ラブコメ展開
今日、明日と一日二話投稿します!
高校生になり、早一年。新年度が始まり俺もとうとう高校二年生へと進級し新しいクラスにも慣れ始めた五月某日の放課後、親友でもあり悪友でもある滝川からの提案で俺はファミレスである人物を待っていた。
「宇野君だよね?」
「へ?」
唐突に自分の名前が呼ばれそちらの方を向くとそこには学校随一の美少女、南木柚木が立っていた。
何の前触れもなく訪れたこのサプライズイベントに俺の脳味噌は完全にフリーズを起こし、咄嗟に出た変な声で応じるしかなかった。
誰かにこの状況を説明してほしくて俺の眼球はせわしなく動くが当然周りには助けになるような物や人は無く、最終的には不躾にも彼女を一度上から下まで眺める。
同じ制服を身に纏っているのにもかかわらずどこか洗練されて見えるのは南木さんならではだろう。
「えっと...」
軽く見惚れていると南木さんは心配そうな表情を浮かべてこちらを見てきた。見惚れていることがバレたのかと思い心臓がドキリとする。
だが南木さんは恐る恐るという感じでもう一度尋ねてきた。
「宇野颯真君だよね?」
「そう、だけど...」
「そう!よかった、間違ってたらどうしようかと思っちゃった」
安心したような表情を浮かべた後優しく微笑んできた彼女にもう一度見惚れたのは言うまでもない。
彼女はそのまま流れるように俺の対面に座り肩に担いでいた鞄を隣に置く。
そんな光景を眺めているだけの俺は南木さんに話しかけられてようやく現実に戻って来た。
「私は二年の南木柚木。今まで同じクラスになった事なかったよね?」
「あ、同じく二年の宇野颯真です。南木さんとはずっと違うクラスでした」
お互いに軽い自己紹介を済ませた後に、店員が注文を取りに来たのでドリンクバーだけ頼み、お互いに飲み物を取りに行く。
再び席に着き、ふぅと一息つく。
チラッと視線だけで目の前に座っている美少女を見る。端正な顔立ちにモデルに負けず劣らずのスタイルを持ち、性格面も概ね好評で、まさに学校における中心人物だろう。
表面上は普通に接しているが実際は目の前に彼女がいるという事実が想定外すぎて嬉しさなんてものよりも戸惑いや焦りの方が大きい。
「(え、なんで南木さんが俺の前に座ってるんだ?南木さんも何か用事があってここに来たんじゃないのか?まだ友達が来てないからとりあえず同じ学校の生徒である俺で時間を潰そうってことか?)」
まさに疑問が疑問を呼ぶ状態になってしまっている。
額からは汗がジワジワと吹き出ており心拍数も徐々に上がってきているのがわかる。
周りを見渡すが友達らしき人は見当たらない。南木さんはというと先ほど持ってきたメロンソーダをストロー越しに一口飲み、鼻歌を歌いながら体を左右に揺らしている。
見るからに上機嫌な彼女を目の前にして俺の中では様々な感情と憶測が渦巻いている。
そんな彼女に少ししか持ち合わせていない勇気を振り絞り口を開く。
「な、南木さんはどうしてここにいるの?」
「私?ここで待ち合わせをしてるんだけど」
彼女の言葉を聞き久しぶりに会う友達とかかな、と俺は勝手に納得する。
「そうなんだ。その人はもう来てるの?」
「来てるみたい」
「へぇ、そうなんだ...」
...今、「ならなんでさっさとそっちに行かないの?」とか思ったやつ、奇遇だな俺も思ったよ。だけど俺に言える勇気は持ち合わせてはいなかったよ、うん。
全く彼女の行動の意図が読めない俺はただ黙っていつもよりも速いスピードで渇く喉をアイスコーヒーで潤すことしかできない。
いつまでここにいるんだろうかと思っていると南木さんが話しかけていた。
「宇野君はさ、どうしてここにいるの?」
「俺?俺もここで待ち合わせをしてて...」
「へぇ奇遇だね」
「そうだね」
待ち合わせといっても俺はここに誰が来るのかを知らない。滝川からは「放課後、そこで待っていれば来るから」としか言われていないのだ。
そのため男子が来るのか女子が来るのかすら俺は知らない。
まぁ滝川からの紹介だから変な人は来ないと思うけどやっぱり不安は残る。
てか、滝川もあとから合流すると言っていたのだがいつ来るのだろうかと思っていると後ろから滝川の声がした。
「悪い、遅れたわ!」
遅れたと言っている割にはゆっくりとした足取りでこちらに歩いてきている滝川に俺は救済を求める視線を送る。
それに気が付いたのか首をかしげながら不思議そうに俺のことを見てくる。
そして向かいの席に座っている南木さんを見てひとりで勝手に納得したのか、「あ、そういうことか」といいながら一安心といった顔を俺に向けてくる。
「なんだ、もう合流してたのか」
「...?なんのことだ?」
滝川の言うことがちっとも理解できない俺は首をかしげる。
すると滝川はキョトンとした表情でさらに言葉を続ける。
「なにって、ほら例のあれだよ、『お前の彼女を作るために手伝ってくれる人』だよ」
「うん、だからその人がまだ来てないっていう話で...」
なぜだろう、滝川と会話がかみ合っていないような気がするんだが。
滝川も同じことを思ったのか二人して目をパチクリしている。
「いや、だってもういるじゃん」
「え?」
滝川の視線の後を追うように俺もそちらに視線を向ける。さきほどから違和感はあった。だがそんなことはないと心の奥底で否定していた。だってありえないでしょ。
視線の先にいる彼女──ニコニコと俺に微笑みかけている南木さんを見て苦笑いしか出てこなかった。
「これからよろしくね、私のパートナーさん」
「ハハハ」
感想 評価 やる気