プロローグ 「歩み出す少年」
注:この話は後に続く、『この世界に、夜明けの炎を』のプロローグです。
「あとがき」に目を通してくださるとたすかります。
みんな笑っていた。
幸せそうに。
ここは孤児院。
ロキ王国から遠く離れた村から大きくはずれた原にある、小さな教会だ。
心優しき母が、みなしごを引き取り、「家族」として暮らしている。
僕も、幸せだった。
例え父と母が誰かわからずとも、今の幸せがあるから。
僕たちは血が繋がってなくても、大事な家族だから。
「どうしたの?そんな顔してさ、ルナ」
となりにいた少女が不思議そうに訪ねてくる。
「ステラたちと暮らせて幸せだから嬉しくて」
この少女の名前は、ステラ。僕と同い年の13歳。
この孤児院のお姉ちゃんのような存在だ。
「どうしてそんなこと恥ずかしげもなく言えるのかな…」
頬を赤らめながら、彼女がそう言う。
「どうしてもなにも…事実だし…」
た、確かに少し、恥ずかしい…かも
そんな風に彼女と話していると、
「「あー!またお姉ちゃんとお兄ちゃんがイチャイチャしてるー!!」」
そこに、子ども達が近寄ってきて、そんな風に茶化してくる。
「「違わい!!」」
と、声をそろえながら全力で否定すると、
「声まで揃えちゃって…お熱いですね~」
「いつけっこんするのー?」
「ステラお姉ちゃんとはぼくがけっこんするもん!」
…と、変な喧騒ができてしまった。
僕とステラがおどおどしてると、
「やめなさい。ルナとステラが困っているでしょう」
声がした。そこには、エルフーー耳が長く、寿命が長い、眉目秀麗という言葉がよく似合う「亜人」目に属する女性が入ってきた。
彼女は、所謂僕たちの「お母さん」…僕たちを引き取ってくれた「恩人」ーーが仲裁に入ってくれた。(ちなみに年はヒミツ)
「あ、ありがとう…母さん」
素直にお礼を言う。
「そうね…あななたちは、いつ結婚するのかしら?」
…あれ?仲裁ジャナイ?
「ちょっと!お母さんまで!!」
ステラが大声で叫ぶ。
みんなが笑っている。
「幸せ」。
それが続けばいい、そう思っていた。
ある日、いつものように僕が夜の水汲みに行ってきた日だった。
この日はかなり日が沈むのが早かったため、夜道で少し帰るのが遅くなってしまった。
みんななにしてるのかな?と思いつつ僕はドアを開けようとして、
違和感に気づいた。
静かすぎる。
あまりにも。気持ち悪いくらいに。
いつもならうるさく聞こえるみんなの声が、聞こえないーーそう思っていたときだった。
中から声が聞こえる。
耳を澄まして聞いてみた。
「まあ…なものか」
「ろくな…なかったな」
男たちの声だ。
嫌な感じがする。開けたら、自分が自分でなくなってしまいそうな、そんな予感がした。
心臓が異様なほど、煩いほど脈打っている。
それでも、開けるしかなかった。
バン!という音をたて、扉をあけた。
「ん?なんだァ?」
「おいおい、まだガキが居たのかよ?」
そこに広がっていたのは、倒れている子どもたちに、血みどろのの床、そして妖しく笑う5人の男。
そこには、母さんに、ステラまでーー
視界が狭まる。目の前に相対してるこの男たちは、「敵」だと認識した途端、
「ヴ…アアアアァァアアアアァァ!!」
叫んだ。あらんかぎりの声を出して。
近くにあった棒をとり、男たちに襲いかかるーー
そこで僕は、意識が途切れた。
まだ意識がぼんやりとしている。なにがあったか、あまりおぼえていない。
ここはどこだ、僕は死んだのだろうか…
そんなことを考えていたら…
ーここは君の世界、君の意識だ
声が、聞こえた。少しぼんやりとしていて、それでも荘厳なその声が、よく心に響く。
ーキミは、誰?
僕はそう、問いを投げ掛けた。
ー私は…そうだな君自身であり、君を護る者だ
よくわからない…でも悪い人じゃなさそう…かな?
ーキミの名前が聞きたいな
だから純粋に、こう聞いた。
この人なら答えてくれるだろう、そう思って。
ーふふ…そうだな
「その人」は笑って、こう答えた。
ー私は「守護幻獣」の「炎駆」
ー覚えておけ、心優しき少年よーー
途端、意識が覚醒した。
まだ辺りは暗い。
ここは…どこだ?
確かあの時ーー
そのときは、五感の感覚が一気に甦った。
「うっ…」
気分が悪い…思い出してしまった。
辺りには血の臭いが充満している。
ここは孤児院であると認識する。
あの男たちはどこへ?
自分が死んだと思ったのだろうか。
暗い周りを見渡そうとして…それはやめた。
ふらついた足取りで、キッチンまで向かう。
あたりを漂う血の臭いが、鼻を刺激する。
「見つけた…」
そこにある包丁を取り出し、首筋に当てる。
死のう。そう思ったときだった。
『駄目よ。そんなの許しません。』
声が聞こえた。よく聞きなれた、僕の、母の声。
『こちらに来てはなりません。』
幻聴だろうか。
もう生きてるはずのなに母さんの声がする。
「もう…辛いよ」
みんな死んじゃったのに、生きる意味などない、と訴えようとした。
『あなたが死んでも、誰も喜ばない』
『ここで死んだら、私はあなたを許さない』
はっとした。
ここで自分が死んでも、意味がない、と。
ここで死んでしまったみんなのためにも、自分は生きなきゃいけないと。
辺りが明るくなってきた。
もう夜明けのようだ。
「ありがとう…母さん…」
僕は、泣きながら、母さんにお礼を言った。
決心した。この村を出ようと。
生きれなかったみんなの分、僕がまっとうに生きようと。
昔、僕がこの孤児院の前に捨てられていたとき、一緒に「剣」が置いてあったらしい。
母さんは、「きっとあなたのご両親が置いていったのよ」と言っていた。
確かこの辺に…あった。
なんの変哲のない、剣だ。
「よし…」
服、お金、食料をバックに詰めた。
そして剣をもって、僕は孤児院を飛び出した。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
本当は、母さんやステラたちを埋めてあげたかった。
ただ、本当は生きているんじゃないか。
死んでいないのではないか。
そう思うと、手が震えてしまう。
「死」と向き合うことが、怖かった。
僕は、死んだほうが良かっただろうか?とはもう思わない。
やることが出来た。
そのためには、「王都ロキ」に向かわなければならない。
「さようなら、みんな」
「そして…ごめんなさい」
最後にそう言い、僕は走り出した。
朝方の冷たい風が頬をなでる。
その風にのって張り紙が空を舞う。
『来たれ冒険者、未知の迷宮に挑め』
『この世界に、夜明けの炎を プロローグ 完』
ご精読ありがとうございます。
いかがでしたでしょうか?
私自身、小説を書くのが別段得意というわけではありませんが、しっかり書けるように頑張っていきたい所存であります。
この世界は所謂異世界、「地球」を舞台とした話ではないことを先に理解して頂けると助かります。(小説内で書けなかった)
これから先もこの小説を投稿してくと思うので、是非楽しみにしていただけたらなとおもいます。
それでは、また…




