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第24話 ゴノー11:索敵で先制攻撃無双したい!

二人目への連絡です。

「もしもし、こちらナーロッバ転生者コールセンター、担当のカノンです。ゴノー様、少々念話をしてもよろしいでしょうか?」

 今回は、クレ転ブタのゴノーさんにご連絡です。

『ちょっと待て。今、彼女に告白するところだから!』

 また美人系の女の子に告白ですか?

『わかりました。お知らせがあったのですが、後にします。ちなみに、彼女には恋人がすでにいますよ』

『オィ! そういうことは早く言えと何度言ったらわかるんだ!!』

 おや、告白は中止ですか。


「それで、今日は何だ? 僕が振られるのを覗きに来たのか?」

「これで通算36回目の失恋でしたっけ? そんな珍しくもないものを見に来たりしませんよ。私が適当な女の子でも紹介しましょうか?」

 そういえばさっき、クレ転さんに惚れてる料理長の娘さんが、こっそりのぞいていました。クレ転さんが告白を中止したので、ホッとしていましたよ。

 まあ、聞かれたら教えてあげましょう。

「うるさい! 余計なお世話だ! さっさと用件を言え!」

「はい、実は創造神から、ゴノー様に魔王討伐の一員となるよう、神託が下りました」

「はい? なにそれ?」

「いえですから、魔王討伐をしていただきたいと」

「いやなんで僕がそんなことをやらないといけないの?」

「まあ、その辺はボケ老神の気分……ゲフン、創造神の神託ですので、拒否権はありません」

「え?」

「すでに国王への神託は済んでいますので、ゴノー様が魔王討伐に出ることは決定済みです。逆らえば、良くて首チョンパ、悪ければ吊るし首ですね」

「どっちも死ぬじゃないか!」

「首チョンパなら名誉は守られるらしいですよ? よかったですね」

「よくない!」

「まあまあ、悪いことばかりじゃありません。全部で五人の転生者と共に魔王を討伐するようにと、神託が下りてますので、ゴノー様が一人で戦うわけではありません」

「そもそも僕は知識チート向けなんで、戦闘なんて欠片もできんぞ!?」

 ふむ、最近フラれる度に筋トレに励んでいたせいで、結構な筋肉量はついているみたいなんですが。分厚い脂肪層の下に分厚い筋肉を蓄えた体形、動けるデブ、いわゆる力士体形ってやつですね。剣を振っているところを見たことが無いので、攻撃力としては期待できませんが、それなりの鎧と盾を持たせれば、肉壁としては使えそうです。

「ブタは肉壁にでもなっていればいいんじゃないですか?」

「おい! また本音が漏れてるぞ!!」

 おおっと。


「まあまあ、肉か……ゴノー様、もう一ついいお知らせがございます」

「なんだ? チートでもくれるのか?」

「その通りでございます。創造神より追加チートが与えられます」

「え? マジでチートくれるの?」

 クレ転さんは、クレームも多いのですが、文化面への貢献も大きかったということで、それなりにポイントが溜まっているんですよね。そこそこのチートがもらえると思います。

「ご希望を聞いたうえで、申請して許可が下りた範囲で、ですが」

「……むう、悩むな。死にたくないから不老不死とか、敵を倒すために音速で動ける身体強化魔法とか、荷物を詰め込める時間停止機能付きアイテムボックスとか、いろいろ欲しい能力はあるんだが」

 どこかで聞いたような地雷能力です。

「その辺の能力は、他の仲間の方がお持ちです」

「むむむ、そうなると、前線で戦いたくないしサポート系かな……、そうだ! 先手必勝、見敵必殺! つまり、索敵能力が欲しい!」

「索敵ですか?」

「そうだ。敵を先に見つけて、不意打ちをくらわすことができるなら、戦いを有利に行える。そして、僕が司令官的な立場に立てれば、安全な後衛として前線で戦わずに済む!」

 どちらかというと、後半のほうが本音みたいですね。

「敵を先に見つける能力ですか?」

「そうそう。なんか『生命反応がそこにある!』みたいな感じの能力で」

「生命反応……、それって何なのでしょうか?」

「いや、ほら、分かるだろ? 生き物特有の魂反応的な何か」

「そんな曖昧なものを探知しろと言われましても」

「じゃあ、レーダー的な感じで、頭の中で周囲の物の位置がわかるみたいな」

「レーダーですか。それなら可能かもしれません。それで創造神に申請してみますね」



「……許可が下りました。ゴノー様にレーダー索敵能力が付与されました」

「おお、申請が通ったか! どれどれさっそく試して……、おお!? 頭の中にレーダー画面が!」

「一緒に送られてきた仕様書によれば、術者を中心とした1mほどの球体表面から、全方面に電磁波を断続的に投射、反射してきた電磁波を球体表面で吸収、反射してくるまでの時間から距離を割り出して、解析した結果を脳裏に映すという仕組みみたいですね」

