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人気者の仲間入り?

二話目です!

楽しんでいただければと思ってます!

 昼休みになり昼食をとることも忘れ俺は机に突っ伏して眠気と戦っていた。

 すると滝川の声が上から聞こえてくる。


 「颯真、今日一日中寝てるけど寝不足か?」

 「誰のせいでこうなってると思ってるんだよ!」

 「別に俺のせいではないよな」


 俺の言葉を聞き流しながら弁当を食べ進める滝川を親の仇のような目で睨む俺。

 滝川はそんな俺を見て何を思ったのか今まさに口に放り込もうとしていたおかずを俺に差し出してきた。


 「そんなに食いたいならやるよ」

 「ち・が・う!なんでそうなるんだよ!」

 「俺の食べかけだけど我慢しろよ」

 「だからいらないって!」

 「あ、間接キスになっちまうか」

 「なぁ、会話のキャッチボールをしようぜ」


 どこからか女子の黄色い声が聞こえてきた。どうやらこのクラスにご婦人ならぬご腐人がいるようだ。

 教育の場なので自重しようね。


 そんなことを思いながら目の前で弁当を食べる滝川を眺めて昨日の出来事を思い返す。




 ♦  ♦  ♦  ♦




 ドリンクバーの追加注文を終えてようやく本題に入る。


 「えっと、南木さんが待ち合わせをしていたのは俺ってことでいいのかな?」

 「そうだよ!」


 まるでいたずらが成功した子供のような表情を見せる南木さん。思わずため息が出てしまう。


 俺の横でそれを見ていた滝川は何が起きていたのかを理解したようで一人で笑っていた。


 「相変わらず颯真は面白いな」


 そんな滝川を恨めしそうに見る。が当の本人は全く気にせずの様子だ。

 無駄に疲れるだけだと思い南木さんへと視線を戻す。


 「で、パートナーってことは南木さんが手伝ってくれるってことでいいのかな?」


 未だに疑わしい俺は南木さん本人に確認をとる。

 俺の言葉を聞きニコニコと笑顔を作りながら「そうだよ!」と答える南木さん。


 片やクラスカーストでさえ下の方をうろちょろしている平凡男子高生。

 片や学内カーストのトップクラスである美少女女子高生。


 月とスッポンとはまさにこのことだろう。

 この事実にため息が漏れる。 


 「おいおい、なに落ち込んでるんだよ。強力な助っ人だろ」


 俺が項垂れているのを見て滝川が励まし(?)の言葉を送ってくる。

 そんな滝川を尻目に南木さんが自信満々そうな表情を浮かべている。


 「大丈夫だよ!私の言う通りにしてれば彼女がすぐにできるから!」


 決意表明ともとれる発言を聞きさらに不安が積もっていくのを感じた。




 ♦  ♦  ♦  ♦




 こんな出来事が急に降って湧いてくれば寝不足にもなる。


 そんな俺にはまったく目もくれず弁当を食べ進める滝川を見ていると眠気よりも空腹のほうが気になりだす。

 食べるのを我慢していたが朝食も食べていない俺にとってもう我慢の限界だった。


 鞄から弁当を取り出し包みを開きふたを開ける。きちんと栄養バランスが考えられているおかずたち。成長期の男子高校生はもっとカロリーが欲しいものだ。


 そんなおかずも空腹というスパイスの前では美味しそうに見えてくる。まぁ、いつも美味しいのだが。


 胸の前で手を合わせ「いただきます」と言ってから箸でおかずを口に運ぶ。やはりいつもより美味しく感じる。

 作ってくれた人への感謝を心で唱えていると──


 「失礼します、宇野君いますか?」


 教室の入り口から澄んだ声で俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。「まさか」と思い視線を向けると南木さんが立っていた。


 まさかの人物の登場で静寂に包まれるクラス。だが南木さんはそんなことには目もくれずキョロキョロと周りを見渡している。


 「あ、いたいた!」


 そして俺を見つけると教室に入ってきた。そんな光景を唖然とした表情で見ている俺とクラスメイト達。


 そんな中、俺はハッとしてまだ一口しか食べていない弁当を隠そうとする──が遅かった。

 すぐそこまで来ていた南木さんに先手を打たれる。


 「あれ、お弁当もう食べてるの?」

 「空腹に勝てなくて...」

 「ふーん」


 南木さんはどこか拗ねたような顔をして俺のことを見てくる。俺は全身からジワジワと汗が出てきている。


 先ほどから感じるクラスメイト達の視線は南木さんに向いているが話し相手である俺にも徐々に視線が集まって来ている。


 男子たちからは羨望も含まれているがやはり好奇なものや怪訝なものが多い。


 今まで滝川以外とろくに話していないやつがいきなり南木さんみたいな学校を代表する美少女と話しているのを見たらそういう反応になるよな。


 自分の思考に入り浸っていると急にクラスがざわめく。そこでようやく南木さんがグイッと顔を俺に近づけていることに気が付く。


 俺の視界の大部分を彼女の端正な顔が占める。


 「ねぇ、聞いてるの?」


 長い睫毛、大きな瞳、白くきめ細かな肌、少し湿っている弾力のある唇、そのどれもが俺の鼓動を早くするには十分だった。


 動揺を隠そうとサッと顔をそらした。そして上ずった声が出る。


 「き、聞いてるから!!」

 「じゃあ、一緒に食べる約束してたのに何で勝手に食べていたのか説明してもらえる?」

 「それは...」


 昨日の最後に「じゃあ、明日からお弁当を一緒に食べよう!」と言われていたから食べるのを我慢していたのだが無理だった。


 南木さんからの視線とクラスメイト達からの視線を受けてダラダラと汗をかきながら言い訳を考える。


 だが俺の口からは「えっと」や「その」しか出てこない。


 ジトーとした目で見てくる南木さんはため息を一つ溢した。そして呆れ交じりの視線と声で話しかけてくる。


 「まぁ今日はもういいけどさ。明日からはきちんと一緒に食べるからね!」


 そう言い残して教室から出ていく南木さん。残された俺はクラスメイト達からの視線を独り占めする。

 何とも言えぬ空気が教室に漂っている。

 

 「よかったな、これで今から人気者の仲間入りだな」

 「こんなに人望がない人気は珍しいもんだな」


 乾いた笑みを浮かべながら早く昼休みが終わることを祈るばかりだった。

 

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