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登校

二話目です!

 金曜日の朝。

 いつもの通り制服に身を包み見慣れた通学路を歩く。


 今日の天気は晴れ。

 一週間という小さな一区切りを過ごした達成感を祝福してくれているような気持のよい晴れ。


 前を歩いている同じ学校の生徒たちも、週末だというのにも関わらず元気に登校している。

 元気が有り余っていることは羨ましい限りだ。


 そんなことを思いながら学校への足取りを進める──のだがそのたびに一歩一歩が重くなってゆく。

 そんな俺の横を通り過ぎていく生徒たちの後を追うように無理やり足を動かす。


 「(はぁ、また今日も来るよな)」


 歩きながらそんなことを考える。

 一気に週末の疲れと倦怠感、憂鬱感が俺にのしかかる。


 あの日──南木さんが教室に来た日から俺は『クラスでも目立たない人』から『あの南木柚木と何かしらの関係を持っている不思議な人』へとランクアップした。


 そのせいでクラスメイトをはじめ同じ学年の生徒たちからの視線を感じることが増えた。


 しかも昼休みになるとすぐに教室のドアが開き南木さんがお弁当の包みを片手に立っている。もちろん昼食を一緒に食べるためだ。

 南木さん曰く「まずは女の子に慣れないと!」らしい。

 

 そのせいでクラスの男子たちからの視線が怖いほど集まってくる。南木さんは慣れているようで気にせず堂々としている。


 はぁ、と小さくため息を吐く。

 先ほどまで気持ちよく感じていた晴れも今となっては鬱陶しく感じてしまう。


 そんな調子で歩いていると、後ろから女子の声が聞こえてきた。

 何気なく振り返る──振り返ってしまった。そこにいたのは件の南木さんだった。


 やばっ、と思ったのも時すでに遅し。

 向こうもこちらに気が付き駆け寄ってくる。


 「あれ、宇野君だ!おはよう」

 「...おはよう」


 挨拶を交わしていると置いてきぼりにされていた友達らしき女子生徒たちが南木さんの後ろから顔を出す。

 一人は茶髪のショートカットで、もう一人は黒髪ロングだ。

 前者がかわいい系で、後者が綺麗系だ。まぁどちらも美少女なんですが。


 「なに、柚木の知り合い?」

 「そう!同い年の宇野君」


 南木さんに紹介されたので軽く挨拶をする。

 すると何やらジロジロと見てくる南木の友達。そんな視線にほんの少しだけ後ろに後ずさりした。


 「な、何ですか?」


 恐る恐る質問してみた。すると──


 「柚木の、彼氏?」


 と返ってきた。

 その言葉を反射的に否定していた。


 「ち、違います!」


 近くにいた数人の生徒たちが振り返ってこちらを見てくるぐらいには大きな声が出ていた。

 そんな視線のせいか、それとも彼氏と間違われたせいか、顔がカァーと赤くなった。


 「そうだよ、付き合ってないよ」


 南木さんの後押しもあり何とか信じてもらえるかな、と思った矢先──


 「ただいつも一緒にお昼たべてるだけだよ」


 一言余計なんだよな~、とすでに投下された爆弾を見送った。


 その言葉を聞き「へ~」や「ふ~ん」とニヤついた表情で言い始めた彼女たち。

 案の定、「邪魔しちゃ悪いから先行くね」と言って速足で学校へと向かっていった。


 「別に先に行かなくてもいいのに」


 そんな南木さんの言葉に俺は「ハハ、ソウダネ」と下手くそな作り笑いとカタコトな言葉しか返せなかった。



 結局二人で学校に行くことになり横に並んで歩いている。


 「そういえば宇野君は土日ってどうやって過ごしてるの?」


 南木さんがそう問いかけてくる。


 「暖かい場所で日ごろの疲れを癒してるよ」

 「布団の中でゴロゴロしてると。つまり暇ってことだよね」


 遠回しに言ったのに直線的に返ってきた。


 「じゃあさ、明日一緒にお出かけしよっか!」


 ニコニコとしながらそんなことを言う彼女。

 ピキッと俺の表情が固まる。何とか動かせる口元を引き攣らせながらオウム返しの様に問い返す。


 「一緒に、お出かけ...?」

 「そう、デート!」


 満天の笑顔を咲かせる彼女に対して「嫌です」と口に出せるほどの勇気を持ち合わせていない俺は、ぎこちない笑顔を作るのが精一杯だった。


 「デートって、付き合っている男女がするものだよね?」

 「もう、そんな細かいこと気にしてたら彼女なんてできないよ!」


 呆れたようにそう言って少し早足で俺の前を歩く。


 「これはデート予行練習だよ!彼女ができたときにきちんと楽しませることができなきゃ幻滅されちゃうよ?」


 南木さんはクルリと体を半周回転させて俺と向かい合いの形になる。そしてグイッと顔を近づけて来る。


 「エスコートよろしくね!」

 「...期待はしない方向でお願いします」


 南木さんから視線を外しながらそう言うのが精一杯だった。


 今日一日を悶々とした気持ちで過ごすことが確定した瞬間だ。

 そんな俺を南木さんはニコッと微笑んで見ているのだった。


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