「理屈はよくわからんが、なんか頭上とか真後ろの視界の外まで見えるんだが、見えすぎて気持ちが悪い」

「その辺は慣れですかね」


「ちなみに、これはどのぐらい遠くまで見えるんだ?」

「そうですね……目標の大きさにもよりますが、スペック的にはかなりの距離が見えるはずです。ただし、地球が丸いので、見えるのは地平線までですね」

「地球の丸みが邪魔をして遠くが見えないってやつか。たしか、人の高さぐらいだと、地平線まで5kmってところだっけ?」

「そうですね。その反面、空高く飛んでる巨大なドラゴンとかなら、100㎞ぐらい離れていても観測できますよ」

「そんなものは観測したくもない。むしろ見かけたら全力で逃げるわ!」

「そうやって戦闘を避けられるのも、索敵の効果ですから」


「あと、形はわかるんだが、画像が白黒だ。色がわかるようにならんか?」

「え~と、投射・吸収する電磁波の波長は調整可能らしいので、波長を可視光線の範囲にすれば、色も分かるんじゃないですかね?」

「むむむ、こんな感じか……!? 見える、見えるぞ! 真後ろの風景がカラーで見える!」

「これで、凝視しているとバレずに、好きなだけ女の子を視姦できますね?」

「そうそう。ってそんなことに使うわけないだろ!」

「……本当に使いませんか?」

「……たぶん」

 これは絶対使いますね。


「これ、物陰とか壁の向こうとかに隠れてるやつは見えないんだな。なんとかならんのか? ほら、X線で透視するみたいに」

「このスキルでは、電磁波を出して、跳ね返ってきた電磁波を観測しています。X線ですと、壁は透過できますが、その向こう側の人間なども透過してしまって、跳ね返って来ないので、見えません。目標の更に向こう側に、こちらに向かってX線を投射する装置でも置けば見えるでしょうが」

「X線を出す装置なんか無いな……、いやまて、赤外線カメラで透視撮影できるとか聞いたことがあるぞ?」

「電磁波は波長が長くなると、透過性が上がります。可視光線より少し波長の長い赤外線をつかうと、可視光では透過できない薄い布は透過しますが、人体は透過できずに肌の表面で反射します。結果的に、服を透視できますが……、それは犯罪ですよ?」

「ちゃ、ちゃうねん! ただの学術的な興味、いや、犯罪者が服の下に武器を持っていないか調べるために!」

「……本音は?」

「透視は男の子の夢です!」

 仮にも魔王退治の英雄候補が、性犯罪者として捕まらないことを祈ります。


「そういえば、この電磁波の波長を変えられるって、どの程度の範囲で変えられるんだ?」

「仕様書によれば……、電磁波と言われる範囲であれば好きに変えられますね」

 相変わらずボケ老神の設定はおおざっぱです。

「ずいぶんザックリとした設定だな。具体的にはどんな電磁波が使えるんだ?」

「さっき試した可視光線と赤外線の他にも、X線、紫外線、マイクロ波などなど、波長10ピコメートルのガンマ線から、波長100kmの極超長波まで電磁波ならほとんど使えるようです」

「どの波長が良いんだろう?」

「そうですね……、波長が短いほど直進性が強く、反射が強くなり、細かい形までわかりますが、雨などで減衰されやすくなります。波長が長くなればその逆ですね。まあその辺は実際にいろいろ試して調整するのがよろしいのでは?」

