第25話 ケンレン5:狙撃スコープが欲しい!
三人目への連絡です。
「もしもし、こちらナーロッバ転生者コールセンター、担当のカノンです。ケンレン様、少々念話をしてもよろしいでしょうか?」
今回は、Sランクさんことアホ河童のケンレンさんにご連絡です。
「誰かと思ったら、カノンやないか。どないしたんや?」
相変わらず、適当な似非関西弁が耳障りです。
「実は、創造神様よりケンレン様に、魔王討伐の神託が下りました。つきましては、事前報酬として追加チートが与えられますので、そのご希望をお伺いに連絡いたしました」
「え? ちょっと待ってぇな。情報が多すぎて頭が追い付かんわ。ワシ、魔王討伐させられるんか?」
「はい。仲間と共に、うっかり八兵衛的なポジションで魔王討伐に向かうことが決まりました」
「なんでやねん! せめて弥七にしたってや!」
「そういわれましても、創造神様の決めたことですので」
「……拒否するとどうなるんや?」
「別に大したことはありませんが、最近巷で有名なフライングカッパの正体が、ケンレン様であると全世界にばらされるそうです」
「大したことあるわ! まあええ、それで事前報酬として、追加チートがもらえるんか?」
「はい。とはいえ、うっかり八兵衛ポジションなので、大したチートはもらえませんが」
「なんでやねん!」
「まあ貰えるだけ有難いと思っていただければ」
「それ、ワシの方のセリフやないか?」
「それで、追加チートは何になさいますか」
「スルーするんかい! せやな、銃が使えるようになったし、その関係がええかな」
「ああ、あのキュウリ銃」
「キュウリゆうなし! 狙撃中のスコープみたいに、遠くが見えるようになるスキルとかどうや?」
「遠くが見えるようになる能力ですか、とりあえず申請して……」
「……待った!」
「なんですか?」
「なんか嫌な予感がするんや。身体強化魔法の二の舞になるような」
「……あり得ますね。例えば単に『遠くが見えるようになる能力』と申請した場合、眼球が遠くを見えるように変形するようになる可能性がありますね」
「目玉が望遠鏡のように飛び出るんか!?」
「いいえ、ヒトの眼は単一レンズですから、遠視になるには焦点距離が近くなったほうが良いので、逆に眼がくぼむかもしれません。あとは光量を確保するために、眼が巨大化するとか……。萌え絵のような、目が頭の半分を占めるような女の子風になりそうですね」
「リアルで出会ったら、不気味な奴だぞ、それは」
「なんにせよ遠方が見えるようになる代わりに、近くがぼやけて見えなくなる可能性は大きいです」
「ダメやん。なんかええ方法ないんか?」
「そうですね……、では『任意の空間を通る光を屈折させてレンズを作る能力』にしましょう」
「どういうこっちゃ?」
「スコープ、即ち屈折望遠鏡というものは、凸レンズと凹レンズを組み合わせて光を曲げているだけなんですから、究極的にはレンズさえあればいいんです。そして、空間をいじるだけなら、肉体に影響はありません」
「いやでも、望遠鏡と言ったら、筒があるのが普通じゃないんか?」
「いいえ。筒なんて飾りです。偉い人にはそれが分からんのです。望遠鏡の筒、即ち鏡筒はレンズを支えるのが主な目的です。一応空気の揺れを軽減したり、周囲の光が入らないようにしたりする効果もありますが、必須の物ではありません。地球の歴史でも、空気望遠鏡と言ってレンズを100メートルぐらいの棒にならべて、鏡筒のない巨大な望遠鏡とした例があります」
「へ~、そうなんだ。よくわからないけど、それでよろしく」
「では申請しますね」
「ケンレン様、申請通りに認められました。実際にお確かめください」
「早かったやんけ。どれどれ」
ケンレン様の前方の空間が歪んで、レンズが形成されます。
「んんん? ぼやけて全然大きく見えないんやが」
「望遠鏡のようにするには、二つ以上のレンズを組み合わせる必要があります。さらに、スコープのように像が逆転しない望遠鏡にするには、手前のレンズを凹レンズにしないとダメですね。とはいえ、Sランクさんにそんなことを言っても無駄でしょうから、直感で調整できるようにしましょう」
「お、見えるようになったわ! ほ~、倍率も自由自在やんか」
「直感調整モードでは、眼の位置を起点にレンズを生成します。ですから、眼の動きに合わせてレンズも動くので、望遠鏡より便利だと思いますよ」
「……いや駄目やこれ。銃を構えてみたら、眼の動きと銃の動きが一致しないから全然狙えないやんか」
「そういわれればそうですね。では、任意の空間にレンズを作るモードと、眼を基準とするモードの他に、銃を基準としてスコープのように銃と一緒に動くモードが切り替えられるようにしましょう。ついでにレティクル(スコープの照準を合わせる十字の線)も付けちゃいましょう」
「おお、ええやんか、これで簡単に狙いがつけられる!」
子供のように大喜びで銃を撃っています。
火薬代わりのキュウリの消費量が激しくて、またキュウリを求めるフライングカッパの出没が噂になりそうです。
「……なあ、ぜんぜん狙ったところに命中せんのやけど?」
「そりゃそうですよ。狙撃用のライフルじゃあるまいし、ケンレン様のお持ちの銃は、火縄銃を改造した……と言えば聞こえはいいですが、要は片方を塞いだだけの鉄パイプです。ライフリングもない滑空砲で、銃弾も球形ですから、狙ったところに飛ぶほうが不思議ですね」
「え? じゃあ今まで狙ったところに当たらなかったのは、スコープが無かったからじゃなくて、銃自体の欠陥やったんか!?」
「ああ、それは腕が悪かったんですね」
「……」
「…………」
「じゃあ、スコープは無駄だってことか?」
おっと、似非関西弁が抜けてますよ?
ガチギレしているようなので、そろそろ撤退しますかね。
「おあとがよろしいようで、これで失礼いたします」
「あ、おい、まて!」
まあ、銃にライフリング切って、椎の実型のミニエー弾を用意すれば、そこそこ命中精度は上がる気がしますが、聞かれませんでしたしね。
そもそも、銃弾より早く移動して、衝撃波で敵を吹き飛ばせる人が、なんで銃を使う必要があるんでしょうかね?
銃はロマン兵器なのです! エロくない人にはそれが分からんのです!




