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ですよねっ!?

二話投稿最終日!

一話目です!


 翌日の昼休み。

 俺は先ほどの授業で使った教科書や筆記用具を机の中に入れ、鞄から弁当の包みを出す──のだが鞄の中にそれらしきものが見当たらない。


 何度見ても結果は変わらない。まじか。

 きっと家に忘れてきたのだろう。


 はぁー、と盛大にため息をしていると横から滝川に声をかけられた。


 「どうした、そんなため息吐いて」

 「弁当を忘れてきた」

 「お前、今日遅刻ギリギリに登校してきたもんな」


 滝川は今朝の俺の行動を振り返っていた。


 俺は今日、珍しく盛大に寝坊をした。寝坊をすること自体はいつもなのだが──いや、だってアラームを止めてからの二度寝ってものすごく気持ちいものでしょ!わかる!?...あ、わからないですか、そうですか。


 おほん、とにかく今朝にこんなことが起きてしまい、急いで準備をしてきたせいで弁当がないという状況になってしまっている。

 

 俺は鞄から物理的にも金額的にも軽い財布を取り出し中を確認する。

 なんとか購買で買えるだけのお金は持っていた。手痛い出費になってしまうが背に腹は代えられない。


 財布を片手に廊下に出る。

 何を食べようかなー、と考えていると後ろから「あー!!」という声が聞こえてきたので振り返るとかわいらしい包みを片手にこちらを見ている南木さんがいた。


 その声はかなりのボリュームだったので周りにいた人たちは南木さんを一瞥した後、視界の先にいる俺に視線が集まってきた。

 

 そんな視線に狼狽えていると、早足で南木さんが俺との距離を詰めてくる。

 その表情は少し怒っているように見えた。そんな南木さんについつい一歩後ずさる。


 あっという間に距離を詰めた南木さんは包みを持っていないもう片方の手で俺の手を掴む。


 「逃がさないからね!」

 「え、えっ!?ちょっと、何のことを言ってるの!?」

 「一緒にお昼食べようって言ってたのに逃げようとしてたでしょ!」


 彼女はどうやら俺が約束を破ってどこか行こうとしているように見えたらしい。


 俺はすぐさま事情を説明した。

 それを聞いた南木さんは先ほどとは打って変わってキョトンとした表情を浮かべていた。

 そして──


 「なんだ~、そうだったんだ」


 南木さんは一安心といった表情で安堵していた。

 だが俺は安堵できる状況ではなかった。


 「あ、あの、手を離してもらえると...」

 「ん...?」


 南木さんは、「あぁ、そうだね!」と言って離してくれた。

 女の子の手ってあんなに柔らかいんだな~、と思っていると周りの視線がこちらに向けられていることに気が付いた。


 「じゃ、じゃあ買ってくるから教室で待ってて!」

 「それなら私も...」

 「一人で行ってきます!」


 急に恥ずかしくなり、吐き捨てるようにそう言って購買に向かった。




 ♦  ♦  ♦  ♦




 無事に昼食を確保できたので教室に戻った。

 ドアを開けるとそこは、葬式か!と言いたくなるほど静かな空間だった。


 もちろん言ってないですよ?俺のツッコミはどうやら「あと3歩ぐらい足りてない」by妹。

 真顔の妹が微妙にリアルな数字を言ったことを考えると本当のことなんだと痛感した。


 俺の机と対面になる形でくっつけてある机に先ほどのかわいらしい包みを置き、姿勢よく座っている南木さんは周りの視線なんか気にしていないようだった。


 俺が帰ってきたことに気が付き視線だけを俺に送ってきた。その視線に射抜かれ駆け足で自分の席に戻る。


 「お、おまたせしました」


 恐る恐る俺がそう言うとスッと右手が動いた。

 何かされると思い思わず目を閉じる。


 「何してるの?早く食べようよ」


 目を開けると南木さんは包みを開きながら俺のことを見ていた。自分の席に座るように促され素直に従う。

 そして先ほど買ってきたサンドイッチなどを机の上に広げる。


 「いただきます」


 俺が胸の前で手を合わせそう言う。するとそれをジーと見つめてくる南木さん。

 どうしたんだろうか。


 「な、なに?」

 「いや、きちんと挨拶するんだと思って」

 「いや、するでしょ」

 「学校でする人、なかなかいないと思うよ」


 たしかに、給食ならばみんなで行うが高校生にもなってやっている人をあまり見かけたことはないかもしれない。

 だがクラスに何人かはいるだろう。


 「好きだな~」

 「ッ!?」


 ボソッと南木さんがそんなこと言う。


 「私はそういうことをきちんとしている人は好きだな~」

 「ですよねっ!?」

 「...?」


 別にそういう意味ではないということは分かっていたが、理性とは無関係に鼓動が早鐘を打つ。


 恥ずかしくなり視線を逸らすとクラスの男子共が急に胸の前で手を合わせ始める。


 『いただきました!』


 食べ終わったやつや食べている最中のやつ、関係なしにやり始めた。


 いや、もう遅いだろ。

 しかも時制をきちんと合わせてくるあたり、もはや狙ってるとしか思えない。


 男子共はチラチラと南木さんを窺っているが当の本人は一人で挨拶を済ませ弁当を食べ始めていた。

 あからさまに落ち込む男子一同。ドンマイ。


 南木さんは弁当を、俺は先ほど買った数種類のパンを食べる。


 いつもの弁当よりカロリーは十分にあるはずだが、どうしてか満足しない。やっぱり人の手で作ってもらうものが一番なんだな。


 「昨日はお弁当だったのに今日は違うの?」

 「今日は寝坊して持ってくるの忘れちゃって」

 「そうなんだ。いつも自分で作ってるの?」

 「いや、作ってもらってるけど」

 「そうなんだ~。彼女ができたら作ってもらえるといいね!」


 無邪気な笑顔でそんなことを言ってくる南木さん。

 俺はその言葉に苦笑を返す。


 その後もちょっとした雑談を挟みながら、南木さんとの昼食は恙なく終わりを迎えた。

 昼休み終了を知らせる予鈴を聞き南木さんは自分の教室へと帰っていった。


 その姿を見送り、俺はクラスメイト達からの視線を遮るようにすぐに机の上に突っ伏した。


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