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第12話 ゴノー6:プリンがプリンプリンしない!

異世界ヒロインを、プリンプリンのプリンで堕とす。なろうグルメチートの基本ですよね?

(ヒロインが出る予定はありません)

「はい、こちらナーロッバ転生者コールセンター、担当のカノンです」

「オイ、どうなってやがる! プリンがプリンプリンしない! なぜだ!?」

 クレーマー転生者のクレ転コブタ、ゴノーさんですか。

 いい加減このキレ芸にも飽きました。

「まずは状況を説明していただけますか?」

「……おう。なんか殺気を向けられないってのも寂しいな」

「ああん?」

「アッハイ! コレコレ、これが無いと生きている実感が無いんだよね!」

 なんか変な性癖をこじらせてませんかね、この子ブタ。

「実は、我が男爵領も、名物がいろいろ増えたもので、いささか資金に余裕ができてな。その一方で、大豆油の増産で、搾りかすが大量に余った。そこで、搾りかすを飼料として、牧畜と養鶏を始めたんだ」

「なるほど、余剰物資の有効活用ですね」

「そして、牛乳と卵が手に入るようになった。牛乳と卵と言えば、プリンだろ?」

「で、バニラエッセンスが無いと?」

「違う! いや、バニラが無いのもそうなんだが、なんか硬くて、僕の大好きな『プッチ○プリン』と違うんだ!」

「あ~、それですか」

「何が悪いんだ? 牛乳と卵の比率か? 過熱時間や温度か? 容器の問題か?」

 ふむ、どこから説明したものでしょうかね。


「結論から言いますと、『プッチ○プリン』はプリンではありません」

「……はぁ? 何を言い出すんだ? プリンなんだから、牛乳と卵からできるプリンに決まってるだろ!」

「牛乳と卵を混ぜて加熱して固めた『カスタードプディング』は、コンビニなどで売られている『プリン風のお菓子』とは別物なんですよ」

「どういうことだってばよ」

 絶賛混乱中のようです。

「牛乳と卵などを混ぜて加熱して固めた料理をカスタードプディング、すなわちプリンといいます。それ自体は、やや硬かったり、牛乳を多く入れることでトロけるような触感になったりします。しかし、コンビニプリンのように、プルプルとした触感にするのは難しいんですよ」

「じゃあ、なんでコンビニプリンはプリンプリンだったんだ?」

「実は、アレはゼラチンで固めたゼリーの一種なんです」

「な、なんだって~!?」

「プディングと違って熱で卵の成分を固めているわけではないので、商品によっては卵を使ってないものもありますよ」

「僕がプリンだと思って食べていたのはプリンではないがプリンだと思えばプリンであってプリンとはプリンプリンであるからプリンなので……」

 なんか混乱して精神崩壊プリンプリンしかけているようですが、とりあえず問題を解決しちゃいましょう。


「ですから、プッチ○プリンのようなプルプルしたプリンを作りたかったら、ゼラチンを混ぜて冷やして固めれば良いんですよ」

「なるほど。……って、ゼラチンって何から作るんだ?」

「え~、あ~、その、なんと言うかですかね、あれがそれしてこれでしてね……」

「うん? はっきり言え!」

「あ、そうそう、ニカワです、ニカワ!」

「え? ニカワって、接着剤とか絵具とかに使うやつだよね?」

「そうですね」

 ニカワを食用レベルまで精製したものをゼラチンと呼びますが、基本的に同じものです。

「接着剤とか、食べ物じゃないだろ!」

「まあまあ、工房にでも行って、ニカワをもらってきてください」

 首をかしげながらも、クレ転さんがニカワをもらってきました。

「ホレもらって来たぞ。こんなものをどうするんだ?」

 ニカワを乾燥させて固めた物を、顆粒状に砕いたものですか。

 精製度はいまいちですが、コラーゲン成分は十分ですね。


「では、それを水にふやかしてください。一時間ぐらい放置すれば柔らかくなります。ちなみに、こちらが2時間放置したものです」

「また三分クッキングか! まあ便利だから良いけど」

「牛乳を温めておいてください、沸騰しない程度に」

「かまどだと、火加減が難しいな」

「牛乳に、砂糖を混ぜます」

「ここは大根水あめで代用だな」

「次に、卵を一つ割りほぐしておいて下さい」

「混ぜるのは得意だぜ!!」

「あ、泡立ててしまうと、完成時に泡ができて『す』が開いてしまいますので、そ~っとかき混ぜてください」

「了解。そーっとだな?」

「そこに、粗熱をとった牛乳を200ccほど混ぜ、さらに、ふやかしたゼラチンを混ぜます」

「そーっとまぜまぜまぜ……、固まらんぞ?」

「これを冷やせば固まります」

「ふむ、ちょうど冬だから、外に出しておけば固まるか」

「で、こちらが、寒空に一晩放置したものになります」

「……おお! これだ、これだよ、このプリンプリンのプリンが食べたかったんだ!」

「お気に召したようで何よりです」

「ちょっとトロケ感が足りないのと、カラメルが無いのが何だが、十分旨い!」

「硬さなどは、牛乳や卵の比率次第ですね。生クリームを混ぜるとトロケますよ。カラメルは砂糖水を焦がして作ります」

「ふむ、研究の余地がだいぶありそうだな」

「注意点として、ゼラチンは冷やして固めた後に、高温になるともう一度溶けてしまうので、夏場とかはご注意ください」

「まあ、その辺はそもそも冬場じゃないと冷やして固められないしな」



「さて、そろそろ私は失礼を……」

「ところで、なんでさっきゼラチンの原料のことで言いよどんだんだ?」

「鋭い子ブタはこれだから嫌いだよ」

「おい、思考が漏れてんぞ!」

「あ~、なんといいますか」

「なんなんだ?」

 これは言わずに帰ろうと思ったんですが、どうせ後でバレますよね?

「ゼラチンの原料は、豚や牛の皮のコラーゲン成分です。骨とかからも取れます」

「……んん?」

 よくわからないようなので、ニカワの製造過程を映像で見せて差し上げましょう。

 映像の中で、職人が豚や牛から剥がしたばかりの血まみれの生皮を、きれいに洗って、煮て、冷やして、固まったニカワを取り出しています。

 ちょっとグロくてショッキングな映像です。


「僕は一体何を食べさせられたんだ? いやでも、食とは生命を頂く行為であり……」

 なんか哲学的な思索に耽り始めたので、放置して帰りましょう。


 そういえば、せっかくゼラチンが手に入った(こっそり盗んだ)ので、果物ゼリーでも作りますか。卵や牛乳の代わりに果物や果汁を入れるだけです。ただし、果物の種類によっては、タンパク質分解酵素が含まれていて、ゼラチンが固まらないことがあるので、注意しないといけません。

 混ぜて冷やして固めてっと……、うん、プルプルとして美味しいゼリーですね!

 今度ゴノーさんが質問してきたら、このレシピも教えてあげましょう。


 グミ(ゼラチン)の製造工程を逆再生した動画を見ていたら、最終的に生皮を剥がれるブタになったときは、この世の無常を感じました。

 まあ美味しいから食べるんですけどね。

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