表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/29

第20話 ゴノー10:ハンバーグで打ち首!

お手軽グルメチートと言えば、みんな大好きハンバーグ!

「はい、こちらナーロッバ転生者コールセンター、担当のカノンです」

「助けて、カノぇもん! 新作料理を作ったら打ち首になりそうなんだ!」

 念話の画面には、牢屋に入れられたクレ転さんの姿が見えます。

 まるでトサツ場に向かうブタです。

「ゴノー様、落ち着いてください。まずは状況説明をお願いします」


「実は、これまで僕が色々開発してきたものが、国王様の目に留まってな。急遽王都に呼ばれて、国王様に料理を披露することになったんだ」

「それは凄いですね」

 王様の口に入るものを作れるとは、とても名誉なことです。

「なんでも、近々魔王討伐の勇者が任命されるとかで、その晩餐会の料理を作らせたいらしい。今回はそれにふさわしい料理かどうかを審査する意味もあるとか」

 ……どこかで聞いたような話ですね。

「そこで、コース料理にして、これまで開発してきたものを使った料理を順番に出したんだ。そして、メインはせっかくだから新しいメニューにしようと思って、三大チート料理の一つ、ハンバーグを作ったんだ!」

「……なるほど、それで?」

「僕のハンバーグは、肉をただミンチにして焼いただけじゃない。肉には最上級の牛肉を使用。ただ焼くだけでも柔らかく旨い肉に、牛乳に浸したパン粉を入れることで、ミンチ肉より更に柔らかくした。もちろん、練りすぎて手の温度で油が流れ出ないように冷たい手で捏ねた。肉のうまみを閉じ込めるために表面に片栗粉をまぶし、肉汁があふれるようにするために、中心にはゼラチンを仕込んだ。外を強火でさっと焼き、そのあと弱火で中まで火を通した。雲のように柔らかく、切れば滝のように肉汁が溢れ、口に含めば肉の旨味が弾ける極上の一品だ!」

「聞いているだけで美味しそうな一品ですね」

「ところが、王様が一目見た途端、『無礼者! ブタが、余にまでブタの餌を食わせるつもりか! この者の首を刎ねよ!』と言われて、そのまま牢屋送りさ。一応、宰相様がとりなして下さって、明日もう一度チャンスをくれることになったんだけど、王様が激怒した原因がわからなくて困ってたんだ」

 なるほど。これはいわゆる『文化がちがーう』案件ですね。


「そもそも、ハンバーグは、この国に昔から存在しています」

「え? 僕の家では見たことないんだけど?」

「それは、ゴノー様の家が貧しすぎて、肉料理自体がめったに出ないからです」

「……反論の余地が無い!」


「ハンバーグは、良い肉を手に入れられない庶民が、硬く古いクズ肉を少しでも美味しく食べるために、ミンチにして焼いて食べる調理法です。ですから、ハンバーグという時点で、『庶民の下品で不味い料理』とみなされるんですよ、実際の味に関係なく。そんなものを王様に出したら、処刑されるでしょうね」

「いやでも、食べてもらったら美味しいってわかるはず!」


「例えば、みそ汁をご飯にぶっかけたネコマンマっておいしいですよね?」

「ああ、たまに無性に食いたくなるな」

「ですが、フランス料理のフルコースを食べてる途中に、シェフが突然『これは極上のネコマンマです』と言って出してきたら、どう思いますか?」

「……確かに、バカにしてるのかと怒るだろうな。でも、日本じゃハンバーグはご馳走扱いだったぞ?」

「日本では、明治維新までは肉食をあまりしなかったので、西洋からハンバーグがステーキなどと一緒に伝わったとき、すべて『肉料理』と分類されたんです。そのため別に庶民とか下品とかのイメージはつかなかったんでしょうね」

「それに対してこの国では、昔から庶民の下品な食い物というイメージが付いてて拭い難いと……」

「そうなります」

「ははは、僕の命も明日までか……」



「まあまあ、チャンスをもらったんですよね? 明日もう一度新しい料理で汚名挽回すれば良いじゃないですか」

「そうは言うけど、『余でも見たことのない新しい料理を作って見せよ。さもなくば処刑だ』って言われたんだぞ? 世の珍味を味わい尽くしている国王様が食べたことのないものとか、ハードルが高すぎる!」

「手持ちの材料は何ですか?」

「コース料理のメインまで終わってたから、残っているのは、シフォン風フワフワパンの残りと、片栗粉、油、デザートに出そうと思ってたアイスクリームの材料ぐらいだ」


 ふむふむ、ここはアレにしますか。

「では、天ぷらにしましょう」

「天ぷらは、先代の転生者が広めたから珍しくない料理なんだろ? そう教えてくれたのは、カノンじゃないか」

「いえいえ、ただの天ぷらじゃありません。アイスの天ぷらです」

「……ついにボケたか? 熱い油で揚げたら、冷たいアイスは溶けるだろうが!」

「そこで、シフォン風フワフワパンの出番ですよ。それでアイスを包めば、空気の断熱効果で、多少は溶けるのが遅くなります」

「溶ける量が減っても、溶けたアイスが油に触れたら、油が撥ねて危ないだろ!」

「ほら、水には溶けるけど、油には意外と強くて、食べても問題のない紙のようなものがあったじゃないですか」

「……もしかしてオブラートか!?」

「はい。オブラートで包んであげれば、多少溶けても油が撥ねることはありません」

「一見、熱々の天ぷらに見えて、中はキンキンのアイス……、イける! よし、早速作るぞ!」

 やる気が出てきましたね。クレ転さんはこうじゃなくっちゃ。


「作り方は簡単です。シフォン風フワフワパンを薄切りにしておきます。キンキンに冷やしたアイスをオブラートで包み、さらに薄切りパンで包みます。小麦粉を水で溶いておいたものを満遍なくつけて、高温の油でさっと揚げます。10秒ほどで表面がきつね色になったら完成です」

「ふむふむなるほど」

「ポイントは、揚げる直前まで材料をキンキンに冷やしておくこと。溶ける前に手早く揚げることですかね」

「よし、練習あるのみだ!」

「頑張ってください」


 さて翌日、見事にクレ転さんはアイスの天ぷらを完成させ、国王様の度肝を抜くことに成功しました。

 土壇場で見事な逆転を成し遂げたことで、国王からは『アイスの天ぷらのように、油ぎったブタのような外見の内に冷たくクレバーな精神を宿した男』と評価されたようです。


「それ褒めてるの!? 『油ぎった外見』は余計だろ!」

 いや、それを私に言われましても。

 やっぱりクレ転さんのクレームは、中身までクレームたっぷりですね。

アイスの天ぷらは、はじめて見たときはびっくりしました。

種明かしされれば、なんてことはないんですけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