神託


「アイルの『神託』ってスキルは、どんなスキルなんだ?」


「えっと……言わなくちゃダメですか?」


「いや、別に無理して言う必要はないぞ」


「じゃあ私から質問です。そもそも『神託』って聞いたら、どんなスキルを想像しますか?」


 そりゃ言葉から考えれば、神からのお告げがもらえるってスキルだろ。

 ありがたいお言葉が降ってきたり、心の中に浮かんできたりするんじゃないのか?


「いえ、まあ当たらずとも遠からずなんですが……本当にどうでもいいことばっかりがふと思い浮かぶんです。しかも脳内に浮かんだら、自動で口から発されてしまって。我慢したりもできないので、ひどい時は戦闘中に『神託』が発動して、それを言い終えるまで回復魔法が唱えられなかったりとか……」


「それは……たしかに冒険者にとっては、外れスキルかもな」


 別に誰かが明確な指標として出しているわけではないが、スキルというのには明らかに格の違いがある。


 例えば『剣術』スキルを手に入れた人間三人が模擬戦をするとしよう。

 するとその実力には、割とバラつきが出たりする。


 もしかしたら『神託』も、ガチの未来予知ができるような超有能なものから、アイルのような割と要らない情報しか出てこないようなものまで、ピンからキリまであるタイプのスキルなのかもしれないな。


「でもどうでもいい予言って、どんなものなんだ?」


「本当にバラツキがあって、これって一言では言い表せないかもしれないです。ただ頻度は一日一度で、基本的に一番近くにいる人についてのことが多いですかね」


「今日はもう出た?」


「まだですね。ちなみに昨日の予言は、私に転機が訪れるでした。これは大分マシな方です。まあ……転機は転機でも、悪い方のでしたけどね……」


 遠い目をしながら、フッと笑うアイル。

 どうやらさっきよりは、少し元気になってきたらしい。


「アイルのここまでの話、聞かせてくれよ」


「……はい、そうですね。私も誰かに聞いてもらった方が、少しは気が休まるかもしれません」


 そう言ってアイルは自分の身の上を話し出した――。









 私はそれほど裕福ではない家庭の次女として生まれました。

 貧しくもないし裕福でもない……そんなどこにでもある、一般家庭です。


 温かくも幸せな毎日が崩れてしまったのは……両親と姉がある日、盗賊に襲われて殺されてしまってからです。


 両親は行商人で、私より七つ年上の姉は既に両親の仕事の手伝いをしていました。


 当時の私はまだ幼く、仕事の邪魔になってはいけないと商店の店員に預けられていたため、私だけが難を逃れることができました。


 いや、難を逃れることができてしまった……という言い方の方が正しいかもしれません。


 おかげで私は身寄りのないみなしごになってしまい、孤児院に預けられることになってしまいましたから。


 歳を重ねるうちにまず浮かんできたのは、どうして何の罪も犯していないお父さんとお母さんとお姉ちゃんが、殺されなくてはいけなかったのかという疑問でした。


 そして次に、盗賊達への恨みで心がいっぱいになりました。


 私が冒険者を目指した理由は、とっても単純です。


 いつか……私の両親を殺した盗賊を、この手で殺してやりたかったから。


 もっとも、盗賊なんて長く続けられる仕事じゃありません。

 どうせ今頃は野垂れ死んでいるでしょう、私の仇も誰かが打ってくれているはずです。


 冒険者になろうと決めてからは早かったですよ。

 私には光魔法の才能がありましたから、プリーストとしての教育を受けることになりまして。


 孤児院と関係の深かった教会に預けられたんですが、そこは主流の聖光教の分派であるアリオス派という場所でした。


 私の服、ちょっと変だなと思いませんでしたか?

 これは使徒アリオスが元芸術家だったことから、アーティスティックな人達が集まるようになった結果なんだそうです。


 そして光魔法もある程度使えるようになり、冒険者として登録。


 アンディ……ああ、さっき私を追放すると叫んでた男の人です。

 彼に誘われてパーティーに入り、ポーションで代用が利くなんて言われないように自分なりに頑張ったつもりでした。


 でも、でも……ダメでした。


 いったい私の何がいけなかったんでしょう。


 どうしてスキルで、冒険者としての私の価値が決められてしまうんでしょう。


 なんで――。


「ピコン! チェンバーの次のレベルアップまでの経験値はあと30です!」


 ……あ、すみません。

 どうやら今回の神託は、たまにある訳のわからないタイプのやつみたいです。


 こういうのもあるんですよ、本当に使えないスキルですよね……これ。


 ――って、どうしたんですかいきなり、私の肩を掴んで。


 え、自分と一緒にパーティーを組んでほしい……?


 でも私、使えないプリーストで……それでも構わない?

 アイルじゃなくちゃ、ダメなんだ……って。


 どうして……どうしてそんなに、優しくしてくれるんですか。


 チェンバーさん、弱ってる時にそんなこと言われたら……本気になっちゃいますよ、私。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