「それもそうか」

 そういうとクレ転さんは、人体に見立てた水袋めがけていろいろな電磁波を浴びせて、反応を探り始めました。


「……ん? うわっ!」

「どうされました?」

 実験に熱中しているクレ転さんを放置して、おやつを食べていたら、何か起きたようです。

「水袋が突然破裂した!」

「……ああ、沸騰したんですね」

「ふっとう?」

「いま波長を色々変えて水袋に電磁波を当てていましたよね?」

「ああ、長い波長からだんだん短くしていた」

「ちょうどマイクロ波を当てていたようですね」

「マイクロ波……、まさか電子レンジ!?」

「それです。もともと電子レンジは、マイクロ波レーダーの研究中に、アンテナの前においたチョコが溶けたことから発見されたらしいですよ」

「つまり、マイクロ波で水袋の中の水が沸騰して破裂したってことか」

「そうなりますね。水の振動数とマイクロ波の振動数が一致すると、共振した水が激しく動かされ、発熱します。もっとも普通のレーダーであれば、パルスの照射間隔が長いのと電磁波の強度がそこまで強くないので、水袋が破裂することはあり得ません。しかし、ゴノー様が水袋を詳細に見ようと思って、とんでもない出力で短時間に連続照射し続け、しかも一点に集中的に電磁波を当てたもので、急激に沸騰して水袋が破裂したんでしょうね」

「あーそーゆーことね、完全に理解した」

 こいつ全然分かってないな。

「まあ、電子レンジに卵や猫を入れてはいけませんってことです」

「猫……、なあカノン、もしかしてだけど、これを人とかに当てたら……」

「……絶対にやらないでくださいね?」

 本当のことを言えば、マイクロ波より、X線とかガンマ線とかの方がヤバいんですけどね。世界の平和のためにも、気が付かないことを祈ります。


「いやでもこれ、すげー殺人光線にならね?」

「あー、マイクロ波で攻撃することは、あまりお勧めしません」

「なんでだ?」

「電子レンジの扉に、網目があるのを知っていますか?」

「ああ、なんかガラス窓に網目がついているな」

「あれは、マイクロ波が外に出ないようにしているんです。マイクロ波の波長(約12センチ)以下の細かさの金属の網を、マイクロ波は透過できないんですよ」

「つまり、鎖帷子でも着てれば効かないと」

「効かないだけで済めば良いんですが、金属表面でマイクロ波は反射するんです」

「……目標以外のところにダメージが行くと?」

「そうですね。ゴノー様自身は、電磁波を吸収できるので被害はないでしょうが、周囲の仲間は……」

「少なくとも、周囲に味方がいる時は使わないようにするわ」

「索敵時のレーダー出力も、不必要に強くしないようにしてくださいね」


「ちなみに、板金鎧を着ている相手には全く効かないのか?」

「金属で反射されるので、マイクロ波自体は効果が無いでしょう。ただ、金属表面で電磁誘導が起きて、電流が生じます。そして金属の角などの尖った部分から放電します。電子レンジにアルミホイルを入れると発火するのはこのせいですね。ですから、板金鎧を着た人にマイクロ波を当てると、火花放電で火傷をするかもしれません」

「なるほど、多少の効果はあるのか」


「そういやさっき、俺自身はマイクロ波を吸収できるから安全だって言ってたが、もしかして他の電磁波も吸収できるのか?」

「そうですね、仕様書によれば、出力できる波長は全部吸収できるようなので、できるはずです」

「……もしかして、可視光も?」

「……できるはずです」

「ということは、透明になれるのか!」

「相変わらずエロいことしか考えてないブタですね。まあやってみればわかりますよ」

「エ、エロちゃうわ! むむむ、どうだ、見えなくなったか?」

「はい、見えなくなりました。しかし、ゴノー様の居たところに、半径1mの真っ黒な球体があるので、そこに何かがあることはバレバレですね」

「なんで真っ黒な球体が? 透明になるんじゃないの?」

「透明になるためには、ゴノー様の後ろから来る光を、反対側に透過させてやる必要があります。しかし、この能力では、半径1mの球体表面で電磁波を吸収するだけですので、後ろから来る光を通しません。むしろ一切の可視光線が球体から出なくなるので、ブラックホールのように暗く黒い球体として見えるんですよ」

「僕の透明人間の夢が……」

 がっくりと膝をついていますが、そんなにショックだったんですかね?

「まあ、暗闇に紛れるならば、真っ黒な球体も目立たなくなりますよ」

「ふむ、レーダーがあれば真っ暗闇で光が無くても周囲が見えるから、侵入には役立つか」


「……暗闇でも周囲が見えて、暗闇に紛れれば真っ黒で見つからなくて、遠距離から鎧を着ていない人間をぶち殺せる能力ですか」

「……なあ、それ、なんて暗殺者?」

 安全な後衛を希望して索敵能力を願ったクレ転さんが、最前線の敵地に単独で放り込まれるようになる未来が見えた気がします。

 きっと、気のせいですよね?

「さて、そろそろお時間ですのでこれで失礼いたしますね!」

「あ、おい、こら待て!」

 今日もクレ転さんの理不尽なクレームは無視しましょう。

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