錆び付いたアパートの階段の床が抜け真っ逆さまに落ちて死んだ俺は転生する事になったでも神様が変な事を言うんだ転生後は少しの時間動くな!って素直に従ってたら僕の後方からけたたましいエンジンの爆音が
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過去に書いた短編です。内容が紐づいてそうなので貼り付けておきます。
「♪とんとん~トントン~ヒ○の2t~とんとん~……」
誰もが1度は耳にした事であろう軽快なリムズを口に出しながら、黒髪に少しだけ白髪が生えた黒目の中肉中背どこにでも居るような平凡な男が、自分の愛車である2tトラックの周囲を回りながら、トラックの各部を手で触ってみたり工具を使い軽く叩いてみたりしながら、点検をしていく。
そして最後にトラックのフェイスとも言うべき正面に立った時、公道を走るトラックには似つかわしく無い物がデカデカと存在をアピールするかのように、バンパーに取り付けられていた。
中年の男は最後にでかくてゴツいバンパーを両手で掴み、緩み等の不具合が無いかを揺すって確認する。
運転席のフロントガラスの直ぐ下にまで、張り出したバンパーは、男が望むだけの強度で、2t車にがっちりと取り付けられていた。
「♪とんとん~トントン~ヒ○の2t~」
先程と同じフレーズのCMソングを歌いながら男は、運転席のドアを開けて運転席へと乗り込んだ。
その後ハンドルの横のダッシュボードに取り付けられているカーナビらしき機械の電源をONにする。
~~~ウィーン~~~
そんな起動音の後にディスプレイが青に光った次の瞬間画面には見目麗しい、いかにも【私、出来る秘書ですが何か?】と自信に漲った20才前半ぐらいの美人の顔が写る。
「それじゃ確認だ、この仕事は万が一億が一間違いがあっちゃならねぇ!間違えましたで済む事じゃねぇからな!」
「最終確認完了、現在地より正面方向に転送パワーを2つ確認。1つは本トラックより10m程右側、転送パターンはBLUE!もう1つの転送パワーはBLUE転送3分後に本トラック真正面に転送されてきます、こちらの転送パターンはRED!こちらが対象となります」
「それじゃいっちょお仕事をやりますか」
男は気軽にそう言った後にトラックを起動される為の鍵を回しエンジンを掛ける。
アイドリングされるトラックの中、運転席から男がカーナビに表示された美しい女性に指示を出す。
「転送シークエンス開始!転送パワー充填始め!」
「転送シークエンスを開始いたします、転送パワー充填開始……現在30%……50%……70%……100%……転送パワー充填完了、いつでもいけます」
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僕の名前は橋元始。
情けないと言うかラッキーと言うか、自分の住んでるボロアパートの階段が抜けて最上段から下に真っ逆さま、運の悪い事に丁度頭の部分には尖った木片が。
こうして僕の40年の人生は、あっけなく幕を閉じた。まぁブラック企業に勤め、残業と休日出勤に追われ、ブサイクな顔のおかけで年齢=童貞と言う、冴えない人生の幕引きが簡単に終わったと思えば悲しむ事も無いか。
そんな事を今際の際に考えていたのだが、気が付けば僕はどうやら地球以外の剣と魔法のファンタジーのような世界に転生する事になったようだ。
今まで真面目に生きてきたと言うだけの理由で神様からほんの少しの特典まで付けて貰えた上で。
なんやかんやと神様との話し合いも済み、いざ転生!となった段階で神様が僕に変な事を言ってきた。
「よいか?転生された場所から最低でも10分!10分間動くでないぞ!折角転生させたお主を直ぐに不幸にさせるのは忍びないのでな」
変な事を言う神様だなぁ?とは思ったが人知を越えた存在である神様からの言い付けだ、必ず守ろう僕はそう心に誓った。
転生された場所はどこかの草原だったようだ。
僕は転生された事に歓喜してその場から駆け出そうとしたが、神様の忠告を思い出し、その場で腰を下ろして10分程の時間が経過するのを素直に待っていた。
3分少々経った頃だろうか?僕の近くに赤いオーラのような物が立ち込め、それは徐々に人の形人間の男性の形に変わっていった。僕は直感的にあの人も僕と同じ転生者だ!僕とは違う神様に転送させて貰った人だ!そう理解した。
そして……その直後……どこか懐かしいと言うか……懐かしいと言えば懐かしいのだが、こんな爆音を聞いた事は無い。と言うような爆音を鳴らして1台のトラックが赤いオーラに向かい時速100㎞は軽く出ていそうなスピードで突っ込んでくる。
僕は反射的に、危ない!避けて!と思ったのもつかの間、トラックは赤いオーラに包まれた男性を何の躊躇も無く跳ね男性を10mぐらい跳ね飛ばした。
そして、あろう事かトラックは跳ね飛ばした男性をバックで轢いて行き、運転席の真下のタイヤに男性の体を持ってくると窓を開け男性がしっかりとタイヤの下敷きになってる事を確認した後。僕の予想ではあるが、シフトをニュートラルにサイドブレーキをしっかりと掛け、タイヤが空転する状態にしたと思うと、大きな声で
「汚物は消毒じゃぁ!お前はまた現世に戻り、冴えない人生を寿命が尽きるまで、生きていけや~!」
そう、どこか狂喜に包まれたような声で運転手が発しながら、タイヤをグルグルと空転させ、赤いオーラの男性の体をどんどんとミンチにしていく。
僕はその光景から目を離す事が出来ず、人が挽き肉になっていく光景を吐きながら見つけ続け、5分程経った後に赤いオーラは消えてなくなり、ミンチにされた男性も消えていた。
トラックはゆっくりと僕の横に停まり、運転手が声を掛けてきた。
「よっ!兄ちゃんは自然死での転生って所っぽいな」
「はい!アパートの階段から転げ落ちて……」
「あ~みなまで言わんでよろしい、青いオーラが物語っていたしな、それじゃ兄ちゃんせっかく神様から貰った新しい人生を後悔無いように満喫するんやで」
そう言って運転席の窓から腕を出しサムズアップしたまま、僕から離れていった……
その後、僕は第二の人生を満喫しながらその国の王都の冒険者ギルドに立ち寄る事となる。
そのギルドに併設されたちょっとした酒場で、僕は背筋も凍るようなウワサ話を背中越しに聞く事になる……
「この世界にはバカな神様が安易に転生の道具として選んだトラックの運転手が、しかも数十回として、そのバカげた転生に付き合わされ交通刑務所に何回も服役し、悲しみのあまり獄中死したトラック運転手を憐れに思った別の神様が安易にトラックに轢かれて転生してくる者達を送り返すと言う事をしているらしい、何人もの転生者の体を轢くハメになってしまったヒ○の2tと共に」